孤独な登校
蓮見宅から高校までは徒歩十五分程度の距離である。この道沿いには多くの商業施設があり、生活用品からマイナーなボードゲームに至るまで存在しており、その中に含まれるスーパーで僕はアルバイトをさせていただいている。昨日が初仕事なので、初めましての方と関わること、普段使わない身体を動かす仕事は難しかった。だが、それでも僕はやらなくてはならない。将来、自立した生活を送るために今から働いてお金を稼いでそれをやりくりすることを身をもって学ぶことは有意義ではないだろうか。―こんなのはただの建前だ。
ただ理由を作りたかっただけだ。蓮見蒼真は蓮見華墨と比べ存在が劣ることの。学力、胆力、魅力。お姉ちゃんはこの蓮見家の最高傑作と称され、小さなころからなんでも要領よく理解し、行動していた。名前の由来もそうだ。お姉ちゃんにはもともと和の文化などをそつなくこなすことを願って「華」と「墨」で「華墨」なのだ。それに比べてなんだ僕は。ただ隔世遺伝で銀髪蒼眼だったから蒼真。ただの蒼真。なんも期待も願望も無い。
暗い思考の中、明るい声が耳に入る。それは神代高校の生徒たちのものだった。この学校は腐っても進学校であるので遠くの地方だったり、少し離れた地域の人間が遥々足を運ぶ。今僕らが立っている地点は駅からの通学路と僕の道が交差する場所である。「僕ら」と称すのは正しくない。僕はぼっちで、眼前の皆さん方はそれぞれ複数人で行動している。ここで、お姉ちゃんに朝言われたことを思い出す。僕はコミュ障で愛想が無い陰気野郎と言われたことを。確かに僕はコミュニケーション回路が未発達で、表情筋も硬く、どこか冷めた思考を持ち合わせて入る。しかし、お姉ちゃんにはだけは言われたくない。僕と違い要領がいいため、コミュ強で愛想がいい。だがぼっちだ。友達と呼べるような存在が僕の知っている限りではいない。これは確かだ。結局僕と同族なのだ。―くっくっくっ…なんだか周りが嬉々として僕を見ては、ジャーナリズムもとい野次馬精神旺盛そうな人たちは各自スマホを取りだそうとしている。これはあれだな。僕をバカにするための材料を確保しているのだな。僕も彼ら彼女らに擬態するかのようにスマホを取り出し、連絡を入れる。『姉さん、今日はお昼ご飯一緒に食べていい?』と。返信は思った通りの速さと答え。
バイバイ僕の自立した高校生活。そして、いらっしゃいお姉ちゃんとの生活。