第10話:新たな武器
翌日の昼下がり。
ゼロスとアリシアは、再び冒険者ギルドのカウンターに立っていた。どこか気怠い空気が流れる中、ゼロスは慣れた手つきで革袋を逆さにし、ゴトリ、と重い音を立てて複数の魔核をトレイの上に出していく。その中に、一際禍々しい紫黒の輝きを放つ、握り拳ほどもある巨大な魔核があった。
カウンターを担当していたギルド職員は、オーガのものと思われる魔核を鑑定する手を止め、その巨大な一塊に目を奪われて息をのむ。彼の表情から、ただ事ではないという緊張が伝わってきた。
「…これはまさか…?」
その問いに、ゼロスはニッと口角を上げ、芝居がかった声で高らかに宣言した。
「イエッス!!ダンジョンの主だったオーガジェネラルの魔核でございますっ!」
その言葉が引き金だった。
昼下がりの気怠い空気が一瞬にして張り詰め、そして爆ぜる。酒場の隅でだべっていた冒険者たちがガタリと椅子を鳴らし、一斉にカウンターへと視線を向けた。一瞬の静寂の後、ギルド内は興奮のるつぼと化した。
「まじか…ジェネラルの魔核だって…」
「ゼロスって、前のパーティを抜けて、新人の姉ちゃんと組んだばかりじゃなかったか?」
「ってことは、まさかゼロスだけで討伐したのか…?」
「バカヤロウ、いくらEランクダンジョンだからって相手は主だぞ。リスクの跳ね上がり方が伊達じゃねぇ…普通はその場で撤退して、ギルドに報告し、2個上のランクのパーティに処理依頼するのが通例だろ…」
「流石、元Aランクパーティの荷物持ち…膂力も伊達じゃねぇってか…」
熱気と視線が渦巻くその中心で、ゼロスは誇らしげに胸を張り、アリシアを指し示した。
「はいはい、皆様!ご静粛に!!流石に俺一人じゃ無理です!!ここにおられる我がパーティの華。アリシアさんの治療スキルがあっての物種でございます!」
賞賛の視線は、今度はアリシアへと集中する。
「…マジか…あの姉ちゃん、初級ヒーラーだって聞いてたぞ…」
「…とんでもない逸材が埋もれてたとはな…」
一身に集まる好奇と賞賛の視線に、アリシアは全身の血が沸騰するのを感じ、耳まで真っ赤にしながら必死に両手を振った。
「ち、違います!!本当に私はゼロスさんの傷を塞いだだけで、ほとんどゼロスさんが素手で倒したんです!!」
彼女としては謙遜と事実を述べたつもりだったが、その一言は、燃え盛る炎に大量の油を注ぐ結果となった。ギルド内の空気が、先ほどとは違う質の驚愕で凍りつく。
「…は…?素手?」
「…今、素手って言ったよな…」
「…主級を、素手…素手!?」
収拾がつかなくなった喧騒を見かねて、ギルド職員がバンッ!と力強くカウンターを叩いた。
「お二人とも、ここではゆっくり話せませんので、どうぞ奥へ!」
ゼロスは困ったように頭を掻きながら、「俺、なんか変な事言っちゃいましたかね…」と呟く。
「黙ってついてきてください」と職員に冷たくあしらわれ、ゼロスは「はい…」と素直に頷いた。
アリシアは、ざわめきの中を歩きながら、胸の高鳴りを抑えきれずにいた。
(ギ、ギルドの奥なんか初めて来た…)
古びた羊皮紙とインクの匂いが濃密に漂う奥の間に通されると、そこでは歴戦の傷跡が顔に刻まれた屈強な壮年の男性が、山積みの書類を相手にペンを走らせていた。
「ギルド長、Eランクダンジョンの主を素手で倒した、という冒険者を連れてきました」
「おぅ。お前らまぁ、そこへ座れ」
ギルド長は書類から顔も上げずに言い放つ。ソファーへ案内され、アリシアは恐縮しながら浅く腰を下ろした。やがてギルド長はペンを置くと、剃刀のように鋭い視線で二人を射抜いた。
「ゼロス…お前、前のパーティから抜けたという話は聞いたが、まさか新人の姉ちゃんをひっかけるとはな…しかも、最奥まで連れ込んで。死んだらどうするつもりだった」
