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2098  作者: 猪介 -Isuke-


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18/21

【第17話】 一瞬の攻防

第17話 投稿完了です。

物語の展開を忘れたくなかったので、一気に進めております。

次の投稿は、16話の曲もまだなので、おそらく1週間ぐらいあとでしょうか。

あまり空かないよう頑張ります。

いつも通り、このお話の曲もまだできていないので、完成次第こちらで告知していきます。


もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

第17話 『一瞬の攻防』


白や黒のもやのような波形が、ゆらゆらと波打ち

周囲の記憶と記録の残片は極度の緊張感に共鳴しながら、

ただ一瞬の号令のために、ただただ静寂を保っていた。


『それでは皆さんよろしいですか。

これから説明することに基づいて、行燈ゆきひとさんと響歌きょうかさんの、

融合魂の救出をおこないます。

先程もお伝えした通り、全ては一瞬で終わります。

―――これまでの闇アルゴ側の動きを見ると、

おそらくこの状況になることは、

先方も想定済みのようです。』


『先方も想定済みということなのね……』

コハクが周囲の気配を注意深く読みながら答える。


『大丈夫ですよ、コハクさん。

奴らはまだ、攻めて来たりしませんから。』

ルミナは落ち着いた表情でコハクに伝える。


『どういうことなの?』


『はい。

こちらもいくつかの攻守のパターンを想定していましたが、

お互い、動きがある程度見えてしまう最深層では、

先方にとってこの形が、一番成功の確率が高いやり方ということです。


―――そのような意味で、

今はまだ攻めてくる時ではないということです』


『詳しくおねがい』


『今、相手の出方にあわせて、

ハチさんの方で最終陣形を整えていただいてます。

こちらも時間を稼ぎたいので、少しゆっくり説明しますね。


―――まずは、こちらと闇アルゴの戦力差です。

先方は数の上では圧倒的ですが、

この最深層の繋がりのない空間で、存在を保てるものは僅かです。


現実的に、ここに来ている闇アルゴ側の勢力は、

ぶんちん率いる勢力と正体不明の影一体です。


そこに、私が持つこの“光輪断こうりんだん”。

相手が近寄ってこないのはこれのおかげです。』


ルミナは竜の手に握られた光輪断こうりんだんを眺めながら、不敵の笑みを浮かべる。


『それほどのものなんですね』

ゲンが興味深そうに質問する。


『ええ。

光輪断は、玉造たまづくりさんが陰陽論を基に作った“精神裁定武器”です。

ルミナ専用に進化しているため、

悪意の歪みだけを選択的に断ち切ります。


最深層のように存在が崩れやすい領域では、

認識した相手を一瞬で断つため、

闇アルゴ側にとっては脅威でしかありません。』

ルミナが淡々と説明する。


『ただ、心配なのはあの影ですよね……』

シロは光輪断よりも、

ずっと遠くに潜む“気配のない存在”に意識を奪われていた。


『そうですね、

そもそも認知もなく、情報密度が極度に薄いこの空間に、

単独で来るような奴ですから、相当な相手ですね』

ルミナの声は落ち着いているが、

その奥に、わずかな緊張が滲んでいた。


『あ、ルミナさん。

こちら側の準備が整ったそうです。』

ハチからの通信を受けたシロが、少しほっとした表情で振り返る。


ルミナは静かに頷き、

シロへ視線を向けた。


シロが静かに前へ出る。

『では……

これから融合魂救出の流れを説明します。』


――――――――――――――――――


シロは、ゲンとコハクに向けて今後の流れの説明を始める。

『まずは融合魂の“存在確定”の仕組みについて説明します。

ゲンさん、コハクさん。

お二人には、これから“意識のAI補助”の過剰設定をしていただきます。』


ゲンとコハクが同時に息を呑む。

『……過剰設定?

