第2話 幼稚園
幼稚園に入る時が来た。咲良の父である、修羅は心配そうだ。生まれた瞬間から、英語を話せるように英語のCDを聞かせながら、日本の文化も教えていた。そして咲良は普通の幼稚園に入った。
その幼稚園の名前は九重万幼稚園だ。咲良にはエリートとかになる気は無かったようだ。
「Mom and Dad, I have to go now.
I will be alright, so don't worry. I’ll make many friends.」
咲良はワクワクした様子で修羅に行ってきますの旨を伝えた。
「そうか。頑張れよ。」
父の修羅も喜んでいる。
「大きくなったわね。」
母親のローズも嬉しそうだ。
「お前も日本語うまくなったよな。出会った頃は全然だったけど。」
修羅はローズと出会ったときのことを思い出しながらそう言った。
「ありがとう。Thank you.」
母親も同じことを思い出していた。
さて、教室に入ると父と母が手を振っていた。咲良も振り返した。ほかの子供たちも親に手を振っていた。今日が初めての幼稚園なのだ。
咲良は早速近くの子に話しかける事にした。
「I'm Sakura Ayarakawa.Nice to meet you.」
近くの子はポカーンとしていた。咲良が美しかったのもあるが、英語がわからなかったのだ。それを見た咲良は日本語に戻した。
「ごめんね。私は綾蘭川咲良。趣味は英会話と、絵本読む事。あと、日本の歴史や文化を知ることだよ。」
「俺は手取川謙信。趣味は絵本を読む事だ。いきなり知らない言語話されると怖いぞ。」
手取川謙信は普通に日本語で自己紹介をした。
「なら日本語で頑張ります。」
咲良は満面の笑みを浮かべている。
「やめろ。その丁寧な口調。ちょっと距離を感じるぞ。普通に話せないのかな?」
謙信は少し照れながらそう言った。
「今まで日常生活に英語が入り込んでて日本のことも英語で聞いてたの。だから日本語の名前知らないものもあるかもだから。通訳お願い。」
咲良は生い立ちのことや、通訳お願いと謙信に伝えた。やはり、微笑んでいる。
「いや、俺英語話せねーし。日本語の名前しか知らねーぞ。それでいいのか?」
「助かるよ。ありがとう。」
「皆さん自己紹介をしてください。日本語でいいですよ。では、綾蘭川さんからどうぞ。」
先生が自己紹介をするように言った。
「綾蘭川咲良です。趣味は絵本を読む事と英会話です。英語話せます。日本語を教えてもらえると嬉しいです。よろしくお願いします。」
咲良は得意げに自己紹介した。
「では次、岩神さんどうぞ。」
先生は次の人に促した。優しそうな表情だ。
「岩神神楽です。趣味は絵本を読む事です。よろしくお願いします。」
こうして自己紹介は中盤まで来た。
「手取川謙信です。この丁寧な口調が苦手です。趣味は絵本を読む事です。よろしくお願いします。」
まだまだいるが、ここでは省略する。
「なぁ。綾蘭川さんてハーフなん?日本語のアクセント綺麗だけど。ちなみにうちは、純日本人じょ。」
神楽が聞いた。
「ほらほうやろ。ハーフは咲良だけだろ。ってか、可愛すぎな。」
謙信は神楽に答えたが、顔が少し赤くなっている。
「それって方言ですか?私も阿波弁喋ってみたい。アクセントが可愛いですね。」
「ほな、教えよか?」
と謙信。
「お願いします。」
咲良が返す。
「何から教えるん?」
神楽が疑問を口にする。
「話っしょったらそのうち覚えるわ。って思たけどあかんかな?」
と、謙信が言う。
「そんなんで覚えられるかだー。ゆうて挨拶はほぼ変わらんし。何おしえよかー。や、か、とかかな?」
神楽が方言で返す。
「それ俺でも知らんわ。世代古すぎるんちゃん?」
謙信でさえ知らないようだ。
「ほう?私結構使うじょ。ペンやー。とかペンかー。とか。」
神楽の方言レベルが凄い。
「あの。私どうすればいいんですか?」
咲良置いていかれる。
