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第13話:異国の地から届いた味、そして試行錯誤のレシピノート ~陽子の帰国と希望の始まり~

花子の意気込み: 健太さんを救うため。

この希望を、絶対に無駄にしない。


【花子視点】


健太さんの入院と吐血の報に、私は衝撃を受けた。


警察署からの連絡を受け、

病院に駆けつけた時、

私の心臓は凍り付いた。


病室のベッドに横たわる健太さん。


その顔は、ひどく青白い。


点滴につながれた腕が、痛々しい。


私のメシマズが、健太さんをここまで追い詰めた。


罪悪感で、胸が張り裂けそうだった。


そんな絶望の淵に、

一筋の光が差し込んだ。


遠くイギリスから、

健太さんの姉、陽子さんが急遽一時帰国し、

病室に駆けつけてくれたのだ。


陽子さんは、私を見て、

優しく微笑んでくれた。


「花子さん、健太のこと、ありがとう」。


その言葉が、私の心に温かく響いた。


陽子さんは、健太さんの母から

私の料理の惨状を聞いていたらしい。


陽子さんはショックを受けているようだった。


私は、健太さんを苦しめた罪悪感と、

料理ができない自分を責める気持ちを、

陽子さんに打ち明けた。


涙が、止まらなかった。


陽子さんは、ただ、

私の言葉を静かに聞いてくれた。


そして、健太さんのために、

「懐かしの味」を再現してくれた。


とろとろ卵のお粥や、

温かい野菜スープ。


その優しい香りが、病室に広がる。


健太さんが、その料理を口にした瞬間。


彼の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。


「……美味い……」。


その一言に、私も安堵した。


陽子さんは、私に、

少し古びたノートを差し出した。


「これ、花子さんに」。


幼い頃、健太さんに

「美味しい」と言わせるために

試行錯誤して書き溜めたという、

「失敗だらけのレシピノート」だった。


ノートの余白に、陽子さんの走り書きを見つけた。


「いつか、健太に『美味しい!』と言わせてやる!」


その言葉に、私は深く共感した。


そして、希望が、私の心に灯った。


陽子さんの「私にできることがあれば何でも言って」

という言葉も、私を勇気づけた。


私は、陽子さんの言葉と、

祖母の「伝説の家政婦レシピ」、

そして陽子さんの「試行錯誤レシピノート」という

二つの秘伝を手に、

健太さんを救うために

「心を満たす料理人」になることを決意した。


私の靴が、ふと、止まる。


冷蔵庫のドアを開けた。


中には、私が昨夜、全力で仕込んだ

「彩り完璧なタコライス」があった。


一口も、減っていなかった。


この報われなさ。


そして、現実の重さ。


それが、私の再起への強い原動力となった。


(花子の脳内風景)


「陽子さん、ありがとう。

このノートがあれば、きっと、

健太さんを救える……!」


【健太視点】


陽子姉ちゃんが、病室にやってきた。


その手には、見慣れたノート。


幼い頃、俺のために

一生懸命料理をしてくれた、

あの姉ちゃんの「失敗だらけのレシピノート」だ。


「これ、花子さんに」。


姉ちゃんは、ノートを花子に差し出した。


花子が、そのノートを震える手で受け取る。


姉ちゃんは、花子に、

俺の胃の惨状を聞いていたらしい。


姉ちゃんは、俺のために、

懐かしい味のお粥とスープを作ってくれた。


その温かい味に、俺の目から涙が溢れた。


安堵した。


中学の時、試験で落ち込んで何も食べられなかった俺に、

陽子姉が作ってくれた“しらすご飯”の味のように、

今でも胃が受け入れる「希望の味」だった。


そして、花子が、

姉ちゃんに自分の料理の悩みを

打ち明けているのが聞こえた。


花子の真剣な声。


俺を苦しめてしまったと、

自分を責めている声だった。


その声に、俺の心は揺れた。


俺は、姉ちゃんの言葉と、

花子の決意を感じ取った。


花子への信頼が、かすかに抱き始めた。


この状況が、少しずつ、

良い方向へ向かっているのかもしれない。


(健太の脳内実況)


「援軍、陽子姉、作戦開始。

花子の再教育プログラム、始動。

司令部(胃)、回復の兆しを観測。

作戦成功に向け、希望の光を確認!」


2chスレッド:嫁のメシがまずい


1 名前:名無しの健太 2025/06/18(水) 17:00:00.00 ID:xyz789

退院した!


そして、イギリスから姉ちゃんが緊急帰国してくれた。


姉ちゃん、嫁に何か託してたぞ。


何か、奇跡が起きるかもしれない。


2 名前:名無しの既婚者 2025/06/18(水) 17:03:15.34 ID:jkl456

健太、退院おめでとう!


姉ちゃんまで登場か。


これは、嫁さんの料理、

いよいよ進化する予感だな!


3 名前:名無しの料理人 2025/06/18(水) 17:06:20.56 ID:abc123

姉ちゃんのレシピノートか?


それが伝説の家政婦レシピと合わされば、

最強の料理が生まれるかもな!


胃が救われる日も近いか。


4 名前:名無しの人生相談 2025/06/18(水) 17:09:10.87 ID:def456

健太、良かったな。


希望を捨てなくて。


愛があれば、奇跡は起きるって言ったろ?


夫婦で頑張れ!


次回予告: 夫婦は和解し、花子は二つのレシピを融合。

健太のために、新たな出発が始まる。

次話:第14話 夫婦の和解と新たな出発 ~二つのレシピが繋ぐ絆~

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