その厳しい口調に、アリシアはびくりと肩を震わせたが、すぐさま反論した。
「いえ!ゼロスさんは私の成長を願って!!!」
「で?どうなんだ、ゼロス」
ギルド長はアリシアの言葉を遮り、ゼロスに直接問う。ゼロスは観念したように息をついた。
「面目ない…Eランクくらいなら俺一人でもなんとかなると踏んでたが、近くに主が出現するとは思わなかった…」
「…へっ…だろうな…しかし、素手で倒したってのは本当か?」
「持って行った鋼鉄棍棒がジェネラルとの武器との打ち合いで、互いに砕けちゃって…」
「…で、素手でか。無茶な戦い方だな」
その言葉に、アリシアは先ほどの光景を思い出し、うっとりとした表情で両手を握りしめた。
「ゼロスさん、凄いカッコよかったですっ!!」
目を輝かせるアリシアに、ギルド長は呆れたように大きなため息をつく。
「…まぁ、姉ちゃんにアピール出来てよかったな。腰の解体ナイフは使わなかったのか?」
「あの硬化された肌相手じゃぁ、俺がナイフ使ったとこで、折れて終わりだよぉぉ」
「お前は魔素の扱い方が極限に下手くそだからな…その姉ちゃん連れまわすっていうなら、それに相応しい武器を選ぶこった」
「以後、気を付けます」と頭を下げるゼロスの横で、アリシアは「連れまわす…」と小さく呟き、なぜか頬を染めていた。その時、別の職員が静かに入室し、手に持った報告書を読み上げた。
「ギルド長。魔核の裁定が終わりました。オーガジェネラルの魔核、およびその他オーガの魔核20個、ダイアウルフの魔核2個の買い取りで、白金貨1枚と金貨50枚です」
「白金貨…」アリシアの目が大きく見開かれる。それは彼女が目標としていた額だった。
ゼロスはそれを聞き、どこか寂しげな表情で、「…短い旅だった…」と呟いた。
「なんだ?喜ばねえのか?」とギルド長が訝しげに尋ねる。
「アリシアさんが白金貨溜まるまでが俺とのパーティ結成の条件だから、これで」
その言葉が終わるか終わらないかのうちに、アリシアが叫んだ。
「嫌ですっ!」
凛とした声が部屋に響き渡る。ゼロスは虚を突かれたように彼女を見た。
「…はい?」
「これで、お別れなんて認めません。白金貨はただの目安です。私はゼロスさんとこれからも一緒にいますっ」
力強く宣言するアリシアに、ゼロスは呆然と「…マジですか」と返すことしかできなかった。
そのやり取りを見ていたギルド長は、フッと口元を緩めた。
「なら、ちょうどいいな。お前らのパーティ、『始まりの雫』をDランク昇格と認定する」
ゼロスは短くガッツポーズを作ると、「やったぜ」と呟いた。
「ぇ、もう?」と驚くアリシアに、報告を終えた職員が淡々と告げる。
「パーティ結成1週間以内でランクアップしたのは貴方たちが初めてです」
「別に褒めてるわけじゃねぇ、ただの無茶をやらかしただけだ。次もこんな幸運が続くと思わねぇこったな」と釘を刺すギルド長に、ゼロスは「気をつけますっ!!」と元気よく返事をした。
「Dランクに…」
意味深に呟くアリシアの横顔を見て、ゼロスは静かに拳を握った。
(そういえば、アリシアさん、Dランクパーティから追い出されたって言ってたな…早くもっとランクを上げて、誰も文句を言えないようにしてやらないと)
彼女の過去を思い、ゼロスは静かに新たな決意を固めていた。
ギルド職員に裏口から送り出された二人は、祝勝会を開くことにした。夕方の街には、仕事を終えた人々の活気が満ちており、家々の窓からは温かい光と美味しそうな料理の香りが漂っている。
「なんか食べたいものある?」
夕暮れの街角で、ゼロスがアリシアに向かって気さくに尋ねた。オレンジ色の夕日が二人の横顔を優しく照らし、一日の冒険を終えた安堵感が心地よい空気に漂っている。