「それを阿波弁で言うと、私はどうしたらええん?になる。」
咲良の言葉を阿波弁に直す神楽。
「ほうやな。あと、そうとかそれとかの指示系指し示す系?の(そ)が(ほ)に変わるよな。(ほれ)とか(ほの)とかな。あとは(ほなけど)って言う逆説とかな。」
解説する謙信。
「ほうやな。確かに言われてみればほうやわ。」
神楽納得。
「ほうなんや。私はもっと阿波弁知りたいけん。教えて。」
急に阿波弁になる咲良。
「いつ教えた?さっきまで全然話せてなかったよな。」
驚きの謙信。
「応用ですね。近くで話しているのを聞っきょったんよ。ほなけん話せるようになったんよ。」
咲良驚くべき言語センス。
「いや、早すぎるわ。たった数分でそのレベルかよ。もうほぼ県民レベルじゃね?」
謙信が感嘆する。
「ほうよな。まさか、初日にこんな話せるとは思わんかった。」
神楽も同様に驚いている。
「ほんなに褒めてくれるん?。ありがとうな。」
咲良は嬉しそうだ。
「マジで阿波弁喋れるようなってるし。」
何度も驚く神楽。
そんなこんなをしているうちに帰る時間になった。親が迎えに来たので、咲良は友達として手取川君と岩神さんを紹介する事にした。
「Dad ,this is my friends Kenshin and
Kagura.They taught me "Awaben"or Awa dialect.」
「そうか。よかったな。謙信くんと神楽ちゃんか。いい友達を持ったね。これからも咲良のことをよろしくね。」
修羅(咲良の父)が嬉しそうに言った。
「咲良はハーフだって聞いてたけどお母さん似だったんだね。お父さんの方は普通だもんね。」
謙信よそれは失礼だろう。
「ほうやなー。うちのかあさんめっちゃ綺麗なんじょ。」
母自慢し始める咲良。
「ていうか、お父さんが迎えに来るんだね。お母さんが働いてるの?」
家の事情ズバズバ聞こうとする神楽。おい。
「ほうなんよ。ほなけん、育休とか産休とかで苦労したって聞いたよ」
咲良、勉強しすぎでしょうよ。
「流石だな。勉強熱心でよかったよ。あとは楽しい人生を。って幼稚園生だから普通に友達と遊んだり話したりすればいいよ」
修羅が微笑んで言った。
「Thank you ,dad.」
咲良は天使の微笑みを添えて言った。
「なんで父親とかには英語なの?」
神楽が咲良に聞いた。
「だってお母さん日本語うまいけど上手くないふりして話させようとするから、だんだんめんどくさくなって英語でいいかなって。お父さんも意味はわかるようだし。」
「ほんと不思議な家庭やで。今度遊びに行っていい?」
謙信はやはり遊びたいようだ。
「Kenshin wants to come and hang out with me.」
やはり、咲良の発音は綺麗だ。
「いつだい?。日を決めてくれれば準備するよ。今日はごめんね。」
修羅がそう言った。
「いつにする?あと神楽ちゃんも来るよね?」
「ええ。ぜひ行きたいわ。私は明日暇だけど。謙信はどう?」
「俺も明日なら大丈夫だ。咲良明日行って大丈夫か?」
「明日は大丈夫だよ。パパに聞くけど。
Dad, can I hang out with them at my house tomorrow?」
咲良がそう言って修羅に確認する。
「大丈夫だよ」
「ほな。明日遊ぼう」
「ほうやな」
3人が微笑み、夕日も微笑みを浮かべていた。
翌日
今日は土曜日だ。咲良は朝からテンションが高かった。テンションは日本語の意味でのテンションであり英語のtensionではない。なぜなら友達が来るからだ。
朝ごはんは白飯に豆腐とわかめと白菜の味噌汁、サラダだ。咲良は好き嫌いなどせず、大体のものは食べられる。みんなで朝ごはんを食べた後、咲良は着替えた。
今回のコーディネートは白と黒のボーダーシャツに紺のパーカーに紺色のスカート、もちろん黒いタイツを履いている。今日は少し気温が低いのだ。そして、髪を三つ編みにして 、いつきても大丈夫なように部屋を片付け、ついでに洗い物もして、掃除機もかけておいた。
