第3話 小学生時代
今回英語は控えめです。
そして入学式の日、咲良と謙信、そして神楽は同じ学校で同じクラスだった。小学生になっても、友情は続いていた。遊ぶ時は基本英語の勉強会になっていたが、楽しみながら英語を覚えられ、その上褒めてもらえるのでとても嬉しかった。
修羅はどんどん大きくなる咲良を見てまた涙が溢れてきた。もはや、ナイアガラもびっくりするほど泣いていた。
「親父、兄貴の時はあそこの咲良の父親みたいになってたんちゃうん?なんで俺の時は感慨なさそうなんや」
謙信が言った。
「どこでそんな難しい言葉を覚えたん?お前の兄貴か?」
謙信の父景勝は驚いている。
「そうだよ。あのクソ兄貴だよ。あとは可愛い咲良ちゃんかな」
謙信が言った。
「よう遊んびょったあの子か。お前好きなんちゃうん?」
景勝揺さぶりをかける。
「そんなわけあるかよ。俺なんかじゃ釣り合わねーよ」
なんて言いながら心の中では名探偵かよと思い、謙信の頬は夕焼け空のように紅くなっていた。
「いつか本当に好きだとわかったなら取られる前に告白しとけよ。これは、俺がお前のかあさんをゲットするのに使ったテクだ。幸せになれよ」
「まだ小学1年だぞ。俺も咲良も、神楽もな」
謙信が言った。
そして、咲良吹雪を受けながら、体育館に入り、クソ長い校長の話を聞き、教室に戻った。謙信の横は咲良だ。そして咲良の後ろに神楽がいる。仲良し三人組が揃っていた。教室に先生が入ってきた。そして、自己紹介をするように、指示した。
「自己紹介は何語でですか?日本語ですか?英語ですか?」
咲良がそういうと、教室が凍った。先生はポカーンとしている。なぜなら英語は教えていないので、候補に入ると思わなかったのだ。そして、口調が強くなってしまった。
「日本語に決まってるだろうが。あ?馬鹿かお前は?」
謙信は激怒した。
「先生だからといって、その言い方はひどいと思います。文化的な多様性を否定していると思いますが、皆さんどうでしょう」
クラスメイト達はいきなり、そんなことを言われたってというか顔をしていた。なぜならまだ、小学1年生である。まず、言葉の意味がわからないのだ。
「なんでそんな難しい言葉知ってるの?意味もあってるし」
先生の顔は真っ赤だ。
「俺には今年大学受験の兄がいます故に。あとは咲良ちゃんにも言葉は教えてもらいました。彼女は日本語の勉強を何時間もして、国語辞典を暗記したとまで言ってました。だから日常会話に困ることもなく、もっと深い勉強の言葉もわかるみたいですよ。僕も英語話せますし。日常会話ぐらいですけど」
謙信が言い返す。
「なら、やってみなさいよ。さぁ、綾蘭川さん」
軽くやけになってしまっている先生。
「I'm Sakura Ayarakawa.My hobby is reading books and studying Japanese history and culture .Nice to meet you.日本語で言うと、私は綾蘭川咲良です。趣味は読書と日本史や日本文化の勉強です。よろしくお願いします」
先生の顔は唐辛子いや、ハバネロを山盛り盛られたような真っ赤な顔をしている。恥と怒りとその他諸々の感情が混ざりそんな顔になっている。
「できるのはわかりました。好きな言語でやりなさい。日本語の方がわかりやすいです」
先生が言った。
「なら私も。I'm Kagura Iwakami.My hobby is reading books and studying English with my friends.Nice to meet you.岩神神楽です。本を読むのと友達と英語を、勉強するのが趣味です。よろしくね」
3番目に順番のきた子は凄く緊張している。
「僕は石田五郎です。英語は話せません。てか、話せるの凄いわ。趣味は読書と父親と打ちっ放しに行くことです。よろしくお願いします」
「もう英語の順番は終わったよな。俺も日本語で行きます。僕は牛込羅神です。趣味は釣りと動画を見る事です」
4番目の子が言った。
「Hi,everyone. I am Kenshin Tetorigawa.My hobby is studying English with my friends.Nice to meet you.やあ、みんな、俺は手取川謙信です。趣味は友達と英語を勉強する事です。よろしゅーなー」