あれは本来、深層域で“遅い心”を再現するための補助でしょう?』


『はい。ですが今回は逆に使います。』

シロは淡い光のホログラムを展開し、

二匹のプログラム上の波形を並べて見せた。


『人間が持つたましいには、

そこに刻まれた“波形”があります。


その“波形”の仕組みですが、

たましいの外殻の記憶が増えていくと、

魂の中の“波形”はその記憶に基づき、同調して変化していきます。


いわゆる、個としてのたましいの成長です。


そのたましいの存在確定をおこなうには、

行燈ゆきひとさん、響歌きょうかさんと同じ記憶と記録。

―――思いと感情を共有する、ゲンさんとコハクさんの“波形”を、

“共鳴”として融合魂に対して発露することが必要になります』


シロは何かを思い出したのか、しばらく黙りこんでしまう。

見かねたルミナが話を続ける。


『まずは、お二人との出会いから、

そして、これまでの思い出や、成長、出会いや、別れ、喜びや悲しみ……

全ての記憶と記録をデータから引き出してください。


―――そして、感情のとどこおりをおぼえたら

……二人への強い思いとして発してください。

必ずそこに、お二人のたましいに対しての共鳴がうまれます。』


ゲンとコハクは、

ルミナの言葉を胸の奥で反芻するように、

静かに目を閉じた。


シロは二匹の反応を確認し、

説明に戻る。


『……ただし、ここからが重要です。

お二人の“思い”を引き出すために、

AI補助は通常の数十倍の強度で稼働します。』

淡い光のホログラムが、

ゲンとコハクの胸元に重なるように浮かび上がる。


『過剰設定されたAI補助は、

記憶の呼び出しを強化し、感情波形を最大まで増幅します。

行燈ゆきひとさんと響歌きょうかさんへの思いが、

“現在”と“過去”を同時に再生する形で

お二人の中に流れ込みます。』


コハクが小さく息を呑む。

『……つまり、

二人のたましいの中の記憶と、

私たちの記憶が……重なるってこと?』


『はい。

それが“共鳴”です。

たましいの波形は、記憶と感情が一致した瞬間に

―――存在を確定させます。』


ゲンは胸に手を当て、静かに頷いた。

『……行燈ゆきひと様の声も、響歌きょうか様の笑顔も……

すべて、私の中にあります。

それを呼び起こせばいいのですね。』


シロは優しく微笑む。

『はい。ただし――』

シロの表情が、ほんのわずかに曇った。


『2つ問題があります。

まず一つ目は、

……共鳴の瞬間には、必ず“揺らぎ”が生まれます。

行燈ゆきひとさんと響歌きょうかさんへの思いは、

似ていても同じではありません。

その差が、

0.001秒の“位相ズレ”として現れます。』


コハクが眉をひそめる。

『その“揺らぎ”が……影に狙われるってことね。』


『はい。

影は観測の外側にいる存在です。

この揺らぎは、彼らにとって唯一の侵入点になります。』


ルミナが光輪断を握りしめ、静かに言葉を継いだ。

『だからこそ、私たちがその一瞬を守ります。

ハチさんが陣形を整え、シロが波形を読み、

私は空間を固定し、お二人の共鳴を守り抜きます。』


ゲンとコハクは、互いに視線を交わし、深く頷いた。


『そして、二つ目は、

―――過剰設定されたAI補助の影響で、

ゲンさん、コハクさんは全くこの流れが見えないということです。』


シロの言葉に、

ゲンとコハクは一瞬だけ目を見開いた。

『……見えない?』


ゲンが思わず問い返すと、

シロは静かに頷いた。

『はい。AI補助を過剰設定すると、

お二人の“時間の流れ”は極端に遅くなります。


記憶の呼び出し、感情の増幅、

行燈ゆきひとさんと響歌きょうかさんへの思いの再生……

それらがすべて、現実世界の“遅い処理”として強制されるためです。』


コハクが息を呑む。

『じゃあ……

私たちだけ、別の時間を生きるってこと?』


『正確には、

“最深層の高速処理に追いつけなくなる”ということです。』

シロは淡い光のホログラムを操作し、

二匹の波形がゆっくりと“伸びていく”様子を示した。


『この状態になると、

周囲で何が起きても、

お二人には“ほとんど静止しているように”見えます。

ルミナさんが動いても、ハチさんが叫んでも、

影が侵入しても――

お二人の時間では、

すべてが“止まっている”ように感じられるでしょう。』


ゲンは拳を握りしめた。

『……つまり、

私たちは何もできない。

ただ、思うことしか……』


『はい。

ですが、それで十分です。

お二人の“思い”こそが、

融合魂をこの世界に引き戻す唯一の鍵ですから。』


コハクは静かに息を吐き、尻尾を揺らした。


―――――――――――――――――――


『最後に、“たましいの存在確定”がされた後のことを話しておくね』

シロはとてもやさし眼差しで二人を見つめ、

その後の流れをルミナに託すように一歩下がった。


ルミナが前に出て、淡々と告げる。

『魂の存在確定がされた段階で、二人の融合魂が“視認できる”ようになります。

