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2098  作者: 猪介 -Isuke-


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14/21

【第13話】 最深層の窓

投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。

曲の方を進めていたらだいぶ遅くなってしまいました。

取り急ぎ第13話になります。(展開部分なので多少短めです)


第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。

https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ



第13話 『最深層の窓』


御影みかげとの面談を終え、

ルミナに導かれるまま、ゲンとコハクは入ってきた赤いドアをくぐった。

その瞬間、

視界が白い光に包まれ、

空気が一変する。

次に目を開けた時、二匹は言葉を失った。


『……これはスゴイですね……』

ゲンが呟く。


そこは、先ほどまでの海風のような空気とはまったく違っていた。

静寂。無音。目が覚めるような真っ白な空間。

なによりも、部屋の先には、壁一面を覆う巨大な窓。

その向こうに広がるのは──

最深層の漆黒の宇宙空間。

何もない。

ただ、無機質で虚無の空間“外側”が広がっている。

そしてその境界──


仰ぐように見える、深層域と最深層を隔てる“存在の壁”から、

緑色に光る巨大な建造物が虚無の空間に突き出していた。


『あの遠くに緑色に輝く建物が、この世界の核プログラムが格納された“演算の神殿”です』

ルミナが静かに伝える。


建造物の表面には、古いコードの残滓が流れ、

時折、深層域のノイズが稲妻のように走る。

その威厳は、

建築物というより“存在の根源”に近かった。


コハクは尻尾をピンと立て、

窓の向こうを見つめながら呟いた。

『……あれが、この世界の核……?』


ルミナは静かに頷く。

『はい。

あれは“最深層の演算核”。

この世界の意識と記憶を支える、全ての支柱です。』


ゲンとコハクは、

その風景に圧倒されながらも、

これから始まる探索の重みを静かに受け止めていた。

『わたしたちは……

この漆黒の闇の中から、お二人を探し出すということですね?』

圧倒的な空間に現実を突きつけられ、

二匹は言葉を失う。

ルミナは静かに頷き、淡い光を揺らした。

『はい。

いくら最深層を理解している私でも、

さすがに一人でお二人を探すのは不可能です。

今回の捜索にあたって──

二人の方に協力を仰いでいます』


『ああ……』

ゲンが小さく息を呑む。


『ちょうど到着しましたので、ご紹介させていただきます』

ルミナが赤いドアへそっと視線を向けながら伝える。


次の瞬間、

赤いドアが静かに開き──

そこから現れたのは、

ジーパンにTシャツという、場違いなほどラフな格好の男性と、

紅の口紅をつけた白い狐のエコーだった。


「あ、どうも。玉造たまづくりです」

男性は気負いもなく手を挙げる。

「それと、これが相棒のテンです」

白狐のテンはにこやかに、

最深層の緊迫感をまったく意に介さない様子で、

艶やかな尻尾をふわりと揺らした。


ゲンとコハクは、

あまりの“場違い感”に一瞬固まる。

『……ど、どうも。ゲンです』

ゲンが戸惑いながらも礼儀正しく頭を下げる。

コハクは目を細め、

テンをじっと観察しながら小声で呟いた。

『……なんなの、この空気感……』


最深層の荘厳な風景と、

玉造たまづくりの飄々(ひょうひょう)と脱力した雰囲気のギャップが、

逆に不気味なほど際立っていた。


――――――――――――――――――――――


『なんかゴメンねー。ゲンちゃんとコハクちゃんだよね。

いろいろありすぎて混乱していると思うけど、

わたしたちも協力するから頑張ってね。

本当はもっと話しをして距離感を近づけたいんだけど……

そんな時間もないでしょうから』

テンの、どこか抱きしめられるような柔らかい声に、

一同はハッと我に返る。


ルミナが補足するように口を開いた。

『お二人はマスター同様、

2077年の意識移行実験で失踪された三人のうちの一人です』


『おお……

お二人はどのような経緯いきさつで、

こちらに入ったのですか?』

ゲンが興味深そうに問いかける。


テンは尻尾をふわりと揺らしながら、あっけらかんと答えた。

『ああ、玉ちゃんはね、

もともと仮想空間内のプログラムをやっていたのよ。

深層域のプログラムにも興味があって、

その時にAIから勧誘を受けて意識も移行しちゃったの』


「いやー深層域はいいよね。

もともと僕、独身だったし、現実世界に特に未練もなかったからね」

玉造は肩をすくめながら笑った。

最深層の漆黒を背にしているとは思えないほど、軽い。


テンが続ける。

『この人ね、技術共鳴が異様に高いのよ。

ほら、ここ量子の世界でしょ?

