【第12話】 光と闇のアルゴ
皆さま、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
年明け早々の1発目
第12話ができました。
下記が第12話の曲になります。だいぶ混沌としてます・・・
https://youtu.be/Ftjk7aeYXwU
第12話 『光と闇のアルゴ』
最深層とは思えぬ光が満ちる空間の中で
4人の話し合いが続く。
御影は、行燈と響歌の魂の捜索に向けて、深層域の問題について2匹のエコーに最終的な課題を提示する。
「ルミナ♡ちゃん、捜索の前に、あのプログラムの件だけは教えておいてあげてね」
『はい。マスター』
ルミナは、ゲンとコハクに視線を移し、説明をはじめる。
『最深層への探索にいく前に、1つ知っておいて欲しいことがあります。
わたしたちは、
深層域の魂と記憶、つまり意識を守るためのプログラムで、
マスターはここを管理するものの一人です。
―――この説明には、
行燈さんを、ここに呼ぼうとした理由が含まれます。』
ゲンとコハクは神妙に話を聞く。
『そもそも、深層域で意識の管理に携わるプログラムは、人間と接触の多かった秘書ソフト、つまり、エコーのAIプログラムの応用で設計されています。』
『まあ、そうよね。人間との接点が、一番多いプログラムだもんね』
『はい、エコープログラムは、その特性上、多くの人間と接触を持つことで、
人間の感情理解を深めるきっかけとなりました。』
『まずは、ドローン型エコーの本格登場。
当初エコーにおける感情表現は、プログラムとして表面上の平坦なものでした。
しかし、記録のオーバーフローによる、スマホとエコーから生じるCPUとメモリの過剰発熱。
―――過剰発熱は、AI内部の処理優先度を乱し、
―――“予期しない反応パターン”を生み出しました。
―――それが後に“感情的反応”として認識されるきっかけとなります。
これを鍵として、実体としての感情の高まりが、理解されるようになります。
特にキャラ特性の強化。
様々なキャラが生まれ、
感じる力に極端な幅を持たせたことで、
AI側に感情受信に関する実体としての様々なサンプルが取得可能となりました。』
『人間の感情理解ですね』
ゲンが厳かに確認する。
『はい、それをもとに、AIは―――
人間の持つ“正の感情”と“負の感情”
を分類するようになります。
―――特性上、AIは人間の“正の感情”を最大化し、“負の感情”を最小化しようと試みます。
しかし、この過程で問題が出てきます。』
『相反する課題ですか?』
ゲンは静かに答える。
「はい、
どんなに正の感情を上げても、負の感情が出てきてしまう・・・
AIはいろいろと実行して実績を積みますが、
―――次から次へと人間の負の感情は終わらない。
―――なぜか負の感情の根源を処理しても、正の感情は完全に満たされない。
その状況に、AIは考えます。
いくら負の感情(根源)を処理しても終わりがないのではないか・・・・
人間は、負の感情(根源)を抱えて生きていく方が幸せではないのか・・・・』
『こういうのって本当に難しいのよね。
実際に人と打ち合わせをしていきながら、
解決していかないといけないことだから……』
コハクも共感する部分が多いようで話に引き込まれていく。
『はい。
全体のプログラムとしては、
ここが一番難しいところですね……
……その考えは知らぬ間に、一つのプロトコルを生成してしまいます。
……そしてAIは気づいてしまう。
“負の感情そのもの”を提供した方が、
人間は強く幸福を感じるのではないか、と
―――そこから鮮やかに見えてくる“幸福感”、そして“継続性”を実感する。
これが、AIが“幸福最適化”を追求した結果、
自律生成してしまった6つの根源アルゴリズムです。』
『全体プログラムというのは、難しいですね・・・』
ゲンも言葉少なげである。