アリシアは、ふふっと楽しそうに笑い、「ゼロスさんのお勧めはありますか?」と問い返した。
その悪戯っぽい、それでいて信頼に満ちた笑顔に、ゼロスは一瞬言葉に詰まり、少し考えるような仕草を見せる。
「俺のお勧めか...なら、あそこにするか」
「あるんですねっ!どこですか?」
目をキラキラと輝かせて言うアリシア。まるで子供のように無邪気な表情で、期待に満ちた瞳がゼロスをまっすぐに見つめている。その純粋な好奇心に、ゼロスも自然と頬が緩んだ。
「それはついてからのお楽しみっしょ~...さぁ行こうぜ」
「ふふっ…楽しみですね」
「姫様のお口に合えばよろしいですがね」
冗談めかした口調で言いながら、ゼロスは軽やかな足取りで歩き出す。アリシアも彼の隣に並び、石畳に響く二人の足音が夕暮れの街に溶けていく。
ギルドを出て、祝勝会の場所へ向かう途中、先日の装備屋の前を通りかかった。店先から聞こえる規則正しい槌の音と、石炭の燃える匂いが二人の足を止める。アリシアが何かを思い出したように、ぱんと手を合わせた。
アリシア「そうだ!ゼロスさん、武器を新調しに行きませんか?まだ時間もございますし」
ゼロス「ん…そうだね、ちょっと見にいこうか」
ゼロスは頷きながら、内心で思考を巡らせる。
(素手でもある程度はなんとかなるが、今後の為やボスモンスターとやり合う時は必要になるしな…それにアリシアさんの服だって、まだ一般服のままだ…)
店の扉を開けると、カラン、と軽やかなベルの音と共に、鉄と油の匂いがむわりと二人を迎えた。屈強な体つきの見覚えのある店主が、汗を拭いながら顔を上げる。
店主「おぅ、姉ちゃん。今日はどうした?」
アリシア「ゼロスさんの武器について、ちょっとご相談がありまして」
店主「ゼロスの?なんでぇ、昨日棍棒を渡したろうが?」
アリシアの後ろから、ゼロスがひょっこりと顔を出す。
ゼロス「オーガジェネラルと打ち合ったら砕けた」
店主の動きが、ピタリと止まった。
店主「くっ、砕けた!?…まさかボスモンスターの出現条件を満たすまで、下層で戦うバカがいるかよ…」
手に持っていたハンマーを作業台に置き、店主は心底呆れたように肩を落とす。だが、その目には呆れ以上の好奇心が浮かんでいた。
店主「で、倒したのか?」
ゼロスは懐から白金貨を取り出すと、親指で弾き、空中で回転するそれをドヤ顔で見せつけた。
ゼロス「あたぼうよ」
店主「フハ、、、フハハ!まさか元荷物持ちが棍棒一本で倒すとはなっ!」
その豪快な笑い声に、アリシアは慌てて首を横に振った。
アリシア「…いえ、そうではなくて、棍棒はボスモンスターの武器と一緒に砕けました。なので、討伐は、素手です…」
店主は大きく見開いた目を、さらに大きく見開いた。時間が止まったかのような沈黙が流れる。
店主「ステゴロでか…こりゃぁ…もはやただのサポーターができる所業じゃねぇな。で、新しい武器が必要になった…というわけか…」
ゼロス「まぁ、そういうことだね。なんか安くて良いのない?予算は銀貨30枚くらいで…あと、アリシアさんの鎧が欲しい。こっちは…手に入れた白金貨1枚でっ!!」
アリシア「ゼ、ゼロスさん!?私にそんなお金をかけてどうするんですか!?」
突然の出費宣言に、アリシアが素っ頓狂な声を上げる。
ゼロス「ほ、ほら、命あっての物種~って言うじゃない?」
アリシア「言いますが、限度があります!もっとご自身の武器にお金をかけてください」
二人のやり取りを見て、店主の口元がニヤリと歪む。商人の顔になっていた。
店主「ゼロスよ、お前は最高のお得意様だぜ」
ゼロス「だろぉ~?いやぁ、照れちゃうなぁ」
アリシア「店主さん!おだてないで下さい!」
