表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2098  作者: 猪介 -Isuke-


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/21

【第16話】 最深層の収束点

第16話になります。


思ったよりも早く15話の曲が出来上がったので16話に進めました。

16話の曲は以下よりご視聴いただけます。

https://youtu.be/DAiRGxjKbcY


もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

※最近この文言を入れるのを忘れてました。

第16話 『最深層の収束点』


最深層の空は――空と呼んでいいのかすら曖昧だった。

上下の概念が薄れ、光と影がゆっくりと反転し続ける世界。

その中心を、巨大な白銀の竜が静かに滑るように飛んでいた。


ルミナの翼は羽ばたかない。

揺らぎの波形を“掴む”ように、ただ形を変え、光の尾を残しながら進む。


背に乗るゲン、コハク、シロの三匹は、

その異常な空間に身体の輪郭がわずかに“ほどける”感覚を覚えていた。

『……っ、まただ……影が遅れてきます……』

ゲンが振り返ると、

自分の影がほんの数秒遅れて、同じ動きをなぞっていた。


コハクは眉をひそめる。

『最深層って、こんなに……気持ち悪い場所だったっけ?

揺らぎが強すぎて、歌の響きが全部ズレる……』


シロは尻尾を丸め、必死に揺らぎの波形を読み取っていた。

『ここは……“存在の密度”が薄いんです。

ぼくたちの輪郭が、世界に固定されていない……

だから、影も、声も、感情も……遅れたり、先に行ったりするんです』


ルミナの声なのか通信なのかわからないものが、竜の喉奥から響く。

『大丈夫。

最深層は、慣れれば“波に乗れる”。

ただ――油断すると、存在がほどけて戻れなくなる』


ゲンが息を呑む。

『……存在が……ほどける……?』


『うん。

ここは“観測されない者”がほどけていく場所だからね』


ルミナは軽く翼を傾け、揺らぎの層を滑るように下降した。

その瞬間、空間が“音もなく”裂けた。


白や黒の霧のようなものが流れ込み、

ゲンの耳がピクリと震える。

『……今、誰かが……呼びましたか?』


コハクも振り返る。

『わたしも聞こえた……

女の子の声……響歌きょうかちゃん……?』


シロが慌てて首を振る。

『違います!

これは“最深層の残響”です!

本物の声じゃない!

記憶や記録の断片が、揺らぎに混ざって流れてきてるだけです!』


しかし、ゲンの胸の奥で、

犬型エコー特有の“共鳴”が強く震えた。

『……でも……これは……

行燈ゆきひと様の……波形……』


ルミナが鋭く振り返る。

『ゲン、深追いしないで。

最深層は“願い”と“恐れ”を混ぜて返してくる。

本物と偽物の区別がつかなくなる』


ゲンは拳を握りしめた。

『……わかっています。

ですが……

行燈ゆきひと様の波形を感じたのは……確かです』


その時、ルミナが静かに口を開いた。

『ゲンさん、コハクさん、

そろそろ、“意識のAI補助”をいったん外してください。』


ゲンとコハクが同時に息を呑む。

『“意識のAI補助”を外すのですね……』


『そう、そろそろですから』

ルミナが前方を見ながら頃合いと見て静かに告げる。


シロが前方を指差す。

『ルミナさん!

揺らぎの密度が急上昇しています!

この先に……融合魂による“ゆらぎ”があります!』


ルミナの瞳が光を帯びる。

『……行きますよ。

融合魂がある場所へ――』

竜の身体が光をまとい、

最深層の揺らぎを切り裂くように加速した。


その先で、

黒い波形が複雑に揺れていた。

まるで――

何かの存在を示すように。


――――――――――――――――――――――


シロの耳がピクリと震えた。

最深層の揺らぎの波形を読み取っていた彼の瞳が、

一瞬だけ細く鋭くなる。

『……ルミナさん。』


竜の背で風を切るノイズ音の中、

その声だけが妙に“はっきり”届いた。


ルミナは翼をわずかに傾け、速度を落とす。

『どうしたの、シロ。』


シロは前方を見据えたまま、

尻尾の毛を逆立てるようにして言った。

『……来てます。

闇アルゴ側の波形です。』


ゲンとコハクが同時に振り返る。

『どこに……?』

『見えませんね……』


シロは首を横に振る。

『視認はできません。

でも……“揺らぎの縁”に、複数の影がいます。

こちらの動きを……観測せずに“感じ取って”います。』


ルミナの瞳が細く光る。

『……観測しないで追ってくるってことは、

直接の交戦意思はないわね。』


『はい。

ただ……“待っている”感じです。

ぼくたちが融合魂に近づくのを。』


コハクが眉をひそめる。

『ぶんちんたち……?