この後みんな英語を勉強しようと必死になっていた。そして、必然的に咲良と謙信と神楽の周りに人が集まり、休み時間はみんなで英語の勉強会が始まっていた。自己紹介でぶっかました三人の周りにクラス全員が集まるのだ。最初見たとき、先生は職員室に全力疾走した。そして、校長を呼び教室を見てもらった。
「何をしておるんだね?」
校長先生がきて驚いて言った。
「英語の勉強会です」
皆でそう返すと校長と先生方が口を大きく開けて「は?」とだけ呟いた。
「自己紹介のとき三人が最初に言った言葉がわからなかったから、わかろうと思って勉強しようってみんなでやり始めた。特に綾蘭川さんの発音は綺麗で聞き取りやすい。謙信は日本語訳が方言出ててわかりやすい。神楽は文法の解説が凄くわかりやすい」
誰かが言った。
「これは咎められませんわ。自発的に勉強を始めたんです。うちの高校生の娘にも見せたいですな」
校長が言った。
「さぁ、戻りますよ。眉山先生」
そう担任の名前は眉山である。
「いや、あの、私はここで授業中するんです。ここの担任私です。わかって言ってますよね。剣山先生」
剣山檸檬先生は隣のクラスの担任だ。ちなみに眉山先生のフルネームは眉山すだちである。そしてこの学校の名前は市立九重万小学校だ。およそ、140年ほどの歴史を持つ。この学校の教訓は「多様性を認めよう」である。眉山先生はシュンとした様子で、授業を始めた。次の授業は、道徳である。今回のテーマは間違いは正す必要があるが、ある程度の寛容は必要であることの例を挙げて学ぼうと言うものだった。
その授業でも咲良や謙信、神楽はしっかりと発表した。2ヶ月後の遠足では、みんなのブルーシートを繋ぎ合わせて1つの場所に固まって弁当を食べ、遊具に行くときも三人のうち誰かにはついていくような事になっていた。だから大体クラスの3分の2ぐらいが1つの遊具に行くので効率が頗るわるい。三人がくっついて動いた時にはトイレ以外ほぼクラス全員が付いてくるのだ。もはや集団行動が完全に板についている。結果遠足でも、英語の勉強会が開かれた。先生方はもう諦めていた。このまま成績が伸びてしまうのは仕方ないと。全く悪い事はしていないが、なぜか釈然としないモヤモヤが残るのだった。
夏休みの宿題は学校の教室に集まってみんなでやったという文字が一行日記を埋め尽くしていた。秋の運動会では、咲良や神楽、謙信が走っていると、クラス全員が応援し、それ以外の人でも全員で応援するという、クラスの団結力で、見事1位になった。冬休みもみんなで教室に集まり宿題をするようになった。だいたいそのあと、軽く英語の勉強会が開かれる。そして、5時まで勉強するような事になってきた。もはや、勉強虫である。そして、四月が来て学年が変わると、三人はクラスを分けられた。というのも、固まるとすべてがまとまって行って釈然としないモヤモヤがたまるからというのが、すだち先生の言い分だ。だが、それは裏目に出た。
また、それぞれのクラスでは英語と日本語の2言語で自己紹介する人が増えたのだ。そして、3クラスとも英語の能力が上がり、3年生になる頃には全員が英語で自己紹介を始めるということが起きてきた。もちろん日本語の能力も平均に比べて高く、全国小学生学習能力テストなるものでは、学校全体として見ると、国語と社会の成績が全国トップ、算数と理科は惜しくも2位だったがその成績は学校始まって以来の快挙だった。英語はテストがなかったのだ。4年生になると、外国語活動が始まったが、英語はほぼ聞き取れるし、教える単語のレベルが例年の比ではないレベルを教える事になった。例えるなら就職するのに取るといい英語資格EFT(English For Job)というテストの2級レベルを教えていたのだ。小学生にして、もはや就職ができるほどのレベルの英語能力を持っていたのだ。5年生でも6年生でもレベルの高い単語を教えた。結果的に、九重万小学校出身の子が中学に入ると、英語の先生が頭を悩ませ、高校の受験をどうするかとかを超えた何かを探さなければならなかった。




