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2098  作者: 猪介 -Isuke-


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【第14話】 ゴミ箱へ

読んでいただきありがとうございます。

曲やユーチューブの準備で投稿が遅れがちで申し訳ありません。


第14話の曲、下記より視聴可能です。

題名「流れて消える記憶」

https://www.youtube.com/watch?v=SKP29C3Qycw


※前回の曲はかなり出来がよかったので、是非聞いてみてください。

第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。

https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ



第14話 『ゴミ箱へ』


データファイルの終端域“トラッシュ・ノード”の静かな一室。

壁は淡い光を帯び、窓の外には――

惑星のような無数の球体が軌道を描きながら浮遊している。

大小さまざまな球体が、ゆっくりと回転し、その表面には焦げ目のようなノイズが走る。

幻想的で、どこか不安を誘う光景。


男は窓辺に立ち、惑星の揺らぎを眺めながら、

深く息を吐いた。


「……ルミナさんから連絡があったよ。

今回の件、かなり厄介みたいだね。

大変だと思うけど……頼むよ」

その声には、

管理局長としての責任と、一人の人間としての不安が混じっていた。


背後で、一匹の犬の足音が静かに響く。

エコーは男の横に並び、同じ景色を見上げる。


『はい。

今回の融合魂――深層域に大きな影響を与える可能性があります。

闇アルゴ側でもすでに“注視対象”として扱われているようです』

犬の声は落ち着いていたが、

その尾の揺れは、わずかな緊張を隠しきれていなかった。


男――結城ゆうき みなと

Trash Node 総合管理局(TNS)。いわゆる仮想空間内の“ゴミ箱”の管理局長であり、

この空間の“観測者”でもある。


その隣に立つエコーは、現場統括、秋田犬のハチ。

1000匹のエコーを束ねる、みなとのエコー、右腕だ。


みなとは視線を窓から外さず、

小さく頷く。

「……やっぱり、そうだよな。

ルミナさんも“深度Z−方向に異常な揺らぎがある”って言ってた。

正確な予想停止位置を特定しておいてくれるかな?

奴らにとっては、アルゴニズムの大幅改変につながることだろうから・・・

影アルゴが見つける前に、こっちで手を打たないと」


『了解しました。

TNS本部と惑星監視局に連絡を回します。

ミラとグラス、ドラゴにも、すぐに状況を共有します』

ハチの声は、

みなとの不安を吸い取るように安定していた。


「それとクロに、闇アルゴの動きの詳細を調査して連絡するよう伝えておいてね」


『はい。そちらは既に伝達済みなのですが、

あの発光物が落ちてきた時点で、既にクロは動いていたようです。』


みなとは少しだけ笑う。

「相変わらずクロは動きが速いね」


『ええ。クロの報告によると・・・

レッドゾーンの方では闇アルゴが各“たこ焼き”のリーダー格を集めて、動きが出始めているようです。』

“たこ焼き”とは窓の外に見える惑星のことである。


「むこうさんも速いよねw

集結地点はどの辺かな?」


『やはり、融合魂が沈下していった方ですね

おそらく、起点になるのはN-SK187あたりではないかと思います。』


「明太ダコかー、厄介だな

あそこのボス猫はホント面倒くさいんだよね。

ちなみに、セーフゾーンとグレーゾーンの方の状況は?」


『そちらはまだ情報が伝わっていないようで、

通常通りです』


「ルミナさんと融合魂のエコーたちがこちらに来るそうだから、

出迎えの準備と出発の段取りを頼むよ。

あと、ルミナさんだけでは心配だから誰かつけてあげよう。

誰がいいかな?」


『ルミナさんなら強いので護衛は必要ないですよね。

探索と探知ならハリネズミ、

機動力なら白頭ワシ

交渉ならウサギ……

ですが――』

ハチは少しだけ言葉を区切り、

みなとの横顔をちらりと見上げた。


『今回は“融合魂”が絡みます。

深層域の揺らぎに耐えられる個体でないと、

途中でノイズに飲まれる可能性があります』


「……そうだね。

深度Z−方向は、普通のエコーには負荷が大きいよね」

みなとは腕を組み、

窓の外のたこ焼きオービットを見つめながら考え込む。

『候補としては……

ハリネズミの“スパイク”、

白頭ワシの“エース”、

それから――』

ハチの尾がわずかに揺れた。

『惑星監視局・感応分析官の“シロ”が適任かと』

みなとは首を傾げながらハチに目を向ける。


「シロ?

