表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

マスク世代の同窓会

作者: ぶんかなっとう

 今夜は高校の同窓会が開かれる。

 地元のホテルで10年ぶりの再会。

 時間ギリギリに着いた会場には既にたくさんの大人が集まっている。

 僕は進学先を地方都市の大学にしたので同級生とは疎遠なまま。

 とりあえず人ごみに紛れながら会場へ入る。

 男性はスーツ姿が多いがラフな格好もいる。

 女性は化粧してオシャレできれいな人ばかりだ。

 僕は独身だが結婚しているのもいるだろう。

 見知った顔が見当たらないので一人時間を待っていたが、何か違和感を感じた。

 これだけ多くが集まったのに話し声がほとんど耳に入らない。

 聞こえてくるのはBGMと恩師たちの会話と会場スタッフの作業音くらいだ。

 皆おとなしくたたずんでいる。

 同窓会なら昔話や再会の喜びの大きな声が聞こえてくるのイメージがあったがそうじゃない。

 しばらくしてマイクで「時間ですのでクラスの札が置かれたテーブルに集合してください」と流れた。

 移動した人らは僕を含めて数人しかいなかった。

 ほとんどが自分のクラスで集まっていた。

 僕がクラスのテーブルに合流しても誰も声をかけてこなかった。

 周囲にいる人たちの顔を見渡しても特に心は動かない

 会場に入る前に名札を渡され自分で記入したのを付けている。当然みんなも同じように名札を付けている。

 でも名前を見ても「あー居たかもしれない」くらいで顔まで思い出せない。

 だから当時の思い出とかも出てこない。

 男子でさえその程度、女子なんかは全くわからない。

 ここがお見合いパーティーだと言われても違和感がない。

 

 僕らが入学する直前にパンデミックが起きて、それから卒業式までずっとマスク姿のままの学校生活だった。現在は個人の判断にされているが、それでも人が多く集まり密集するところではマスクが多い。

 今回の同窓会でもマスク姿のほうが多いかもしれない。 

 むしろ素顔を見せてもわからないだろう。でもマスク姿では皆同じようにしか見えない。

 10年の時間経過を確かめることができない。

 同窓会なので立食形式なのだが、3年間黙食を続けていたので当時学生だった世代は慣れている。

 僕もマスクをずらして食べるのは得意な方だ。

 食べながら次第に当時を思い出してきた。

 こんな風に静かな景色だけだったと。

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