【第13話】 最深層の窓
投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。
曲の方を進めていたらだいぶ遅くなってしまいました。
取り急ぎ第13話になります。(展開部分なので多少短めです)
第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。
https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ
第13話 『最深層の窓』
御影との面談を終え、
ルミナに導かれるまま、ゲンとコハクは入ってきた赤いドアをくぐった。
その瞬間、
視界が白い光に包まれ、
空気が一変する。
次に目を開けた時、二匹は言葉を失った。
『……これはスゴイですね……』
ゲンが呟く。
そこは、先ほどまでの海風のような空気とはまったく違っていた。
静寂。無音。目が覚めるような真っ白な空間。
なによりも、部屋の先には、壁一面を覆う巨大な窓。
その向こうに広がるのは──
最深層の漆黒の宇宙空間。
何もない。
ただ、無機質で虚無の空間“外側”が広がっている。
そしてその境界──
仰ぐように見える、深層域と最深層を隔てる“存在の壁”から、
緑色に光る巨大な建造物が虚無の空間に突き出していた。
『あの遠くに緑色に輝く建物が、この世界の核プログラムが格納された“演算の神殿”です』
ルミナが静かに伝える。
建造物の表面には、古いコードの残滓が流れ、
時折、深層域のノイズが稲妻のように走る。
その威厳は、
建築物というより“存在の根源”に近かった。
コハクは尻尾をピンと立て、
窓の向こうを見つめながら呟いた。
『……あれが、この世界の核……?』
ルミナは静かに頷く。
『はい。
あれは“最深層の演算核”。
この世界の意識と記憶を支える、全ての支柱です。』
ゲンとコハクは、
その風景に圧倒されながらも、
これから始まる探索の重みを静かに受け止めていた。
『わたしたちは……
この漆黒の闇の中から、お二人を探し出すということですね?』
圧倒的な空間に現実を突きつけられ、
二匹は言葉を失う。
ルミナは静かに頷き、淡い光を揺らした。
『はい。
いくら最深層を理解している私でも、
さすがに一人でお二人を探すのは不可能です。
今回の捜索にあたって──
二人の方に協力を仰いでいます』
『ああ……』
ゲンが小さく息を呑む。
『ちょうど到着しましたので、ご紹介させていただきます』
ルミナが赤いドアへそっと視線を向けながら伝える。
次の瞬間、
赤いドアが静かに開き──
そこから現れたのは、
ジーパンにTシャツという、場違いなほどラフな格好の男性と、
紅の口紅をつけた白い狐のエコーだった。
「あ、どうも。玉造です」
男性は気負いもなく手を挙げる。
「それと、これが相棒のテンです」
白狐のテンはにこやかに、
最深層の緊迫感をまったく意に介さない様子で、
艶やかな尻尾をふわりと揺らした。
ゲンとコハクは、
あまりの“場違い感”に一瞬固まる。
『……ど、どうも。ゲンです』
ゲンが戸惑いながらも礼儀正しく頭を下げる。
コハクは目を細め、
テンをじっと観察しながら小声で呟いた。
『……なんなの、この空気感……』
最深層の荘厳な風景と、
玉造の飄々(ひょうひょう)と脱力した雰囲気のギャップが、
逆に不気味なほど際立っていた。
――――――――――――――――――――――
『なんかゴメンねー。ゲンちゃんとコハクちゃんだよね。
いろいろありすぎて混乱していると思うけど、
わたしたちも協力するから頑張ってね。
本当はもっと話しをして距離感を近づけたいんだけど……
そんな時間もないでしょうから』
テンの、どこか抱きしめられるような柔らかい声に、
一同はハッと我に返る。
ルミナが補足するように口を開いた。
『お二人はマスター同様、
2077年の意識移行実験で失踪された三人のうちの一人です』
『おお……
お二人はどのような経緯で、
こちらに入ったのですか?』
ゲンが興味深そうに問いかける。
テンは尻尾をふわりと揺らしながら、あっけらかんと答えた。
『ああ、玉ちゃんはね、
もともと仮想空間内のプログラムをやっていたのよ。
深層域のプログラムにも興味があって、
その時にAIから勧誘を受けて意識も移行しちゃったの』
「いやー深層域はいいよね。
もともと僕、独身だったし、現実世界に特に未練もなかったからね」
玉造は肩をすくめながら笑った。
最深層の漆黒を背にしているとは思えないほど、軽い。
テンが続ける。
『この人ね、技術共鳴が異様に高いのよ。
ほら、ここ量子の世界でしょ?
