第2話:我慢の日々、開幕 ~胃薬が手放せない新婚生活~
胃薬は俺の親友になった。
いつまでこの戦いが続くのか……。
【健太視点】
新婚初日の悪夢から、数日が経過した。
俺の顔色は、このところずっと青ざめている。
胃薬の消費量は、日を追うごとに増加していた。
胃がキリキリと痛み、
胃粘膜は荒れている感覚が常にあった。
花子の料理は、奇妙な進化を遂げ続けている。
朝食に出てきた緑色の物体。
見た目はほうれん草のソテーに似ていたが、
一口食べると、まるで苦いゴムを噛んでいるようだった。
昼食は、署内の食堂で済ませることが多くなった。
食堂のカレーライスは、
俺の荒れた胃には天国の味だった。
同僚の刑事・田中が、俺の顔色を心配そうに覗き込む。
「おい健太、最近顔色悪いぞ。
また胃でもやられたか?」
俺は苦笑いして、胃の不調をごまかした。
職場では、食の話題を共有できる同僚が数人いる。
彼らとの会話が、俺の唯一の「逃げ場」だった。
「嫁さんのメシか?」
田中がニヤニヤしながら聞いてくる。
「胃薬持ち歩けよw」
そんな軽口にも、俺はもう慣れた。
家に戻れば、また新たな「進化」を遂げた料理が待っている。
ある日の夕食は、
「ふわふわハンバーグ」と花子は言っていた。
しかし、皿の上には、
石のように硬く、焦げ付いた塊が鎮座していた。
ナイフで切ろうとしても、全く刃が立たない。
「花子……これ、ゴムハンバーグか?」
俺は震える声で尋ねた。
花子は目を丸くしている。
「え? 美味しいでしょ?
今日は、特別に頑張ったんだよ?」
その純粋な笑顔が、
俺の胃をさらに痛めつけた。
俺は食卓での嘘と、胃痛に耐える日々だ。
心の中では、毎日クックドゥを懇願している。
ふりかけへの依存は、ますます深まるばかりだ。
夜中、胃の痛みに耐えかねて、
こっそり冷蔵庫からふりかけの袋を取り出す。
白米にたっぷりとふりかけをかけ、
静かに口に運ぶ。
この、素朴な塩気が、
俺の胃を唯一癒してくれる。
(健太の脳内実況)
「司令部(胃)、現在、激しい動揺を観測。
司令官(俺)、これ以上の戦闘は困難と判断。
援軍要請、ふりかけ小隊、直ちに出動せよ!」
俺は、2chで味覚改善のための「亜鉛」の情報を得た。
こっそり亜鉛サプリを飲み始めた。
少しでも、この状況が改善することを願って。
胃の痛みは限界に近づいていた。
心の中で、俺は叫ぶ。
「司令部(俺の胃)、応答しろ!」
【花子視点】
新婚初日の悪夢から、数日が経過した。
健太さんの顔色は、日に日に青ざめていく。
食卓に並べた私の料理を、
健太さんは無理に笑顔で食べてくれる。
その姿を見るたび、私の胸は締め付けられる。
どうすれば、健太さんを救えるのだろう。
途方に暮れる毎日だった。
スーパーの料理本コーナー。
私は、料理本を眺め続けた。
彩り豊かで美味しそうな写真の数々。
YouTube料理動画も、毎日何本も見た。
だが、どのレシピを見ても、
自分には不可能だと絶望する。
「こんな私に……できるわけ、ない……」
深夜。
焦げ付かせた鍋を磨きながら、
私は静かに泣いた。
私の料理は、健太さんの胃を壊している。
その罪悪感が、私を深く苛む。
義母からのLINEが届いた。
『健太、最近元気ないみたいだけど、ちゃんとご飯食べてる?』
心配してくれる義母の言葉が、
私の心に重くのしかかる。
私が交際中に義母の料理を偽っていたこと。
その偽りが、今、健太さんを苦しめている。
罪悪感が募るばかりだった。
私は、健太さんを救うために。
自分にできることを、何か始めなければ。
そう、決意し始めていた。
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### 【2chスレッド:嫁のメシがまずい】
**1 名前:名無しの健太 2025/06/10(火) 22:00:00.00 ID\:xyz789**
あれから数日。
胃薬は友達になった。
嫁の料理は今日も奇妙な進化を遂げている。
昼は食堂で済ませて、何とか生き延びてる。
もう、クックドゥでもいいから胃に優しい飯を食わせてくれ。
**2 名前:名無しの既婚者 2025/06/10(火) 22:03:45.12 ID\:jkl456**
健太、お前、生きてるか?
胃薬が友達ってwww
そろそろ病院行けよ。
**3 名前:名無しのメシウマ 2025/06/10(火) 22:06:20.56 ID\:abc123**
クックドゥは神。
それすら許されないのか。
嫁、頑張ってるのか?
それとも…
**4 名前:名無しの人生相談 2025/06/10(火) 22:09:10.87 ID\:def456**
愛があれば、味覚も進化する。
希望を捨てちゃダメだぞ、健太。
頑張れ。
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必要に応じてテキストファイル(.txt)にもできます。希望があればお知らせください。
次回予告: 健太の胃の痛みが限界に近づく。
花子は健太を救うため、自らの手で何かを始める決意を固め始める。
次話:第3話 ふりかけへの命綱 ~胃の悲鳴と秘めたる決意~