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社内監察代行─S.P.Y.株式会社【書籍版タイトル:S.P.Y.株式会社 社内の不正、お調べします】  作者: 九条 睦月


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4.過去を抱えた女

 結翔が菜花とはいとこ同士だとバラしたせいで、菜花の周辺は一気に賑やかになった。

 菜花の顔を見るなり、男女問わずあれこれと声をかけてくるのだ。といっても、やはり女性が圧倒的に多い。彼女たちに誘われ、休憩スペースで雑談をすることも最近増えてきた。


「ねぇ、吉良君って彼女いるか知ってる?」

「えっと……聞いたことないですね」

「本当? ね、ね、どんな子がタイプかなぁ?」

「さぁ……ちょっとわからないです」

「えーっ! じゃあさ、吉良君の秘密とか、杉原さんが知ってることいろいろ教えてよ!」

「えーっと、あの……うーん……」


 おかげで、様々な部署の女性社員と顔見知りになれたのだが……。

 調査のため、菜花も自分から彼女たちの中に入っていかねばと思っていたこともあり、正直ありがたかった。だが、結翔のプライベートをあれこれ聞かれても困るのだ。

 彼女がいるのか、好きなタイプ、そして秘密? どれもこれも全く知らない。知ろうとしたこともない。

 結翔とは幼い頃からの仲だが、可愛らしい見た目と違って中身は黒いもう一人の兄、という認識しかない。いや、それにもう一つ加わる。意外と心配性で世話焼き、だ。

 だから、何を聞かれてもあやふやにしか答えられない。しかし、知らぬ存ぜぬばかりでは期待外れもいいところだ。こちらが悪いわけではないとわかってはいても、申し訳ないと思ってしまう。

 すると、少し年配の女性社員が若手に歯止めをかけてくれた。


「ちょっと、杉原さんが困ってるわよ。いとこって言っても、そんなにあれこれわからないわよね。実の兄妹だってわからなかったりするのに」


 助かった!

 菜花には、彼女の背後に後光が差しているように見えた。

 彼女は確か、営業部一課の事務サポートをしている女性だ。他にも何人かいるが、彼女が一番勤続年数が長く、リーダー的存在だったと思う。

 そんな彼女が助け舟を出してくれたものだから、他の女性たちも仕方なく追求をやめる。


「杉原さんに聞かなくても、あなたたちが自分で聞けばいいじゃないの。話すきっかけが欲しくてうずうずしてるんだから」

「やだー、安藤さん! だって、吉良さんっていつも水無瀬さんと一緒にいるし、あの二人が並んでるとこう……眩しすぎて近寄れないっていうか!」

「そうそうそう!」


 気持ちはわからなくもない。でも、できるなら自分たちで聞いてもらいたい。

 菜花がうっかり下手なことでも言おうものなら、結翔からどんなお叱りを受けるかわからない。結翔は基本優しいのだが、怒らせると怖い。そして面倒くさいのだ。


「ほらほら、あなたたち、今日は早めにランチに行くんじゃなかった?」

「あ、そうだ! 午前の仕事片付けなきゃ!」

「それじゃ私たち、戻りますね。安藤さんと杉原さんはごゆっくり!」


 他の女性たちが続いて休憩スペースから出て行く。そして、菜花と安藤の二人が残った。

 安藤は菜花の顔を見て、ようやく静かになったわね、と笑う。

 年配の女性はお局様などと呼ばれ、周りから疎まれているようなイメージがあったが、彼女は全く違っていた。

 安藤はおおらかで頼りがいがあり、後輩たちから慕われている。お局様というより、姐さんという感じだろうか。営業職の男性社員たちからも頼りにされている。

 朗らかに笑う安藤に、菜花も親しみと好感を持った。


「私はいとこだから特に何も思わないんですけど、吉良君は人気なんですね」

「まぁ、水無瀬&吉良は、うちのアイドルだから」

「宴会芸とかやったら、受けそうですね」

「もう大騒ぎね。皆、うちわとか作っちゃうんじゃないかしら? ペンライト振ったりもして」

「あはははは!」


 菜花が笑っていると、ドアの向こうに通り過ぎる人影が見えた。あれは仁奈だ。ファイルを抱えて歩いている。


「高橋さんって、休憩取ってるのかなぁ……」


 何気なく呟くと、それを聞いた安藤も同意した。


「そうねぇ……。取ってるとしても、自席でかしら。ここに来るのはお昼の時くらいかしらね」

「お弁当持参なんですよね」

「そうそう。自分で作ってるらしいわよ」

「うわ! 女子力高い!」

「そうね。家事は得意だって聞いたことがあるわ。彼女、同期の中でも一番おとなしくて控えめで、おまけに家庭的で。真っ先に結婚退職するだろうって思ってたんだけど」


 安藤の言葉に、菜花の耳がピクリと反応した。

 仁奈の同期。誰なのかわかれば、調査に役立つ気がする。

 菜花は、思い切って安藤に尋ねてみることにした。

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