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社内監察代行─S.P.Y.株式会社【書籍版タイトル:S.P.Y.株式会社 社内の不正、お調べします】  作者: 九条 睦月


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11-5.驚愕のイコール (5)

「ありえる……かもね」


 そう言った美沙央に、全員が注目する。

 美沙央は皆を見渡しながら、自説を展開した。


「彼女のメイク技術はかなり高いわ。元々お洒落な子みたいだし、好きなんでしょうね。彼女がその男の前で素顔を晒したことがないのだとすれば、正体がバレていない可能性は十分考えられる。というか、正体がバレないように素顔を晒さなかった、と考える方が自然ね」

「そこに、何か意図があると」

「でしょうね。そうでなきゃ、わざわざ自分に害を為した男と一緒にいる理由がないわ」


 仁奈は自分が高橋仁奈であることを隠し、水無瀬と付き合っている? 

 その目的とは一体……。

 スッと背筋が寒くなる。菜花は、無意識に自分の身体を抱えていた。

 仁奈が会社で極力目立たない姿をしていたこと、会社の人間と距離を取っていたこと、その本当の理由は、キャバ嬢であることを隠すためだったのだ。

 キャバ嬢になった理由は、正体を知られずに水無瀬に近づくためだったのだろうか。

 クラブ・アンジェを水無瀬がよく接待に使っていたことは、仁奈の立場なら容易に知り得ることだ。彼女は各所から回ってくる請求書をいつも目にしているのだから。


「高橋さんも……横領に……?」


 声が震える。


「菜花ちゃん、落ち着いて。はい、ゆっくりと息吸って……吐いて……」

「ふぅ……」


 美沙央が菜花の肩を抱き、背をさする。菜花が美沙央の腕をぎゅっと握ると、美沙央は菜花を優しく抱きしめた。


「菜花ちゃんは、その彼女のことをとても好きなのね」

「……はい」


 最初はどこかよそよそしかった。それでも、とても丁寧に仕事を教えてくれて、菜花をいろいろ気遣ってくれた。

 一緒にランチができるほど仲良くなってからは、少しずつ仕事以外の話もしてくれるようになった。意外と親しみやすくて、それでいて優しい。そんな仁奈を、いつの間にか姉のように慕っていたのだ。

 彼女が水無瀬と深い関わりがある以上、横領についても疑わなくてはいけないのか。それを思うと、心が苦しい。


「菜花君、君は今、確信を持って横領と言ったね。もしかして、証拠を掴んだのか?」

「え……」

「横領については黒に限りなく近いグレーという話で、まだ確定ではなかったはずだ。菜花君は書類を調べると言っていた。君は、水無瀬と高橋仁奈の関係を認めた途端、横領のことを口にしたね。それは、横山と水無瀬が会社の金を横領していることを知っているから。君は、それを確信するに足る証拠を見つけたんだ。……違うかい?」


 そうだ。菜花はまだ、そのことについて報告をしていなかった。

 菜花は金桝を見つめ、静かに頷く。


「はい。私が経理資料から得た情報を、これからご報告します」


 場の空気が再び引き締まる。

 そんな中で、菜花は自ら掴んだ横領の証拠について、順を追って詳しく説明していった。

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