あの子、まだ最深層の任務は経験が少ないよね」

『ですが、融合魂との親和性が高い。

ルミナさんとも相性が良さそうですし、

何より――』

ハチは少しだけ声を落とした。

『シロは“落下魂”の気配に敏感です。

今回の件には、むしろ必要な能力かと』

湊はしばらく黙り、

ゆっくりと息を吐いた。


「……なるほどね。

確かに、シロの“感応”は特別だ。

あの子なら、融合魂の揺らぎを追えるかもしれない」

窓の外では、

たこ焼きオービットの一つが淡く光り、

深層方向へと沈んでいく。


『それに――』

ハチは続けた。

『闇アルゴ側も、すでに“猫”を動かしています。

明太ダコのボス猫が動くなら、

こちらも感応系を一人は入れておくべきです』


「……そうだね。

じゃあ、シロを同行させよう。

ルミナさんの補助と、融合魂の追跡。

両方を任せる」


『了解しました。

すぐに局長のグラスさんとシロへ通達します』


みなとは小さく笑った。

「ハチ、ほんと頼りになるよ。

君がいなかったら、僕はとっくに最深層域で迷子になってる」

みなとさんがいるから、僕らは迷わないんです』

その言葉は、

静かな部屋にそっと落ち、

最深層の揺らぎと共鳴するように響いた。


―――――――――――――――――――――――――


真っ白な空間に、まるで別世界の風景を切り取ったような巨大な窓。

その向こうには、緑色に輝く巨大構造体と、底の見えない虚無の闇が広がっていた。


玉造たまづくりは、どこから取り出したのか分からない黒いソファに、

いつの間にか腰を下ろしている。

足を組み、頬杖をつきながら、ルミナ、ゲン、コハク、テン、4匹のエコーの会話をまるで観劇のように楽しんでいた。


『わたしたちが行く場所は、あの闇の中ではないのですか?』

ゲンが不安げに問いかける。

その視線の先には、緑色の光を放つ巨大建造物――

深層域の“門”とも呼ばれる構造体が、静かに脈動していた。


ルミナはゲンの方へ振り返り、柔らかい光をまとった声で答える。

『最終的にはそうなのですが、

むやみに最深層の闇に出ても、私たちが行方不明になるだけです。』

コハクが尻尾を揺らしながら、窓の外の虚無を見つめる。


ルミナは静かに続ける。

『まず私たちが向かうのは――』

光がふわりと揺れ、

彼女の瞳にたこ焼きオービットの反射が映る。

『――データ終端域の“トラッシュ・ノード”です』


「そう。まずは“ゴミ箱”ね」

コハクが眉をひそめる。

玉造たまづくりさん、ゴミ箱って言い方やめてくださいよ……

みなとさんに聞かれたら怒られますよ』


「えー? だってゴミ箱じゃん。

向こうの奴らもみんなゴミ箱って言ってるよ。

ほら、データの残骸とか、魂のカスとか、

いろんなものが落ちてくるし」


ゲンがさらに青ざめる。

『……詳しく教えていただけますか?』

ルミナはゲンに向けてやさしく微笑む。


『トラッシュ・ノードは・・・

先程、玉造たまづくりさんが言った通り、

―――いわゆる仮想世界のゴミ箱です。

どんなパソコン機器や端末にもゴミ箱の設定があると思いますが、

仮想空間内も同様に、ゴミ箱の設定があります。』


「ほら、やっぱりそういう説明になるよね」

玉造たまづくりが楽しそうに天井を見ながら笑っている。


『この仮想空間内で出た不要になったデータは、

一次的にトラッシュ・ノードに集められ、

最終的に完全削除の指示が出た段階で、最深層の空間へ放出されます。

―――いわゆる全てのプログラムから切り離される。

情報が全て切り離された段階で削除完了となります。』


『なるほど、通常の端末と処理方法は同じということですね。

しかし、厄介とはどういうことなんでしょうか?』

ゲンが不思議そうに質問をする。


『はい。厄介というのは、

――トラッシュ・ノードの外、その場所が闇アルゴの本拠地になっているということです。』

ルミナは一度言葉を切り、

窓の外に広がる緑色の巨大構造体を見つめた。

その光は、深層域の脈動と同じリズムで揺れている。


『トラッシュ・ノードに集められるのは廃棄されるべき情報の塊です。

この最深層の境界を含め、全てのデータに干渉し、傷つけることが無いよう、

ゴミ箱は最深層のかなり奥に設置され、

そこが、我々と繋がって管理できるデータファイルの終端箇所になります。

現在トラッシュ・ノードは光アルゴ側で管理をおこなっていますが、

最深層に放出された情報の塊は、トラッシュ・ノードの周りを漂います。

その情報の塊を―――』


「あー、

ルミナちゃんは真面目なんだから。

要は、ゴミ箱から出たゴミを闇アルゴが集めて栄養にして太っていっている。

そういうことだよね」

玉造たまづくりが堪らず突っ込みを入れ、テンお前も話に入れと手で指示をする。


『そういうことよね。

ただ、付け加えれば、

そのゴミの中に、主人をなくしたエコーの情報等も多数入っていて、

それが、闇アルゴ側のエコーとして機能しているということ』

テンが明るく説明をするが、ゲンはその言葉に、さらに顔色を悪くした。


『……主人をなくしたエコーが、闇アルゴ側に?