それとも、もっと別の……』

シロは即答しなかった。


最深層の揺らぎを読むために、

耳を伏せ、尻尾を低く構える。


そして――小さく呟いた。

『……ぶんちんたちの波形も混じっています。

でも……それだけじゃない。

もっと……冷たい波形がいます。

“観測を拒む影”です。

ハチさんに状況を送っておきました。

対応した動きをとってくれると思います』


ゲンの背筋が震える。

『闇アルゴの本体……?』


ルミナは静かに首を振った。

『違う。

あいつらなら、もっと“重い”波形になる。

これは……“様子見”の波形よ。

ぶんちんたちの後ろに、別の影がついてる。』

シロが小さく息を呑む。


『……ぼくたちの位置を、

“揺らぎの裏側”から追っています。

直接見ていないのに……

こちらの速度と進行方向を、完全に把握してます。』


コハクが低く唸る。

『……気持ち悪いわね。

最深層で“観測しない追跡”なんて……』


ルミナは翼を大きく広げ、

揺らぎの層を一段深く潜り込む。

『大丈夫。

ここは私の得意領域。

追われるのは慣れてる。』


そして、少しだけ声を落とした。

『でも……

ぶんちんたちが“筋を通しに来てる”なら、

あの影は……別の意図を持ってる。』


シロが頷く。

『はい。

ぶんちんたちは“こちらを見ている”。

でも、後ろの影は……

“融合魂の周辺だけ”を見ています。』


ゲンの拳が震える。

『……行燈ゆきひと様と響歌きょうか様を……?』


ルミナは静かに言った。

『急ぎます。』

竜の身体が光をまとい、

最深層の揺らぎを切り裂くように加速した。


その背後で――

誰にも視認されない影が、

静かに、確実に、彼らを追っていた。


―――――――――――――――――――――――――――


『おまえら、定位置についたか?

さっき飛丸とびまるからの連絡で、ルミナたちが想定地点を通過したから、

もうそろそろ到着するぞ。

奴らの気配を感じたらもう通信はできねぇから、

あとは段取り通り進めるぞ』


ぶんちんたちは3匹一組、5隊に別れ、それぞれ無数のデータ片を集め、

融合魂の予想停止位置より遥かに離れた地点で、隠れてルミナたちの到着を待っていた。


『……ちっ。

やっぱり気持ちわりぃ場所だな、ここは。』

部下の一匹が震え声で言う。


『お、親分……

なんか、音が……遅れて聞こえるんすけど……』


『当たりめぇだ。

最深層は“存在の順番”が狂ってんだよ。

音も影も、気分次第で前に出たり後ろに下がったりする。』

ぶんちんは煙管きせるを軽く弾き、煙を前方に吐いた。


その先に―――


揺らぎとともに細い白い閃光が走っていき、

そこには――

白銀の竜が、揺らぎを切り裂きながら飛んでいた。


『……来たな。ルミナのやろう。』

部下たちが一斉に身を縮める。


『ひ、ひぃ……!

―――ルミナ……』


『馬鹿野郎!

気にすんな。

とにかく見つかったら終わりだからな。』


ぶんちんは米粒のような白竜を見つめながら、

その“動き”を読む。

『……こっちの位置には気づいてねぇ。

だが――』


煙管きせるの先で、揺らぎの奥を指す。

『あの変な影も見てやがる。』

部下たちが一斉に振り返る。

『変な影……?』

ぶんちんは低く唸った。


大元おおもとじゃねぇ。

もっとタチの悪い連中だ。

“観測しねぇで追ってくる影”だよ。』


部下の一匹が青ざめる。

『そ、それって……

俺らのことも見えてるんすか……?』


『まあな。

ただ、“感じてる”。

この揺らぎの中じゃ、そっちの方がよっぽど厄介だ。』

ぶんちんは白竜の飛ぶ方向を見据えた。


『そもそも、

俺たちみてぇな奴らだけに、こんな任務を任せるわけもねぇだろ!