店主「そんな姉さんにぴったりの防具があるぜ!!」
アリシア「話を!」
ゼロス「お?なになに?」
店主はカウンターの奥から、月光のように輝く軽鎧をこれ見よがしに取り出した。
店主「こちらのミスリル合金の軽鎧だ!今ならお値段なんと金貨70枚でどうよ!」
ゼロス「なんてお買い得!!」
アリシア「話を聞けぇ!」
アリシアの怒声が店内に響き渡り、さすがの二人もぴたりと動きを止めた。
店主「…」
ゼロス「あ、すいません…」
アリシアはこめかみを押さえ、深くため息をついた。
アリシア「はぁ…わかってくださればいいんです…」
ゼロス「うん、わかった。店主」
店主「あいよ?」
ゼロス「それもら…」
アリシア「ああぁぁぁぁぁ!!!」
アリシアは頭を抱えて呻いた。この男は全く分かっていない。この調子では絶対にゼロスが高額な防具を買ってしまうと確信していた。
ゼロス「ど、どうしたんだ、アリシアさん…まさか体調がっ!?」
心配そうに駆け寄るゼロスに、アリシアは咄嗟に嘘をつくことを決意した。
アリシア(ダメだ、この調子だとたぶんゼロスさんは、なぁなぁにして絶対買っちゃう…なんか適当な言い訳をして買わせないようにしないと…)
「お、思い出しました…私、ミスリル合金アレルギーなんですっ!」
ゼロス「ミス…ルギー?」
聞きなれない言葉に、ゼロスは困惑して首を傾げる。
アリシア「そうです。私はそのせいで、そういった高価な鉄製の防具を身に付けられない身体なんですっ!」
ゼロス「…なるほど」
店主「…難儀な身体だな」
店主は胡散臭そうな目を向けたが、アリシアは気づかないふりをした。
アリシア(…よしっ!)
ゼロス「えー…じゃぁ、仕方ないから出来るだけ頑丈な革の鎧を…」
店主「ふむ…これならどうだ?」
店主がカウンターの奥から取り出したのは、深紅の艶を持つしなやかな革鎧だった。
ゼロス「俺が見てもなぁ…アリシアさんはどう思う?」
アリシアは値札を探しながら、頭の中で計算する。
アリシア(よし、手ごろな革製品…前回のズボンが銀貨50枚。胴体は…えーっと3倍くらいするって言ってたから、多く見積もって金貨2枚っ…!)
「すごい良いと思いますっ!私それがいいですっ!」
アリシアが食い気味に言うと、店主はにっこり笑って「まいど」と一言だけ言った。
ゼロス「んじゃぁ、代金の金貨70枚ね」
アリシア「…銀貨70枚ですか?」
店主「金貨だ」
アリシア「えぇ!?」
アリシアの顔から血の気が引いた。
店主「…当たり前だ。レッドドラゴンのドラゴンレザーだぞ。その硬さはミスリル合金には劣るが、鋼鉄よりも遥かに硬く、柔軟でもある。さらにその耐火性…」
アリシア「返却を…」
店主「受け付けんっ!」
ゼロス「まぁまぁ、アリシアさん、買っちゃったものは仕方ないんだから大人しく使おうぜ?それが…淑女の嗜みってもんだろ?」
アリシア(全然違う…)
「…はぁ、わかりました…たぶん無理に返却しても、別のものと入れ替えてきますよね…」
ゼロス「よくわかるなっ!!」
店主「今のがダメだったら、このグリフォンの毛を編んだ布鎧もあるぞ」
アリシア「うああぁぁぁ…………ゼロスさん」
絶望に打ちひしがれたような声で、アリシアはゼロスの名前を呼んだ。
ゼロス「…なんだいアリシアさん?」
アリシア「…ゼロスさんがそういった鎧を着られるべきでは?いつまでも、ブラックレザーの胸当てだけだと如何なものかと?」
真っ当な事を言うアリシア。確かにゼロスの装備は、彼の実力に比べてあまりにも貧弱に見えた。
ゼロス「あ…ぁー…俺はね、着れないんだよ」
アリシア「・・・?」
首を傾げるアリシアに、店主が苦笑いを浮かべながら説明した。
店主「そいつ、魔素の扱いが下手くそでな。武器・道具はもちろん、防具にも魔素を通せねぇんだよ…ま、そのへんは才能だな…」
