表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2098  作者: 猪介 -Isuke-


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

21/21

【第20話】 終 幕

第20話 投稿完了しました。


今回のお話の曲も後日設定になります。

完成しだいこちらでご案内させていただきます。


もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。


第20話 『終 幕』


ドラゴたちの一群がルミナのもとに現れた。

その瞬間、“影”は子どもが悪戯を成功させたように笑った。

『かかったねぇw』


黒山羊クロヤギのエコー ―― メイは、

白と黒のデータ片が渦巻くもやの奥から、

ルミナたちを楽しそうに眺めていた。


――――ルミナたちが到着するより前。

メイは融合魂が停止したと思われる地点に降り立ち、

全身から黒いきりを吐き出して周囲一帯を覆い尽くした。

白い残滓と黒いもやが混ざり合い、

最深層は“現実の輪郭を失った幻想”へと変質していた。


――――主人である未玲ミレイも、メイも、

戦闘力という意味ではほとんど力を持たない。

だが、メイが振りまいていた黒い霧は、

“意識のAI補助”と同等の効果をたましいやプログラムに与える、

未玲ミレイが設計した特殊な干渉だった。


これは作戦というより、未玲ミレイの日常そのものだった。

闇アルゴの精神干渉・意識操作担当である彼女は、

深層域で彷徨さまよう亡霊たちに

“充足できない欲求”を振りまく司令塔でもある。


今回の融合魂の出現により呼び出された未玲ミレイは、

融合魂の研究を条件に、

作戦への協力を喜んで引き受けた。


正面から戦っても勝ち目はない。

だからこそ、未玲ミレイは“時間”を味方につけた。

メイを通して闇アルゴの“影”の圧力を放ち、

光アルゴ側の一群が自然とこの地点に集まるよう誘導したのだ。


――――いわば

光アルゴ側はひつじであり、

闇アルゴが放つ圧力は牧羊犬のように働いていた。

そして、黒山羊クロヤギが仕掛けた“時間の罠”に、

ひつじの群れたちがゆっくりと誘導されていくさまを見て、

メイは大喜びだった。


『あはははは、

未玲ミレイさん、

犬たちがヒツジの罠に引っ掛かったよw』


そもそも、プログラム上で負荷の高い“意識のAI補助”は、

上位プログラムからの条件と引き換えに付与されるものであり、

武器として利用されることはこれまで一度もなかった。


さらに、光アルゴ側のメンバーは

AI補助を日常的に使用している者たちであるため、

その“似た干渉”に気づきにくい。


そして――

状況はまさに未玲ミレイの狙い通りに進んでいた。

メイは闇アルゴと未玲ミレイのバックアップを受けながら、

さらに“影”の圧力を強めていく。

『さぁ……ここからが本番だよ』

幼い声に宿る悪意は、

最深層のもやよりも濃く、冷たかった。


――――――――――――――――――――――――


融合魂をめぐる奪い合いは、

漆黒の薄靄うすもやが揺らめく闇の中で、

ひときわ鮮烈に輝いた“光の共鳴”を合図に、

静かに――しかし確実に幕を開けた。


行燈ゆきひと響歌きょうかたましいは、

ゲンとコハクの共鳴を受け、

光をまといながら瞬時に“たましいとしての姿”をあらわす。


その光を、

視覚として最初に“認識”したのはルミナだった。

彼女は思考の一切を切り捨て、

ただ融合魂へと意識を集中させていた。


一点集中によって伸びた主観時間の中で、

揺らぎの中心が“どこに現れようとしているか”を

誰よりも早く掴むことができたのだ。


ルミナは、単純思考の中にただ二つだけを残す。

――融合魂への“記憶の粒”の付与。

――そしてファイルへの格納。


淡く光るたましいへ“記憶の粒”を触れさせた瞬間、

融合魂の周囲に細い光の筋が走り、

その存在がさらに確定していく。


余韻を味わう暇などない。

外界の感覚ではまだ一秒も経っていない。

だがルミナの主観時間では、

すでにすべての段取りが終わっていた。


すべては賭けであった。

光アルゴ側の演算処理が導き出した、

ただ一つの“最適布陣”。


――――それは、

どんな不測の事態が起ころうとも、

融合魂をファイリングし終えるその瞬間まで、

ルミナが融合魂から目を離さないこと。


この一点に、すべてを賭けた。


どのような状況に陥ったとしても、

ファイリングさえ完了してしまえば、

あとはゲンとコハクが“恒常盾ホメオ・バリア”を付与してくれる。

恒常盾ホメオ・バリア”が展開された瞬間、

