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英語無双  作者: strength
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第4話 留学


咲良や謙信、神楽は中学生1年生になると、英語の授業が簡単だったが、より高度な質問をしたり、応用単語を考えたりして、過ごすようになっていた。特に課題テストでは3人が常にトップスリーだった。それを抜くために、休み時間の間に英語の勉強をする人が増え、定期テストは100点で当たり前、その上課題テストも百点満点中80点くらい取らないと平均より下になるという異常事態が起きていた。もはや、英語のテストをする意味を先生は見失い始めていた。


秋の遠足では、紅葉の話とか、金閣寺とかの話をすべて英語でしており、パンフレットも何の迷いもなく、英語と日本語両方とるのだ。中には中国語も取る猛者もいる。そう、その3人だ。神楽、咲良、謙信の3人だ。そして、2年生の夏休みに留学に行く事にした。アメリカに行くのもいいが、咲良が母の母国であるスウェーデンに行ってみたいと言いだし、3人は留学をするための準備をし始めた。これが、中1の夏である。あっという間に2年の夏休みになり、パスポートを持って、3人で2週間ホームステイに行く事になった。3人とも同じところで、ホームスティをした。わからない単語も関係代名詞や関係副詞を使った説明を聞いて理解した。


もちろん日本から宿題を持ってきている。しかし、そんなものをしている暇なんてなかった。スウェーデンで、労働環境に関する資料を集めたり、女性や移民に対する差別に関する資料も探したりしていると、あっという間に2週間がたった。ほとんどが図書館にいる時間だった。そして、あっという間に登校日がきた。宿題はほとんどできていない。初日から登校日の前前日までスウェーデンにいたのだ。そして、日付け変更線を超えて帰ってきたのだ。できる時間なんてなかった。それでも努力して、朝には8割がた方が付いていた。


翌朝、3人ともひどい顔をしていた。清潔感はあるが、全体的に疲れが見え隠れしていた。それを察したクラスメイト達は静かにたとえ授業で寝てしまっても咎めないようにと先生に根回しをしておいた。それは、明らかに徹夜しただろうと察しがついたからだ。それから3週間後に体育祭がある。そこで、また、クラス一丸となって練習した。というのも、3人揃ってるクラスなので勝たせたい気持ちが強かったのだ。そして、咲良はすらっとしたスタイルを強調するような膨らみが出てきた。一方で神楽は背は平均のすらっとスレンダーな体型になっていた。そして謙信は背が高く、バスケ部に入っていた。しかし、やはりときめくのは咲良といる時だけだった。体育祭の日がきて、咲良が走っている姿を見て少し息が荒くなっている男子を見つけたので、体育祭が終わったらすぐ告白する事にした。体育祭が長く感じた。早く告白したい。受け止めてほしい。この想いを。お弁当も喉を通らない。ご飯なんて食べなくても、お腹はいっぱいだった。咲良がこの世界に存在するその事実だけで何でもできる気がしていた。咲良が水筒を手渡した。その触れ合った手が柔らかくて、謙信はどぎまぎした。それを神楽が冷やかした。

「謙信、咲良が好きなの?」

神楽が見透かしたように言った。


謙信はキョドッている。しかしここは本心を答えようと思った。口から出た言葉は、

「俺、好きなんだ、君が」

速攻で自分に心の中で突っ込んだ。ここまで英語かよ。直訳すんなし。と。咲良が答えた。

「ありがとう。幼稚園の頃は気付かなかったけど、きっとずっと前から好きだった。」

謙信はもう夕陽のように赤い頬になっている。

「咲良彼女になってくれん?」


「もちろんよ。今までと同じ距離感で、でも、少し奥に踏み入るような。安心するけど、ドキドキするそんな関係になれたらいいな。これからもずっと」


「よくほんなこと言えるよな。俺これでも、めっちゃドキドキしとんじょ」

謙信が言った。


「ほなって好きなもんは好きやもん。好きなもん好きというてなんであかんの?」

咲良が言った。


「恥ずかしいからに決まっとるやん」

謙信の顔が夕日に照らされ真っ赤になっている。

「こ、これは、あの、夕日のせいだからな。照れてねーからな」


紅の夕陽が2人を照らす。そして、体育祭が終わり、星達の祝福を受けながら、帰りなれた道を2人で歩く。神楽は友達と帰るらしい。最近、石田五郎となかがいい気がする。こうして、2人で咲良の家に戻った。


