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短編フィクション

ボロアパート伝説

作者: 藤見倫

「俺は作るぜ? 伝説を。このボロアパートで」


「はぁ? 何言ってんの? そんなことする暇があるならコレ何とかしなさいよ」


 俺は今、アパートの隣人と話をしている。しかし、お互いに部屋にいる状態だ。なぜそれができるかと言うと、間にある壁に大穴が開いているからだ。そしてそれを修繕する財力と意思が大家にはない。


「壁を直したところで伝説にはなれまい。ゆえに、不要」


「私が喜ぶ。はい、必要」


「だったら自分でやることだな」


「イヤよ。こっちはFXで忙しいのよ」


「その稼ぎで直せばいいだろう」


「まさか。こんなボロアパート出て超高級タワーマンションに行くに決まってるでしょ?」


「ハンッ。くだらん妄想だな」


「伝説作るとか言ってる奴に言われたくないんだけど」


「自分のことは棚に上げるのが人類の基本だ」


「アンタみたいなクズを基準にしないでくれる?」


「自分はクズじゃないと言うのならFXとやらの稼ぎで壁を直して欲しいものだな」


「私は助ける相手を選んでるの」


「それこそクズの思想じゃないか」


「アンタみたいな奴を助けるなんて人間には無理よ」


「お前も地味に人間に対する評価低いよな」


「低いのはアンタに対する評価よ。世界一の善人でも手は差し伸べないでしょうねって言ったのが分からなかった?」


「何とでも言え。そんなことより、いいのか? ドル円暴落してるぞ」


「え、ウソ!?」


 隣人はバッとパソコンに視線を戻した。


「ちょっ、ちょぉっ!? なんでぇ!?」


 これでもかというぐらいに画面に顔を近付け、しばらくわなわなと震えたあと、


「あ゛あ゛~~~~~~~~~~!!」


 両手で頭を抱えて絶叫。椅子から転げ落ちて床をのたうち回り始めた。何度見ても滑稽なものだ。しばらくすると静かになって数秒固まり、それからのっそりと立ち上がった。そして、


「あぁっ、もう!!」


 ドゴォォッ!


 壁に正拳突き。無残にも、パラパラと木片が飛び散る。


 そう、この壁を壊しているのは、他ならぬこいつなのだ。そして俺は、隣人が壁が壊していくサマを動画に収め、一応モザイクは掛けて投稿サイトにアップし、運良く注目を集めることに成功した。

 穴が広がる度にアップしているのでシリーズ化しており、毎回楽しみにしている人も多く結構な収入になっている。


 もしこれで超高級タワーマンションに引っ越すことができたら、俺は伝説になれるだろうか。

 お読み頂いた皆様、ありがとうございました。

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