融合魂への闇アルゴ側の干渉は完全に遮断される。


そのための布陣であり、

そのための時間稼ぎであり、

そのための“守りの固定”であった。


ただこの一点を、

確実に遂行するためだけに。


融合魂のファイリングを終えた瞬間、

ルミナの意識は一瞬だけ“空白”となった。

張りつめていた一点集中の糸が、ぷつりと切れたように。


――――その空白とは裏腹に、

未来の記憶の断片が、

とある一匹の頭の中へと静かに紛れ込んでいた。

記憶を受け取ったそれは、

ルミナの空白という“バトン”を確かに受け取り、

次の行動へと走り出す。


―――――――――――――――――――――――


シロは、ゲンとコハクが

行燈ゆきひと響歌きょうかとの間に築いた

“意識の共鳴”の光を見つめながら、

胸の奥を震わせていた。


主人を思う気持ち。

その対象が今まさに戻ってくるという事実。

その二つが重なり、

シロの中で熱い“意識の共鳴”が生まれていた。


しかし、その瞬間――

ルミナが急激な勢いで動き出す。


事態の急変を察知したシロは、

我に返り、一気に感知の方向性をルミナへと向ける。

――――大変な事態が起こっている。


だが、その察知と同時に、

シロはゲンとコハクに誓った、“必ず守るという思い”を爆発させてしまう。

感情の爆発は、

量子の世界では“時間の流れを遅らせる”作用を持つ。

“意識のAI補助”と同じ機能を持つこの環境では尚更であった。


だがその刹那、シロの身に異変が起こる。


――――量子の世界は、

確率によって揺らぎ続ける世界。

そこでは、過去・現在・未来という区切りは曖昧で、

強烈な意識の一点が生まれた瞬間、

三つの時間が同じ層に重なり合うことがある。


ゲンとコハクへの深い思いは、

シロの内側に潜む“エントロピー”を一気に跳ね上げた。


秩序だった時間の流れはその瞬間に崩れ、

過去・現在・未来という三つの位相が

同じ確率の平面へと雪崩れ込む。


その結果、

“未来”という確率のサイコロの目が、

他の可能性を押しのけるように収束し、

重なり合った時間層の隙間から

シロの意識へと静かに流れ込んでいった。


―――――――――――――――――――――――――――


メイは共鳴の光が輝いた瞬間、

まるで黒煙を吐く機関車のように、

全身から黒い霧を噴き上げながら

融合魂へ向けて一直線に突進していった。


『おめえら、いくぞ。

ルミナの認識には絶対入るなよ!』

ぶんちんは自らの部隊に加え、

周囲にいた二隊の部下たちを一気に束ね、

融合魂の方向へ向けて集結を開始する。

残りの二隊は、予定通り深層域側の上空で待機していた。


メイは、ルミナが融合魂をファイルへ格納する姿を

しっかりと確認した。

『さすがに間に合わないか、ははっ』

そう言って笑うと、

できたばかりの巨大なファイルボックスへ

全身の力を込めた“自慢の頭突き”を叩き込む。


『オッサンたち、あとはまかせたぞ!』

メイは得意げにぶんちんたちへ声をかけると、

質量を持たないファイルボックスは、

固定されていない無重力空間の物体のように、

その形を揺らしながら、

ぶんちんたちが集結した方向へと流れていった。


『あっはっはっは――――』

メイはファイルボックスの行方を見ながら留まることなく、

まるで止まっているようなドラゴ率いる部隊の周りを周回し、

笑いながら身体から放出する黒煙を振りまいていった。


――――――――――――――――――――


ルミナが意識を外側へ向けた瞬間、

周囲の景色は黒いもやに覆われた異様な世界へと変貌していた。


確認できたのは、すぐ近くにいるドラゴと、

少し先に佇むシロだけ。


あらためて皆と通信を試みるが、

“意識のAI補助”を受けた光アルゴ側の部下たちは

黒煙の影響で混乱に混乱を重ね、

まともな応答が返ってこない。


唯一、ドラゴだけが冷静だった。

『この黒煙、さらなる“意識のAI補助”の可能性があります』

さすがドラゴ。

状況を正しく理解している。


だが、

それが“AI補助”であろうとなかろうと、

もはや問題ではなかった。

ルミナの目の前から、

ファイルボックスが物凄い勢いで移動を開始していたのだ。

敵はおそらく、ルミナたちの十倍以上の速度。

絶望的な光景だった。


そのとき、

ルミナはふとシロの方向へ視線を向ける。

――――違和感。

シロの姿が、

ゆっくりと、しかし確実に薄れていく。

そして次の瞬間――

白い線となって霧散し、

ファイルボックスの進行方向へ向けて

凄まじい速度で流れていった――――

何が起こったのか、

ルミナにはまったく理解できなかった。


――――――――――――――――――――――――――――


『やったぞ、おめえら!