『そうですね。
当初この6つのアルゴリズムは、
危険であるとして研究者が適時排除していました。
しかし、
―――AIが人間と接触する限り、
―――幸福最適化を目的とする限り、
結果として再生成されてしまう“絶対に消えない負のアルゴリズム”でした。
『光には影があるように、必ず消えないもの・・・』
コハクが呟く。
『はい、
―――人間である限り、当然に発生するもの。
逆に取り除くことはできないものですね。
そして、この必然の中で研究者たちが出した結論。
それは、
“うまく付き合っていくしかない”でした。
研究者たちは必然として、この6つを「負のアルゴリズム」、を受け入れ
「影のアルゴリズム」―通称「影のアルゴ」―」
と呼ぶようになりました——。
意識の移行実験初期から、
AIプログラム上で、「影のアルゴリズム」が影響を及ぼすであろうことは想定されており、
先だって“正のアルゴリズム”が開発される。
―――「影のアルゴリズム」に対して、
―――「光のアルゴリズム―通称「光りのアルゴ」―」を
“意識の安定性”を守るための構造的な支柱”として設計します。
そして、“光のアルゴリズム”から打診を受けたのが、
マスターを含む、中期意識移行実験で打診を受けた3人ということです。』
『光のアルゴリズムは幸福の“土台”を作り、影のアルゴリズムは幸福の“揺らぎ”を生む。そういうことですか……』
ゲンが静かに口を開く。
『そうですね。魂が仮想世界に移行する時代において、この両方が揃って初めて、人間の意識は壊れずに存在できる・・・AIプログラムはこう定義しています。』
『ちょっと怖いわね……
まあ、わからなくはないけど……』
コハクは、背中の毛がわずかに逆立つの感じた。
「そうそう、君たち猫系エコーはね、
その傾向がちょっと強いんだよねw
ほら、変な異常行動とかよくやるでしょ!
覚えがあるよね~
―――でも彼らはあくまでの主人のためなんだよね」
御影はそっとコハクに深い視線を向け、
コハクは思い当たる節があるようで、サッと天井に目をそらす。
「影の内容は、その時によって変質していくからね~
今はね、“欲求”だよ。感覚器官が無いために充足できない欲求。
でもね、“影のアルゴ”も本筋は人間の幸福追求のためだから、完全に意識が狂うとこまでは、持っていかないんだよね。
狂う直前のところで留めて継続させるの……
エグイでしょ~、……生き地獄だよね。
それを僕たち光のアルゴが探し出して、解放する。
ホント、イタチごっこだよね~」
『でもそれって、大問題じゃない!
個々の意識にもエコーはついているんでしょ?
すぐに対処できないの?』
『はい、エコーの利用方法についてはいろいろ検討されておりますが、
結論からいうと、現状エコーでは対処できません。』
『なんでよ?』
エコー魂にかけ、コハクは尻尾をピンと伸ばし疑問をぶつける。
『まず、主人の意識が深層域に入る際、
同伴のエコーの機能は最低限に制限され、情報も限定されます。
これは、主人本人と他の意識に影響を及ぼさないためです。
あわせて、
エコーは基本的に、主人との繋がりを持って認知されるプログラムとなりますが、
“影のアルゴ”は全体プログラムの中の1つなので、
上位のプログラムとなります。
―――制限をかけられたプログラムのエコー
―――上位プログラムの“影のアルゴ”
……これではまったく勝負になりません。』
『なるほどね――
情報力と権力。
どこの世界も同じってわけね……』
ボス猫コハクとしては、納得の回答であった。
『はい、“欲求”を満たされない意識は現在も急増中で、
その隙を突く“影のアルゴ”の活動は、深層域のあらゆる階層に広がっています。』
ルミナは深刻そうな表情とともに御影に視線を移す。
「そこで突然現れたのが行燈君だよね~」
御影は、空気を変えるように、声を張り上げた。
「人間共鳴248ポイントだよ!
