原状回復工事
原状回復工事(専有部分)の内容と、範囲等を紹介しています。
大家さん第三話
現状回復工事
入居者の入れ替わり時に発生する工事です。基本的には大家さん負担で行います。
入居者に重大な過失か故意による破損が無ければ、入居者負担はありません。
しかしながら、退去時の情況が余りにも汚い(善管義務を果して使用していたと言えない場合等)場合のクリーニング費用、喫煙環境が余りにも酷い場合の内装費用、について入居者(退去時に)負担となった判例があります。
いずれにしても、退去後の原状回復工事は大家さんが行なうと言う認識でいる方が良いでしょう。
原状回復工事は、管理会社や工務店に丸投げで行うのが一般的です。
この場合、中間マージン等の費用が加算されるため、コストは上がりますが、時間と手間が節約出来ます。
経営上問題なければ良いのですが、そうでなければ大家さんがご自身で行わなければなりません。また、入居状況が悪く家賃も下がりますが、「現状貸し」と言う方法もあります。入居者に掃除して直して使ってくれって事です。これは、管理上の問題からもお勧めは出来ません。
では、どうすれば経費の節約になるのでしょうか。
これからお話しする現状回復工事の概要を、出来る事から、ご自身で行ない「無駄な経費」を削減する事です。どうしても必要なものだけ業者にさせよう、って事です。
まずは、ハウスクリーニングです。
カビや黒ずみ、細かい隙間のちり埃まで綺麗にして、内覧時等に良い印象を与えるようにします。ご自身で行えば一番良いのですが、アルカリ性洗剤・酸性洗剤・次亜塩素酸ナトリウム剤等の使い方を覚える必要があります。薬剤の使い方を覚えれば後は「気づき」だけです。汚れている又は、汚れているだろう場所に気付くかどうかです。経験値を上げましょう。
ご自身ではチョットと言う場合でも、大家さんが工務店等の役割をすれば、中間マージンは節約できます。つまり、ハウスクリーニングの業者を探し直接仕事を依頼します。グーグル先生に教えてもらい数社、比較しましょう。直接依頼するだけでも、一万円前後変わってきますよ。部屋の平米数や他の工事の内容次第ではもっと節約できます。勿論、ご自身で行えば、必要経費分しか掛かりません。
次に内装です。簡単に言うと、床・壁です。クロス屋さんと大工さん、畳屋さん
が必要です。
内装は、工事の内容により値段は大きく変わります。必ず見積もりを取り、本当に必要な工事かを見極めましょう。
汚れてるだけなら、クロス屋とハウスクリーニングで間に合います。クロスも綺麗な状態であれば、ハウスクリーニングの業者にクロス洗浄を依頼しましょう。そうすれば、クロス屋も省けます。
床・壁に破損があれば、基本的に大工さんも必要です。しかしながら、大工さんの工賃(手間)が一番高いので、なるべく頼まずに済む方法を考える(相談する)ようにしましょう。
フローリングにクッションシートを上張りする場合、クロス屋がやってくれる場合もあります。内装も工務店を通さず直接依頼すれば、節約できます。但し、大工さんは直接では受けてくれない人が多いです。あきらめず、クロス屋・畳屋・大工と確保しましょう。クロスは予備的に数人、連絡が取れるようにすれば安心です。
クロス屋を決める時は、床も貼れるか、巾木もやるかを確認しましょう。
内装は、ご自身で行うのは大変です。やはり経験値が必要で、上手く行かなければ、材料のロスが出てしまいます。内装は仕上がりが重要ですのでうまく出来る様になるには時間がかかり、教わることも必要です。また、道具を揃えるのも費用が掛かり揃える物も調べないといけません。
ちなみに私は、畳とクロス以外は自分でやります。
次に、設備です。
設備とは、簡単に言うと「ガス・電気・水道」です。
ここを、ご自身でやるとかなりの節約になります。一部業者は、工賃と機器の購入手間、処分費、運搬費、諸経費と名目を付けて又は、機器に上乗せして請求してきます。
内容は原状回復工事なので宅内の作業になります。勿論、大家さんなので建物共用部分の設備も管理する必要用がありますが、それは次回で。
設備業者は、全部行う所と専門でしか行わない所があります。水道以外は個々の資格が必要になるからです。(資格の説明は省略します)
設備業者を探す時は、よく確認しましょう。
設備を交換する時は、必ず見積もりを取りましょう。
機器の型番みて、ネット検索をし、余りにも機器の値段が高すぎる場合、材料支給で依頼しましょう。その際は、取り付けに必要な付属品を確認しましょう。
ちなみに、主な機器は、トイレ、キッチン、レンジフード、換気扇、水栓、給湯器、インターフォン、電気器具、ビルトインコンロ、食洗器等です。ご自身で交換できるものを増やせば、増やすだけ節約になります。この際の工具等は、消耗品と一部を除き一般工具で可能です。
最後に、建具です。
扉、サッシ、網戸等々、共同住宅の専有部分の中は、建具で仕切られた空間の集まりです。
良く破損するのは、ユニットバス等の扉の留め具(ランナー等)やノブの腐食、居室ドアノ鍵の部分、網戸、サッシ等の戸車、引き戸の戸車、ヒンジ、このあたりが多いのではないでしょうか。
建具自体の破損を含め、基本的には工務店等を通じ大工さんです。
しかしながら、前述金物類(ノブ、ランナー、戸車等)の破損ならば、ハウスクリーニングの業者でも出来る業者はあります。確認しましょう。
この金物の取り換えは、比較的簡単に出来ます。共同住宅は各部屋共通の部品を使っている事が多いので、物が特定できて、手順が解れば、ご自身で作業可能です。
玄関ドアの鍵の部分は、入居者の入れ替え時に取り換える事が多いと思います。通常、設備やか鍵の専門業者に依頼しますが(工務店等を通しても通さなくても)、不動産仲介業者が入居者負担で、不動産仲介業者が取り換えることが多いようです。営業マンの小遣い稼ぎですかね。勿論、ご自身でも可能な作業です。
概略の原状回復工事の内容を、列挙しました。
収支の情況やご自身のスキルや時間を考慮して、出来る限りの経費を節約しましょう。ご自身のスキルが上がれば、原状回復工事の大半を賄う事が出来ます。
床のフローリングを張り替えたい・間取りを変更したい・ユニットバスごと入れ替えたい等々、リフォームレベルで、一人ではできない作業は安全管理上難しいかと思います。しかしながら、大規模修繕や空室リスク等、共用部分の修繕等を鑑み、出来る限りのコストダウンを目指す事が安定経営に繋がる要素の一つです。
今後は、「共用部分の管理と修繕」「大規模リフォーム」「空室リスク対策」等の題材で考えてみようかと思います。
退去後の原状回復工事は、コストの掛かる作業の一つです。
人に任すと、コストは上がり出来る限り自分でやると手元に残ります。
経営状況を鑑み、効率の良い方法を選ぶ事も大家さんに必要な資質です。