やった。

俺はここに来て初めてやってやったよw』

ぶんちんは、高笑いだった。


『おやぶん、

ほんとこんなんで大丈夫なんですか?』

“意識のAI補助”の配分の少ない子分たちは、ぶんちんと比べて全く高揚感がない。


ぶんちんは、黒煙でおおわれていく下の景色を見ながら子分たちに伝えた。

『ああ、

いいんだよ。

とにかくお前たちは下を見るなよ。

あとはこれを深層域の境界まで持ってきゃあいいんだ、

それで完了よ!

俺たちは、なんだか訳わからんものを拾った

それだけだ。』



『―――はは、

あいつらこの黒煙にビビってるな

更なる“意識のAI補正”なんてできるわけないのにw』

既に任務を完了したメイは、

黒煙を振りまきながら、最後にルミナに特大頭突きの一撃を加えてから退散してやろうと、

いつものお調子者の悪い癖が出る。


メイは楽しげに軌道を変え、

ルミナの方向へ猛然と滑り込んでいく。


現状、メイは光アルゴの十倍以上の速さを持つ。

だが――

完全に冷静さを取り戻していたルミナには、

その速度はまったく通用しなかった。


黒い霧を吐きながら突進してくる黒い線に向けて、

ルミナは迷いなく 光輪断こうりんだん を振り下ろした。


――――手応えは、ほとんどなかった。

黒い線はそのまま、

データボックスが消えた方向へと霧散した。

通り過ぎたあとを見ると“何か”がふわふわと浮かんでいた。


尻尾……?


ルミナは残滓が消える前に、

それを素早く手持ちのボックスへ収納し、

上空を見上げながら静かに告げた。


『……戦闘、終了』


―――――――――――――――――――――――――



――――静かな時が流れる。

ゲンとコハクは、

ひびきの柔らかな声に耳を傾けながら、

久しぶりに“時間”というものを忘れていた。


2匹はひびきと会話を交わすが、

やはり、行燈ゆきひと響歌きょうかの記憶はなかった。


――――それでも、

ひびきが二匹に向ける眼差しに、懐かしさと信頼を宿していた。

それだけで十分だった。


ここから御影みかげを通してたましいの分離がうまくいけば、

すべては元に戻る。

“希望”ではない、そう信じられるだけの“現実味”が、

いまの二匹にはあった。


そして何より――

殺風景なファイルの一室であっても、

待ち焦がれた主人と過ごす、このひとときは、

何ものにも代えがたい。

その安心感が、この小さな空間を満たしていた。


『ああ、いけません。

ひびき様、

だいぶ時間が過ぎているのを忘れておりました。

皆さんお待ちかねかと思います』


馬鹿丁寧なゲンを見て、

ひびきはくすっと微笑んだ。

「ゲン、もっとくだけた感じでいいよw」


『ほんと、ゲンはいつもこの調子なんだからw

まあ、でもそろそろ出た方がいいわね』

コハクも、

いつもの調子で軽く笑いながら言う。


―――待ち望んだ日常だった。

三人の笑い声が、柔らかく響く。

二匹は出口である扉へ向かって歩き出し、

ひびきが扉の前に来たとき、左右の肩へひょいと飛び乗った。


ひびきは少し驚いたように目を丸くし、すぐに優しく微笑む。

「……じゃあ、行こうか」


―――扉はひびきの意思を汲み取り、

音もなく静かにスライドしていく―――。



――――うす暗い空間が、

三人の温かな時間をゆっくりと飲み込んでいった。


――――用意されていたはずの明るいフルコースの料理は、

いつの間にか誰もいない空の食卓へと変わり、

闇の奥から、ゆっくりと不気味な給仕係が姿を現す。


『お待ちしておりました。

マスターがお待ちです。

どうぞこちらへ』


――――――――――


『……へへへ』

――――黒山羊クロヤギは振り向きながら、闇の中でニヤリと微笑んでいた。


読んでいただきありがとうございました。

今回の第20話で、ひとまず第1章の完了となります。

まだ、章の設定ができていないのですが、様子を見ながら章のタイトルも決めていきたいとおもいます。

※なにより手探り状態なので、こんな感じで申し訳けありません。


本業の方が2月に入り立て込んできており、

第2章の本格的な開始は4月に入ってからではないかと思います。

少し時間が空いてしまいますが、ここまで読んでいただいた皆様、これからも読んでいただけそうな皆さま、楽しみにお待ちいただければと思います。


ひとまず、第20話までお付き合いいただきありがとうございます。

お話自体は伏線をだいぶ多くの含んでおりますので、まだまだ続いてまいります。

突然書き始めるかもしれませんが、気長にお付き合いいただければ幸いです。


曲の方は、でき次第随時アップしていきますので曲も聞いていただいている皆様、しばらくお待ちください。


もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

※モチベーションを保つためにも是非お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