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社内監察代行─S.P.Y.株式会社【書籍版タイトル:S.P.Y.株式会社 社内の不正、お調べします】  作者: 九条 睦月


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5-2.無茶ぶり (2)

 佐野から買ってくるもののメモと、場所を記した地図を受け取り、菜花はオフィスを出た。

 就業時間中の外出は、なんとなく得した気分になる。地図を確認すると、買い物の場所は最寄りのデパートだ。十五分ほど歩くが、場所を知っているので一安心。菜花は地図をしまい、そのまま歩いていく。

 そして、無事にデパートに到着し、頼まれていたものを購入した。領収書も忘れずに受け取る。これでおつかいは完了だ。

 あとは帰るだけなので、賑やかなデパ地下をウキウキしながら探索する。すると、目の前から目立つ二人がこちらに向かってくるのが見えた。


「え、嘘」


 向こうも菜花に気付いたようで、手を振ってくる。

 目立つ二人というのは、水無瀬と結翔だ。手を振っているのは、当然結翔である。


「菜花、なにサボってるの?」

「ち、違うから! 総務の佐野さんにおつかいを頼まれたの!」


 結翔が人聞きの悪いことを言うので、菜花は慌てて訂正した。そのやり取りを側で聞いていた水無瀬は笑っている。


「なに、二人は付き合ってるの?」

「はぁ? 知ってるくせに!」

「あははは! 吉良に聞いてないし! いとこだっけ? そういえば、杉原さんとは最初の挨拶以来だよね。改めまして、水無瀬です。よろしく」

「あ、はいっ! 杉原です、よろしくお願いします」


 結翔が水無瀬に対して気安いので、もうそんなに仲良くなったのか、などと思いながらぼんやりしていた。

 水無瀬が爽やかな笑みを向けてくる。水無瀬をこんな至近距離で見るのは初めてだった。

 なるほど、女性たちがこぞって騒ぐのもよくわかる。

 イケメンなのはもちろんだが、とにかく爽やかというか、好青年というか、誠実そうというか。これでまだ独身となれば、皆が彼女ポジションを手に入れたいと思うのも無理はない。といっても、すでに婚約者がいるのでそれは叶わないわけだが。


「で、おつかいは……終わったのか。お疲れ」

「うん。今から戻ろうと思ってたとこなんだ」


 手土産の入った紙袋を結翔に見せ、菜花は二人に挨拶をしてその場を去ろうとした。しかし、水無瀬が声をかけてくる。


「それ、急ぎ?」

「いえ、夕方六時までなら間に合うって言われています」

「じゃあ、まだ時間は十分にあるね。お茶でもしようか」

「え? え?」


 思いがけない水無瀬の提案に、菜花は慌てる。


「出た! 水無瀬さんのナンパ!」

「ナンパじゃないし! そんなこと言うなら、吉良は自分で払えよ?」

「やった! 水無瀬さんの奢りだ! ごちでっす!」

「調子のいい奴。あ、杉原さんももちろん僕の奢りだから安心して。ここの五階にあるティーラウンジの紅茶とケーキは絶品だから。おすすめ」

「えっと、あのっ」

「ちょっとくらい大丈夫だって。外に出た時は皆、お茶して休憩するもんだから。それに、水無瀬さんが一緒だから全く問題なし!」


 菜花があわあわしている間に、結翔に強引に手を引かれ連れて行かれる。

 ほとんど拉致という状態で、何故か菜花はこの二人とお茶をすることになってしまったのだった。

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