ようこそ、パーフェクトマッチへ[1/3]
◇◆各章4000字前後でさらりと読めます◆◇
“救世主か、それともただの復讐鬼か”
マッチングサイト「パーフェクトマッチ」。運営会社ホワイトマッチにいる勤続四年目の佐倉。彼は日々、一癖も二癖もある社員たちのイカれた言動に振り回されては、気苦労の絶えない日常を送っていた。作業脳で効率よく仕事ができないために叱責を喰らう人、自分が非凡な人間と錯覚している自信家のような人、ルックスと人あたりのよさを利用して異性を翻弄する煩悩まみれの人、サクラを装って日銭を稼ぐ下世話な人、ただヤクザにしかみえない人。しかし佐倉は秘密裏に「ある準備」を進めていた。
ひとりの男の復讐譚とマッチングサイト運営側ならではの葛藤を織り交ぜた、ブラックユーモアが垣間見える物語。
突拍子もないことを訊くが、お前は世界から拒絶されたことはあるか?
数年前に住んでいた安普請のアパート、郵便受けにあった封書を手にしたあの日。新卒社員として社会へ羽ばたく直前と時機をみていたかのように、その紙切れは俺の社会的地位をどん底まで突き落とした。無意識に握り潰してできた折り癖が割れた窓ガラスみたく今でも忌々しく残っている。
そんな生き地獄の日々を思い起こしながら、眼前にそびえる赤と黒のレンガで積まれた外壁を眺めていた。ここへ訪れるたびに、オホーツク海から舞いこむ冷ややかな風が、暖かい季節への移り変わりを阻害していると感じる。
いや、もっと単純に、俺のことを阻んでいるだけなのかもしれない。もうそのあたりで打ち止めにすればいいのにと、お前のしていることは無駄なのにと糾弾しているように。だけど、もう止められない。この復讐心が今の俺を突き動かすただひとつの原動力なのだから。
やつと面会せず、門の前で乾燥した手のひらを合わせ祈願した。次の会社でもやり遂げられますようにと心のうちで唱えるだけ。それだけで十分だ。手にしていた封書を鞄の中へ乱暴に突っこむ。それと同時に踵を返し、空港へと向かう。初出勤は、明後日だ。
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