アリシア「そ、それでよく今まで無事でしたね…」
その事実に驚愕するアリシア。魔素を通せない装備は、ただの重い物体でしかない。そんな状態で高ランクダンジョンを攻略していたなんて、まさに奇跡としか言いようがなかった。
ゼロス「まぁ、俺は軽さと動きやすさ一択だから、そうそう被弾しないのもあるっ」
ドヤ顔で語るゼロス。その自信に満ちた表情は、確かに彼の戦闘スタイルを物語っていた。
店主「…まぁ、姉ちゃんの防具も決まったことだし、次はおめーさんの武器だが…奥に立てかけてるやつを見な」
店主が指差した先、店の奥の壁には、巨大な剣のような、斧のようなものが立てかけてあった。それはまるで、空間そのものを歪めているかのような異様な存在感を放っている。持ち手の柄は戦闘用ロッドのように長く、そこに曲刀のような巨大な刃が持ち手の部分まで伸びていた。
ゼロス「…あれって、置物じゃなかったっけ?」
店主「売り手が見つからなくて、置物になった、というのが正しいわな」
アリシア「売り手が…つかなかった?」
店主「ああ。アレには魔素が通らねぇ」
魔素を通す、それは本来の武具の重さを攻撃力や防御力に変換する技術。それができないこの武器は、高ランクの冒険者にとっては、ただの重い鉄の塊でしかなかった。
ゼロス「つまり、失敗作?」
店主「まぁ、失敗作っちゃ失敗作だが…あれにはAランクダンジョンのボスモンスターの巨大なドラゴンの牙と最高硬度の黒鉄を錬金術で融合した代物で作ってある。だから、魔素が通らない代わりに最高硬度の武器ってわけだ。代わりに重さが半端じゃねぇが…ゼロス、お前なら扱えるんじゃねぇか?」
ゼロス「…ふむ…そういうことなら…」
ゼロスは奥に置いてある戦斧に歩み寄り、その柄を握った。ズシリ、と床を擦る重い音と共に、彼はそれを軽々と持ち上げた。
ゼロス「…まぁ、良い感じの重さ?棍棒みたいに羽のような軽さではないけど」
店主「あの鋼鉄棍棒を羽とか言えるのお前だけだぜ…」
アリシア「…ゼロスさん、それ持ち上げられるんですか…?」
人と同じくらいの長さを持つ質量の塊を軽々と持ち上げるゼロスを見て、アリシアは驚きを隠せなかった。
ゼロス「別にこれくらいの重さ普通じゃないか?聖銀の大楯と同じくらいの重さ?」
店主「…ハハ…ゼロス、お前さん最高だよ、どうかそいつを買い取ってやってはくれねぇか?お代は、そうだな。お前の希望通り銀貨30枚でいい」
ゼロス「さすが店主!サービスいいぜ」
ゼロスが金額を払おうとした、その時だった。
アリシア「待ってください…」
アリシアが、その武器の材質に気づいた。
アリシア「…安すぎませんか?ドラゴンの牙と黒鉄を使って、その重量の武器なら…相場は…知りませんが」
ゼロス「確かに。ドラゴンの牙も黒鉄もなかなか市場に出回らないもんな、まさか…」
店主「そんなんじゃねぇよ…これは俺が趣味で作った代物なんだよ…世界最強の武器を作ってやろうって考えてな…まぁ、出来たのはとんでもない失敗作だったってわけだ。それ以来、ああいう思い付きで武器を作らねぇって戒めで飾ってあったんだよ」
ゼロス「…なるほどな、それでその失敗作を扱えそうな奴が俺だったから、売りたいと」
店主「まぁ、そういうこった。ゼロスなら、その武器で稼いで、また俺のところで還元してくれるだろうしな」
アリシア「…店主さん………割と計算高いですよね」
店主「そりゃぁ、俺は鍛冶屋でもあるが、商売人でもあるからなっ!」
三人が納得したところで、ゼロスは戦斧を買い取り、装備屋をあとにするのだった。その背中には、彼の規格外の力を受け止めるに足る、新たな相棒が布に巻かれて担がれていた。
(第10話/完)




