昼食
休み時間。これの扱い方にその人間が色濃く出る。隅の方の席で読書を楽しむ人。これは典型的なオタク君。僕はこういう人とオタク語り合いたいが、そこで話かけれる人間であればコミュ障を名乗らない。弁当を食べながら勉強をする人。これは器用貧乏でそこまで成績は良くない。真に勉強ができる人はメリハリを意識して、日々を過ごしているものだ。ちなみに、僕はこの両方に当てはまる人間だ。しかし、本日は違う。なんせ昼食を一緒にする相手がいるのだ。そう―お姉ちゃんである。只今4限終了のチャイムもとい昼休み開始のゴングが鳴り響く。それと時を同じくして教室を出る。目的地は上の階にあるお姉ちゃんが居る教室。軽やかなステップと華麗なドリフトを駆使し階段を駆け抜ける。到着し教室をのぞき込むと外用の上品な笑顔で手招きをするお姉ちゃんの姿があった。
「お疲れ様。蒼くん。お昼ご飯食べようか。ここ座って」
「ありがとう。姉さんもお疲れ様」
と言いながら指定の位置に腰を下ろし、お姉ちゃんと同じようにお弁当の包みを解き、
『いただきます』
と声を重ねてから箸を動かす。
「やっぱり蒼くんが作ってくれたご飯ってセンスあるよね。見事な彩りで見て良し尚且つ味良しだもん」
「ありがとう、姉さん。気分いいから肉団子一個あげる。ほい」
「やったー!ありがとう、蒼くん。愛してるよ」
そう言って嬉しそうに肉団子を頬張るお姉ちゃん。いつも家で起きるようなやり取りを学校で行うこの特別感、安心感。そんな相反しそうでしていない感情に浸りながら箸を進める。
「ごちそうさま。この後時間ある?蒼くん」
「あるよ」
僕の優先順位第一位はお姉ちゃんなのだからあるに決まっている。それが僕だ。
「ちょっと蒼くんに紹介したい人がいてね。噂をすれば見えたわ。須藤さんこっち来て」
待って。そのセリフは結婚前に両親に挨拶する流れで言うセリフではないか。腹を括り、その須藤さんとやらを見る。僕の一回り、いや二回りほど大きな背丈に根元まできれいに染まっている赤髪。澄み切った水のような整った顔立ち。そんな彼がこちらに近づいてくる。
「やっほーすみすみ。どうもこんにちは。噂はかねがね聞いてるよ弟君」
なんだこの男。見た目だけでなく声まで爽やかかよ。