「Dad , I'm home.彼氏の謙信君です」

咲良が言った。

「未だに英語なんだな。お勉強お嬢様」

謙信が冷やかす。


「だからお勉強お嬢様ってなんなん?」

咲良が言った。


「覚えてないん?あの、俺らが英語やるきっかけになった。ままごとの日よ。あれ、幼稚園やったな。あのあとたこ焼きバージョンやってたこ焼きの違和感すごかったっけ?」

謙信が言った。


「思い出した。あの時神楽が編み出したんだよね、お勉強お嬢様。私が勉強ばかりしてたから」

咲良が言った。


「ほうよ。ほなけん、お勉強お嬢様や。で、そんなお勉強お嬢様は最近成績どうですか?」

謙信が言った。


「距離感じるわ。丁寧な口調」


「だろ?あの時は初対面やったけどな」


「ならしかたないやん。成績は一応県高校ランク1位の東城高校に余裕があるくらい。もう少し伸びれば県外にでれるかも。出なくていいけど」


「昔から変わんねーよな。小学校も中学だって受験できたのにせずに同じ中学に来たもんな」


「だから、謙信に合わせるよ」


「まあ、俺も東城行けそうだよ。あとは中3の追い込み次第。でも、お勉強お嬢様と一緒ならやっていけそう」


もうすぐ部活も引退だ。来年の6月が謙信のバスケの最後の試合。そして、同じ月に咲良の空手の審査会がある。こうして、お勉強お嬢様と謙信は勉強を始めた。翌日学校に行くとクラスにはもう、咲良と謙信の恋が広まっていた。

「そういえば、あん時全員おった?」


「うん。ほとんどおったよ。ほなけんいきなり言うてきてめっちゃびっくりしたんじょ。ほなけど本心言ってくれたみたいやし、好きやったけん告白受けた。」

謙信叫ぶ。


「まじー。めっちゃカッコ悪い。あの英語を一単語一単語訳したみたいな告白」


「あれはあれでよかったよ。初々しい感じが出てたから。ちなみにあん時2人の間にたぬきおったん気ーついとった?昨日めっちゃ笑いよったんあれなんよ」


「そうで無かったらショックやわ。告白した日にめっちゃわろてるんやで?自分の告白した事をめっちゃ後悔したであん時」


「ほうなんや。ごめんな。たぬきがおもっしょ過ぎて堪えれんかった」


そして、その状況もまた全員から見られていたのだ。


「お前らほんと最高だわ。イケメン高身長の頼れる番長手取川となにもかも良好で空手部主将の綾蘭川とか祝福するしかありえない」


石田五郎が言った。


「ほんまになー。じゃあここで告白行ってみよう。石田くんどうぞ」

神楽がからかうように言った。


「いや、無理や。無茶振りすんな。好きやで確かに。でもなんでやねん」

石田五郎がツッコむ。


「ナイス。うちも好きやで。付かず離れずの距離でドキドキしようよ。ねぇ。ゴロちゃん」

甘えた口調で神楽が言った。


「岩神さんめー」

五郎の叫び声がクラス全体が沸き立った。


「よくやった。石田」


「最高だぜ岩神」


全員祝福ムードだ。教師は口を魚のようにパクパクさせていた。授業が始まるとシーンと静寂が支配した。いよいよ来年から本格的に勉強を始めなければならない。こうして、しっかりと授業を受けているときも、側にお互いがいるのを感じ、幸せを感じる2組のカップルが教室にいた。

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