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プロローグ
辛い、苦しい
どうして僕がこのような感情を抱かなくてはならない。
どうして感情なんて持ってしまったんだ。
周りの全てが僕を嘲笑するかのように見える。
日曜日なのにスーツを着込んでお酒を嗜むあのおじさんも、ご友人と楽しそうに過ごしているそこの子供も、雲一つない紺と朱のグラデーションで覆われた空も…
「―笑うがいい世界よ
―惨めな僕を
―嗤ってくれ
―蔑め ―塵になって消えたい ―恥ずかしい はぁはぁ」
そういえば、笑うと幸福神経とかいうものが刺激されるらしいな。僕はこの後に及んで幸せを望むのか。走るのもしんどくなってきたな。世界も嗤うのだから僕も笑ってやろう。クククク…ふふふふ…ハハハハハ……あれ?どれだったっけ。笑い方すら分からない。もう何も分からなくてもいい。考えないようにしよう。ただ前に、身体を前に進めよう。そうすれば…
「蒼くん‼ねぇってば、こんな道中で寝ちゃダメだよ‼お姉ちゃんと一緒にお家に帰ろ」
ふと、気が休まる温もりに包まれた。
どうしてこうなったんだったっけ?