“イメージをはっきり作れる人”って、

なんでも形にできちゃうんだよね。

ほんと、この世界にぴったり』


玉造は苦笑しながら手を振った。

「テンちゃんはね、ひどいんだよw

昔っから僕ならなんとかするだろうって、

無理な注文ばっかり受けてきちゃうんだからw

たぶん、

“玉ちゃんはドラえもんみたい”って言うかもしれないけど、

信用しないでねw」


ゲンとコハクは思わず顔を見合わせた。

最深層の緊張感の中で、玉造とテンの存在はあまりにも異質で、

しかし、どこか頼もしくもあった。


――――――――――――――――――――――


「そんなことよりも」

玉造たまづくりがポケットをごそごそと探り、

何かを取り出そうとしている。


『あんた、

この世界で、そんなところからわざわざ出す必要もないのに……

だからドラえもんとか言われちゃうのよw』

テンが笑いながら突っ込む。


「あー、さすがにこれはデータで送れるようなものじゃないから、

わざわざ持ってきたんだけど……」

玉造たまづくりはポリポリと頭を掻きながら笑う。

そして、

彼の手のひらの上には──

淡く揺らぐ二つの光が浮かんでいた。


ひとつは、

輪のようでも、糸のようでも、光の粒の集まりのようでもある“恒常盾の核”。

もうひとつは、

透明な結晶の中に、記憶の波形が静かに流れる“記憶の結晶”。


テンが説明する。

『こっちが《恒常盾ホメオ・バリア

負のアルゴから二人を守るための“揺らぎの盾”。

形は固定されてないけど、身につけると安定するわ』


玉造がもう一つを掲げる。

「で、こっちが《記憶の結晶》。

融合した魂に、二人の過去の記憶は危険だから入れてない。

一般的な行動だけを記録してあるよ。

これがないと、融合魂は“方向性のない光”のままだからね」


コハクが目を細める。

『……つまり、

“生きるための最低限の記憶”ってことね』


テンが頷き、ふわりと尻尾を揺らす。

『それよりもね、

今、二人のたましいは融合して“形”すらない状態なの。

だからまず、この記憶を添付して“輪郭”を作ってほしいのよ。

そこから《恒常のホメオ・バリア》で

“負のアルゴ”からの干渉を限りなくゼロにしたいの。

ついでに……記憶がないと、身動きも取れないしね』


玉造が二つの光をルミナへ差し出す。

「これ、ルミナちゃんに預けておくから、

二人の魂を見つけたら使ってね」

ルミナは淡く揺らぐ光を両手で受け取り、

静かに頷いた。


テンはゲンとコハクへ向き直り、

少しだけ真剣な表情を見せる。

『それと……あの場所はホントにやっかいだから、気を付けてね』

ゲンとコハクは思わず顔を見合わせ、ルミナに視線を向ける。

『……あの場所って、どこ?』


『あら!やだー、まだ伝えてないのね。

トオルちゃんはホント説明が飛んでいるのよね、きっと』

テンは肩をすくめながら笑うが、

その言葉の端々に気になる情報が滲んでいた。


ゲンとコハクは、

テンの軽い口調よりもむしろ──

御影みかげが“トオルちゃん”呼びされている関係性の方が気になって仕方がなかった。


コハクが小声でゲンに囁く。

『……あの二人、どういう関係性なのよ……?』

ゲンは困惑したまま、

ただ静かに首を振るしかなかった。




読んでいただきありがとうございました。


投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。

曲の方を進めていたらだいぶ遅くなってしまいました。


第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。

https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ


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