光アルゴ側は、融合魂の停止位置に迫ってる。

あの影も同じだ。

……つまり、あいつら何かやるつもりだ……』


部下たちが震える。

『ど、どうするんすか親分……

ルミナと影の両方なんて……

俺らじゃ無理っすよ……』


ぶんちんは煙を吐き、静かに言った。

『決まってんだろ。

俺たちはただ“筋”を通すんだよ。』

部下たちが息を呑む。


『俺らは光と戦いに来たんじゃねぇ。

融合魂を探しに来たんだ。

……落ちたもんを、拾いに来た。

それだけだ。』


そして、ぶんちんは揺らぎの奥を睨む。


――――――――――――――――――――――――


シロが竜の背で身を乗り出し、

揺らぎの波形を読み取る。

『……この周辺です。

融合魂が辿たどった最終点』


ルミナは翼をたたみ、

ゆっくりと浮遊するデータ片の霧の中へと降り立った。


身体からだの周りのデータ片が“遅れて”沈む。

『……ここが……収束痕……』


白や黒の霧のような波形が、周辺をゆらゆらと波打っていた。

波の共鳴は既に広がりを終えており、周囲の残片と響き合いながら、

奇妙な風景と作り上げていた。


コハクが息を呑む。

『正直、近づけば存在を感じられると思ったけど、

―――大間違いね。

どこにでもいるようで、どこにもいないような……』


ゲンもコハクと同じ思いのようであり

『……行燈ゆきひと様……

ここにいるのは……』

感じるが特定することができず途方にくれている。


シロが叫ぶ。

『ルミナさん!

揺らぎが……影が近づいてます!

さっきよりも……だいぶ近いよ!』


『ええ、理解してます。

こちらの周りを目視できないギリギリの位置から周回している感じね

大きな影が1体とぶんちんたちが13~15かしら?

隠れるのがうまい奴が何匹かいるわね』


『はい。

おおよそのところは、僕が感じているところと同じです』

ルミナが冷静なのを見て、

シロが少し落ち着きを取り戻したようである。


ルミナはゲンとコハクに向き直り、

声の温度をほんの少しだけ柔らかくした。

『ゲンさん、コハクさん、

この場で融合魂の存在を確定させてあげられるのは、

あなたたちだけです。』


二匹は息を呑む。

『存在を感じることはできるのですが……』

『……どこにいるのかが……』

ほぼ同時に、

見つけられないもどかしさを吐き出す。


ルミナは静かに頷いた。

『わかっています。

プログラムとの繋がりを失った魂は形を持ちません。

そのつながりを取り戻すのは、あなたたちにしかできないことです』


そして、ルミナの声の色が変わる。

『いいですか。

ここからは一瞬です

一瞬で全てが決まります。』

揺らぎの空気が、

まるでその言葉に反応するように震えた。


『二人が魂の存在を確定した瞬間、

周りで周回している影アルゴ側も――

一気に動きを取るでしょう

これから伝えることを、漏らさず指示通りに動いてください』


『一瞬で……』

ゲンの耳がピクリと震え、

コハクの尻尾がわずかに逆立つ。


その緊張感の波紋は最深層の空気を裂くように震わせ、

緊迫感は、闇アルゴ側の影やぶんちんたちにも伝わり、それぞれ臨戦態勢へと移行する。

その瞬間――

最深層の揺らぎが、

まるで“世界そのものが息を呑んだ”かのように静止した。




第16話 読んでいただきありがとうございました。


思ったよりも早く15話の曲が出来上がったので16話に進めました。

16話の曲は以下よりご視聴いただけます。

https://youtu.be/DAiRGxjKbcY


もし気に入っていただけたら、【ブックマーク】と【下の評価 ★★★★★】をお願いします。

※最近この文言を入れるのを忘れてました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