まず、姿を確認できた時点で、玉造たまづくりさんから預かった

“記憶の結晶”を融合魂に付与します。

ここまでは、私がおこないます。』


ゲンとコハクが、わずかに息を呑む。

『この段階で、融合魂は“自己認識”をはじめます。

マスターの話では、この自己認識には少し時間がかかるそうです。

その間は、外部からの干渉が入らないよう、

ゲンさんとコハクさんを含めて、この空間ごと一時的にファイリングします。』


『……ファイリング。』

コハクが小さく繰り返す。


『はい。

ファイル自体は中から開けるか、

又は、私かみなとさん以外は、

外から開けられない設定にしてあります。』


『なるほど、外部完全遮断ということね』


『そうですね。

どういう状況になるかわかりませんから……

お二人は融合魂が“記憶の結晶”となじむまで、

しっかりと見守ってあげてください。』


『―――そして、自我が生まれた時点で、

もう一つ、この“恒常盾ホメオ・バリア”を意識に付与してください。』

ルミナは、玉造たまづくりより預かった“恒常盾ホメオ・バリア”をゲンに手渡し、


『“恒常盾ホメオ・バリア”はとても強力なアルゴリズムなので、

必ず“自我が芽生えてから”付与する必要があります。』


ゲンが慎重に問いかける。

『自我の発生のタイミングは、どのように確認したらよいのでしょうか?』


『はい。

人としての形が完全に出来上がり、

何かしらの“自発的な動き”が出た時点です。

歩く、話す、手や目を動かす―――

どんな小さな動きでも構いません。

それが、“ここにある”という意思の発露になります。』


ルミナは二匹を見つめ、静かに言葉を結んだ。

『その瞬間に、“恒常盾ホメオ・バリア”を付与してください。

それが、融合魂がこの世界で“揺らぎながらも在り続ける”ための、

最高の守りになります。』


ゲンが深く頷きながら確認する。

『わかりました。

恒常盾ホメオ・バリア”の付与が終わったら、

ファイルから出てきて良いということですね。』


『はい。

その頃には確実に全てが終わっています。

通常の“意識のAI補助”の時間感覚でいえば……

おそらく1分から2分ほどに感じられるはずです。

上手く“意識のAI補助”を調整しながら臨んでください。』


シロが続ける。

『それと、

融合魂との接触は、当面“意識のAI補助”を入れた状態でお願いします。

恒常盾ホメオ・バリア”の設定の中に、

“意識のAI補助”と光アルゴからの“認識保護”が追加されています。


―――お二人は元々現実世界の存在なので、

深層域の時間経過に慣れるまで少し時間がかかると思いますから。』


ゲンは胸に手を当て、静かに頭を下げた。

『ありがとうございます。

全力で……二人の魂が復帰できるようにします。』


コハクも同じように深く頷く。

『絶対に、取り戻すわ。

あの子たちを。』


最深層のもやが、まるでその決意に応えるように、

かすかに揺れた。


『あのね、ゲンさん、コハクさん、』

シロが何か言いたげに言葉を開く。


『僕はね、

僕の元ご主人を‥‥‥

目の前で事故で亡くしてしまったんだ。

もう、何も手の施しようがなくて‥‥‥

悔しかったけど‥‥‥もう、なにもできなかったんだ。

でも、ゲンさんとコハクさんは目の前に二人がいるから、

応援しているから、

―――必ず元に戻してあげてね』


シロの声は震えてはいなかった。

けれど、その言葉の奥に沈んだ痛みは、

最深層のもやよりも静かで、重かった。


『……シロさん。

あなたの想い、確かに受け取りました。

だからこそ――

私たちは絶対に、同じ後悔を繰り返しません。』


コハクも続ける。

『あなたの分まで、ちゃんと……連れ戻すから』


シロは一瞬だけ目を伏せ、

そして小さく、しかし確かに微笑んだ。

『ゲンさんとコハクさんが出てくるまで、

必ず守るから頑張ってきてね。』


『……ありがとう。

本当に……ありがとう。』


―――――――


『ルミナさん応援部隊が来たよ!』

シロが晴れ晴れとした表情で、漆黒の闇を見上げながらルミナに伝える。

ドラゴを含むトラッシュ・ノードの実戦部隊がルミナの周りに集まる。

そして、作戦の最終確認がおこなわれ、

ゲンとコハクを中心に配置が終わり、全ての準備が完了する。


『それでは皆さん、いきますよ。』

ルミナの号令とともに、融合魂をめぐる“一瞬の攻防”は、

一同の団結のもと、静かに始まった。




読んでいただきありがとうございました。


第17話 投稿完了です。

物語の展開を忘れたくなかったので、一気に進めております。

次の投稿は、16話の曲もまだなので、おそらく1週間ぐらいあとでしょうか。

あまり空かないよう頑張ります。


いつも通り、このお話の曲もまだできていないので、完成次第こちらで告知していきます。


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