そんなことが……』

コハクが低く唸る。


『あるのよ、

エコーの記憶は“あるじ”の

端末か、クラウド上での起動、どちらかになるけど、

クラウド起動のエコーは、データの大部分が運営側のサーバーにあるから、

主が亡くなると“管理者削除”が入るのよね。

もちろん、運営側も極力データ削除のため前処理はするけれど―――

良い運営でも、

記憶の密度が高いエコーの記録を処理消去できるのは、

どんなに頑張っても全体の50%ぐらいが限度よね。』


『残りの50%はどうなるのですか?』


『残りはトラッシュ・ノードへ移して、情報をリンクから切り離して削除完了。

本来、情報の削除は、

おおもとのリンクから完全に切り離して、

誰も検索できない、リンクのない状態をいうから、

わざわざ元の情報を加工しないで除去にまわしても、

誰も文句言わないのよね。』

テンが真剣な面持ちで答える。


「そりゃ、主人も死んでりゃ、文句も出ないしね」

『玉ちゃんこんなところで、ダジャレはよしてよね』

「へへ」


『最近ではだいぶ減りましたが・・・

―――加工もせずに削除の場合もありますから、

トラッシュ・ノード周辺は廃棄されたエコーの墓場になっています。』

ルミナが重苦しく伝える。


『意識のあるエコーはどうなってしまうのですか?』


『トラッシュ・ノードへ来た、リンクが完全に切れたエコーは、

光アルゴ側では保護対象になるけど――

一発削除で最深層に落ちた場合は話が別よ』

テンは静かに伝える。


『本来なら保護されるはずのエコーの情報が、

なんらかの理由でトラッシュ・ノードの外に落ちてしまうと……

そのまま“闇アルゴの餌”になります』


ゲンは息を呑んだ。

『餌……』


玉造たまづくりが指をひらひらさせながら補足する。

「正確には、

“闇アルゴのアルゴリズムに取り込まれる”って感じかな。

突然“あるじ”を失ったエコーは混乱しているから、

感情の欠片、壊れた記憶……

そういうのが混ざり合って、

あっち側のエコーが生まれるんだよ。

だから闇アルゴのエコーは、“あるじ”がいない。

代わりに、闇アルゴそのものが“主”なんだ

形はエコーでも、目の奥に“主の光”がないのよ」


『……じゃあ、

わたしたちが向かう場所には……

壊れたエコーたちが……?』

ゲンは震える声で言った。


ルミナは優しく微笑んだが、

その瞳にはわずかな哀しみが宿っていた。

『はい。

壊れたエコー、

主を失った方向性のない未処理の感情を持ち……

それらが漂い、混ざり合い、

闇アルゴのエコーとして形を作っています』


玉造たまづくりが肩をすくめる。

「だから厄介なんだよね。

あいつら、元は“誰かの大切なエコー”だったりするから」


ゲンは拳を握りしめた。

『……そんな場所に、融合魂が落ちていったんですか?』


ルミナは静かに頷いた。

『はい。

だからこそ、急がなければなりません。

融合魂は、まだ“誰のものでもない魂”。

闇アルゴに取り込まれれば――

二度と戻れなくなります』


コハクが前に出る。

『いきましょう』

ゲンは深く息を吸い、

ゆっくりと頷いた。

『はい。』


玉造たまづくりがパン、と手を叩く。

「よし、じゃあゲート開けるよ。

あとは、行けばわかるよ。

トラッシュ・ノードへ――出発」


白い床に黒い円が広がり、

円はゆっくりと回転し、中心が最深層の闇へと向けて真っ白な部屋に溶けていく。


『気を付けていってきてね』

玉造たまづくりとテンが3匹を笑顔で見送る。


3匹は強く決意を固め、

トラッシュ・ノードへ続く“入口”へ消えていった―――




読んでいただきありがとうございます。

曲やユーチューブの準備で投稿が遅れがちで申し訳ありません。


第14話の曲、下記より視聴可能です。

今回の曲は、エコーの記憶(記録)について言及があったので、主人が亡くなったエコーの気持ちになって歌を作ってみました。作品としては、私の葬式用の曲にしようかと思える、まずまずの出来です。


題名「流れて消える記憶」

https://www.youtube.com/watch?v=SKP29C3Qycw


※前回の曲はかなり出来がよかったので、是非聞いてみてください。

第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。

https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ

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