そんなことをしていると、あっという間に昼になり、父と昼ごはんを食べる。昼は朝のサラダと味噌汁と白飯である。食べ終わると、神楽と謙信から咲良に1時ぐらいに着くという連絡があった。時計を見るとまだ12時45分だったので、歯磨きをして家の前で待つことにした。本当にちょうど1時に着いた。そして、3人は何をするかを考え始めた。
「何する?ままごと?」
神楽が提案する。
「ごめんね。うちゲーム無くて。私が欲しがらなかっただけなんだけど。」
「おまえ普段何してんだよ。」
謙信がツッコむ。
「洗濯して、洗い物して、掃除機かけて、お勉強して、ご飯を食べて、洗い物して
お勉強して、ご飯食べて、洗い物してお風呂入って寝る。かな。」
咲良よ。それで良いのか?。
「どんだけ勉強すんだよ。受験生のクソ兄貴に見せてやりたいくらいだよ。」
兄への愚痴が出る謙信である。
「あ、お兄さんいるんだ。今度会ってみたいな。受験生だと大変だろうね。」
咲良は想像を膨らませた。
「クソ兄貴は俺に嫉妬してた。美少女ハーフと同じクラスとかどれだけ幸せかしっかりと知っておけだとさ。」
謙信は照れてるのだろうか。
「あらあら。面白い方ですこと。」
なぜか大和撫子っぽい返しをする咲良。
「おまえのかあさんどこの国の人なの?」
謙信が聞く。
「スウェーデンっていってたきがする。確信が持てないけど、確か北欧の東京の人口より300万人くらい少ない国だったはず」
咲良が知識を披露する。
「流石お勉強お嬢様」
神楽早速あだ名を作る。
「気に入った、そのフレーズ。お勉強お嬢様」
謙信も気に入ったようだ。
「そんなお嬢様ってほどじゃないよ」
咲良が言った。
「で、お勉強お嬢様何する?」
謙信が聞いた。
「話す?英語でも聞く?」
咲良が言った。
「じゃあみんなで英語の勉強でもしよう。お勉強お嬢様の提案を採用して」
神楽が言った。
「そうするか。将来やるしな。according to my クソ兄貴」
謙信が言った。
「ほな、ほうしよう」
神楽が言った。
「何がいい?ピザ屋さん?それともハンバーガー屋?」
咲良が言った。
「ケーキ屋さんはない?」
神楽が言った。
「あるよ。ケーキ屋さんで良い?」
「しゃーねーな。今度はそれ覚えたらたこ焼き屋でもやろうや」
謙信がしぶしぶ引き受ける。
こうしてまず父親に頼み、問題集のコピーをしてもらって、スクリプトを見ながらCDを聞いていた。そして、二時間ほど繰り返し再生しながら、シャドーイングなどもして、最終的に役割を分けて読み始めた。最初は神楽と咲良だ。最初は神楽が店員役、咲良が客だ。
「Hello.May I help you?」
「Yes. I'm looking for a cake for my daughter's birthday.Can I reserve one on May 5.」
「Yes,you can.What kind of cake do you want?」
「I want sponge cake in one hole .」
「So, you want sponge cake in one hole on May 5. Right?」
「Yes. Thank you 」
「It will cost you 3500yen.」
「Here you are.」
これを三人でローテーションで1人は見ていながらずっと続けていた。もちろんたこ焼き屋もやった。完全に塾である。なぜか勉強会に変わっていた。しかし、とても楽しそうだった。コッソリ見ていた修羅は、将来有望だなっと確信した。それから土曜日は友達と遊ぶか勉強かのどちらかになった。あっという間に時は流れ卒園式に。修羅は涙を流していた。自分の娘が、幼稚園を卒園したのだ。もうすぐ小学校に入学すると思うと、涙が溢れてきた。