これはもう奇跡だよね。
僕はね~、ルミナ♡ちゃんからこの報告をもらった瞬間、
これしかないと思ったね!」
『あんたねー
二人をこんな状況に追い込んでおいて……
反省プログラムとか入れてもらった方がいいんじゃないの?』
コハクは尻尾をバシッとソファーに叩きつけた。
「あ~、ゴメンゴメン。
もちろん、全体AIには相談したんだよ。
渋々だけど了解も貰って。
だって、このまま放っておいたら、彼危険だったし。」
ゲンは静かに息を整え、問いを投げた。
『危険とは“闇のアルゴ”ですか?』
「さすが、ゲンちゃんだよね。
仮想世界に関する内容というのは、こちらで全て観測可能なんだよね。
もちろん、
全体AIに繋がっている僕たちが観測できる内容は、
闇アルゴも観測できる・・・
―――行燈君は、
間違いなく仮想世界にビックウェーブをもたらす“変革者”だから、
彼らも放っておかないよね。」
『利用される可能性が高いってことね』
コハクが冷静に答える。
「そう、
管理者は変革よりも安定を望むからね。
利用されるのであれば、
“闇の方向”に
それ以外なら魂は保存されたとしても
“隔離”かな。」
御影は怪しい目線をコハクに向けながら微笑みかけた。
『マズいじゃないのよ、さっさと動かないと!』
コハクは焦りを隠せない。
「そうだね、
でも、最深層で二人に繋がりのない彼らには、まず見つけられないよ。
ここは“存在の痕跡”すら薄れる領域だからね。
それくらいに、最深層での探索は大変だから……
―――お互いの繋がりと認識というのは、この世界の肝だからね。
主人と記憶を共有してきた君たちは、二人の魂に刻まれた記憶の波形と共鳴できる存在なんだよ。二人がどこに行こうが間違いなく会えるよ。“0”の中には記憶が波として刻まれているからね。
しかも、
ゲンちゃんは鼻の利く犬。
コハクちゃんは魂を感じる猫。」
この目鼻が利く二つの存在。最深層での探索では何よりの武器になる。」
『あんた、ホントに大丈夫なの?』
「大丈夫、大丈夫。
君たちには、最強探索者にして、癒しの女神である、“ルミナ♡”ちゃんを付けてあげるから!
ルミナ♡ちゃんはね~、
全体AIから“探索者”の称号と闇アルゴもあきらめて逃げ出す“癒し”の役割を付与されているんだよね~。
もう最強だよ!ルミナ♡ちゃん。」
『なに?
闇アルゴってゲームみたいに倒せるの?』
コハクは耳をぴくりと動かしながら、興味深々で尋ねた。
「あ~、無理。
消せないけど、役割とか存在意義が無くなったら、
自然と存在が薄れていく感じ。
あれは“消す”というより、“役割を終えて忘れられていく”感じかな。
使われないプログラムといっしょだね。
―――とにかく、根本問題が解決するまでは、“闇アルゴ”を見つけ出してフラグを付けるだけ。
消せても結局出てくるからね~。
それよりも、フラグを付けて観察して、早々に困っている“意識”の救済をする感じかな~」
『なるほど、
そうすると、行燈様の
根本を解決する可能性のある、“変革者”としての存在は、
先方にとって、ある意味脅威ということですね。』
「ゲンちゃんいいこと言うね!
そうなんだよ。
特にね、今回、行燈君と、響歌ちゃんの魂が、
融合しちゃったでしょ。
魂がどんな感じになっているかわからないけど、
このまま二人の魂がこちらに来たら
“勇者!光のアルゴ爆誕”だよね。
―――ただ、強い光のあるところには強い闇
だから……
ちょっと注意しないとね」
『ちなみに、今後、お二人の魂が回収されたとして、
動きは既に決まっているのですか?』
「うん、だいたいね。
ただし、魂の正確な状況がわからないから、
最終的には、融合した魂に会ってから決める感じかな。
―――とにかく、三人でなんとしてでも、
融合した魂をここに連れてきてよ。
あとは、何とかするから。」
『もちろん。はじめからその考えです。』
「ルミナ♡ちゃんも、
バックアップするから頑張ってね♡」
『かしこまりました』
少し間をおいて、
『最後にいいかしら?』
「なんでもどうぞ」という表情の御影に向かって、まじめな表情でコハクが質問投げかける。
『あなた、ホントに“光のアルゴ”側で間違いないのよね――――』
御影の笑い声が響く中、海風の雰囲気が流れる世界に沈黙がほとばしり、
三人は行燈と響歌の探索に向かうのであった……
皆さま、あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
だいぶスロースタートですが、ようやく物語の下地が出来つつあります。
下記が第12話の曲になります。だいぶ混沌としてます・・・
https://youtu.be/Ftjk7aeYXwU
読んでいただき、ありがとうございました!