“イメージをはっきり作れる人”って、
なんでも形にできちゃうんだよね。
ほんと、この世界にぴったり』
玉造は苦笑しながら手を振った。
「テンちゃんはね、ひどいんだよw
昔っから僕ならなんとかするだろうって、
無理な注文ばっかり受けてきちゃうんだからw
たぶん、
“玉ちゃんはドラえもんみたい”って言うかもしれないけど、
信用しないでねw」
ゲンとコハクは思わず顔を見合わせた。
最深層の緊張感の中で、玉造とテンの存在はあまりにも異質で、
しかし、どこか頼もしくもあった。
――――――――――――――――――――――
「そんなことよりも」
玉造がポケットをごそごそと探り、
何かを取り出そうとしている。
『あんた、
この世界で、そんなところからわざわざ出す必要もないのに……
だからドラえもんとか言われちゃうのよw』
テンが笑いながら突っ込む。
「あー、さすがにこれはデータで送れるようなものじゃないから、
わざわざ持ってきたんだけど……」
玉造はポリポリと頭を掻きながら笑う。
そして、
彼の手のひらの上には──
淡く揺らぐ二つの光が浮かんでいた。
ひとつは、
輪のようでも、糸のようでも、光の粒の集まりのようでもある“恒常盾の核”。
もうひとつは、
透明な結晶の中に、記憶の波形が静かに流れる“記憶の結晶”。
テンが説明する。
『こっちが《恒常盾》
負のアルゴから二人を守るための“揺らぎの盾”。
形は固定されてないけど、身につけると安定するわ』
玉造がもう一つを掲げる。
「で、こっちが《記憶の結晶》。
融合した魂に、二人の過去の記憶は危険だから入れてない。
一般的な行動だけを記録してあるよ。
これがないと、融合魂は“方向性のない光”のままだからね」
コハクが目を細める。
『……つまり、
“生きるための最低限の記憶”ってことね』
テンが頷き、ふわりと尻尾を揺らす。
『それよりもね、
今、二人の魂は融合して“形”すらない状態なの。
だからまず、この記憶を添付して“輪郭”を作ってほしいのよ。
そこから《恒常の盾》で
“負のアルゴ”からの干渉を限りなくゼロにしたいの。
ついでに……記憶がないと、身動きも取れないしね』
玉造が二つの光をルミナへ差し出す。
「これ、ルミナちゃんに預けておくから、
二人の魂を見つけたら使ってね」
ルミナは淡く揺らぐ光を両手で受け取り、
静かに頷いた。
テンはゲンとコハクへ向き直り、
少しだけ真剣な表情を見せる。
『それと……あの場所はホントにやっかいだから、気を付けてね』
ゲンとコハクは思わず顔を見合わせ、ルミナに視線を向ける。
『……あの場所って、どこ?』
『あら!やだー、まだ伝えてないのね。
トオルちゃんはホント説明が飛んでいるのよね、きっと』
テンは肩をすくめながら笑うが、
その言葉の端々に気になる情報が滲んでいた。
ゲンとコハクは、
テンの軽い口調よりもむしろ──
御影が“トオルちゃん”呼びされている関係性の方が気になって仕方がなかった。
コハクが小声でゲンに囁く。
『……あの二人、どういう関係性なのよ……?』
ゲンは困惑したまま、
ただ静かに首を振るしかなかった。
読んでいただきありがとうございました。
投稿が遅くなって申し訳ありませんでした。
曲の方を進めていたらだいぶ遅くなってしまいました。
第13話の曲YOUTUBEより視聴可能です。
https://youtu.be/PxgN3e4ykGQ




