夏だ海だ海水浴だ
。
日中はコンテナハウスの屋根が焼けて、部屋の中に居ると蒸される季節。
大急ぎで断熱性の高い屋根をリスティールさんとポセイドン協力のもと作って設置して、エアコン付けて何とかなった今日この頃。
「うっしゃー! 後は任せたロナルディ」
壁面が鉄板に塗装してあるだけのコンテナハウスだから、窓周りを残してゴーヤで覆って貰うんだ。
グリーンカーテンって奴な。
「ある程度しか伸ばしませんよ、無理矢理成長させても美味しいゴーヤが実りませんから」
俺はゴーヤが苦手だから、美味しいゴーヤってのを食べてみたい気もする。
「秋刀魚のワタは好きなんだけど、なんでゴーヤの苦さってのは苦手なんだろな……不思議でたまんねえ」
「あれ……ゴーヤが苦いんですか?」
ロナルディと話が噛み合わなかったんだけど、コンテナハウスの横に作った花壇に生えてる向日葵を描いてる杏の隣で、暑くてグダグダにダレてるポムが理由を教えてくれた。
「爆釣の地元では緑の時に食べるんだよ、熟れてないゴーヤなんて苦いのは分かってるのにさ」
「え? 黄色くなったゴーヤを食うのか?」
素朴な疑問、黄色くなったゴーヤなんて食べた事無いから。
「そう言う事なら、今度どちらも試してみましょうか? どちらも食べてみないと善し悪しなんて分からないんで」
その意見に賛成。ゴーヤが実るのが楽しみになるなんて、日本に居た頃は考えた事すら無かったや。
結局、暑すぎて今日の仕事は休み。
朝から蛸壺を見て回って、タコを多少売ったから売上もあるし十分だろ。
「うし! 今日は純粋に海水浴を楽しむぞ!」
俺の突然の宣言に、アイス片手に暑くてダレてる皆がキョトンとしてる。
「何時も泳いでるでしょ? あれは海水浴じゃないの?」
「違います。海水浴とは魚や貝を取らずに、ただ海で遊ぶ事を楽しむ事です」
何言ってんだこいつ? なんて顔をしてるポムだけど、横で聞いてた杏は宣言が終わった直後にイーちゃんを取りに行った。
因みにイーちゃんは、家の軒先に置いてある。
起動するのは海に行ってからで、持ち運びはポセイドンの仕事。
「この水鉄砲使ってみたい!」
家に入って行ったと思ったら、持って来たのは誕生日にポセイドンから貰った超強力水鉄砲。
何と水が真っ直ぐ水平に30mも飛ぶんだ。
「それで爆釣の頭に穴を開けてやれ」
流石に穴は開かないけど、食らったら痛そう……
全員水着に着替えて準備体操して、それぞれに海水浴を楽しむ時間。
イーちゃんに跨る杏は、水色の水着に腰にパレオを巻いて、水鉄砲持って海に飛び込んでった。
ロナルディはバミューダパンツ、こいつの事はどうでもいい。
リスティールさんとポムは普通にビキニだったりする……
てかリスティールさんの胸デケエ……
「羨ましいですか?」
胸にびっくりしてたらロナルディの勝ち誇った顔……
「うん。普通に羨ましい」
ポムの方は均整の取れた体型っていうのかな、貧乳って訳じゃないけど、そんなに大きくも無い。
俺とロナルディの会話が聞こえてたみたいで、ポムが凄いジト目でこっちを見てる。
「ポムさんのスレンダーでもちゃんと女性らしい体型も良いと思いますよ」
「それは同感、ポムってスタイル良いよな」
ホッ……機嫌が治った。ナイスフォローロナルディ。
リスティールさんには聞こえてなかったみたいで一安心だな。
浮き輪を付けてプカプカ浮いてるポムの近くを、イーちゃんに乗った杏がクルクル回ってるんだけど……
杏が乗って無かったら白い背びれが海面に出てて襲われてるようにしか見えなかったりする。
ポムは泳げない癖に足のつかない場所まで行って大丈夫なんだろうか?
「杏ちゃん、本気で痛いから! それは至近距離だと本気で痛いから!」
ポセイドンは痛がったりしないけど、ロナルディは痛いらしい。
「水をどんなに高圧で射出しようと俺には効かん。なんせ俺は海だからな!」
バタフライで泳ぎ回るポセイドンが大ジャンプして杏やポムの上を飛び越えて行く……
お前はトビウオか!
(海洋生物の特技は全て俺の特技だ、こんなの朝飯前なんだぞ)
また心の声に答え返された……
いい加減に心を読まれないようにならないと……
海に入ってる4人と、砂浜でバーベキューの準備をしてる俺とリスティールさん。
実を言うと俺は目のやり場にとても困ってるんだ。
リスティールさんが着てるのはそんなに際どい訳じゃない普通のビキニなんだけど、アニメで出て来るような、ちっちゃい子なのに胸はデカいって感じの体型でさ……
人妻だってわかってても……これはダメだ。
色即是空、空即是色。煩悩退散、煩悩退散。
ある程度バーベキューの準備が終わるまで、ひたすら頭の中で子供の頃からの辛かった思い出を思い出して、悲しくなりながら体を動かしてたら、ポセイドンが泳ぎながら爆笑して溺れ掛けてた。
海水飲みまくってやんの、ざまあみろ、へっ!
(小5でおねしょシーツを干してる回想が面白過ぎた)
くそっ! 恥ずかしい思い出の殆どをポセイドンに知られてしまった……
「杏、水鉄砲貸してくれ」
こうなったら……
「うん。ポセおじちゃんを狙うの? 全然当たらないよ」
「大丈夫だ。杏、ポセイどんを呼んでみてくれ」
ふっ。作戦はバッチリだ。
「ポセおじちゃ~ん」「どうしたんだ~いあんずちゃあぁぁぁん」
やっぱりな。
「喰らえ! 怒りの一撃!」
顔面にモロヒットしてやった! ふっ。
「おお! ポセどんに当たった、爆釣凄いじゃん」
「作戦勝ちだよ。だってアイツ猫型ロボのモノマネ好きだろ?」
ポムに褒められて少し嬉しかったりする。
散々泳ぎまくって、皆が海の拠点でダラダラし始めたのは3時回る頃。
「オヤツを食べ過ぎるとバーベキューが入らないぞ」
「うん、それじゃ冷たいプリンにする」
杏とポセイドンの会話にホッコリしつつ、俺はかき氷。
「くあぁぁぁ頭痛えぇぇぇ!」
かき氷を食う時は毎回やるぞ。これがかき氷の俺なりの楽しみ方だから。
リスティールさんもロナルディもかき氷、ポセイドンはバニラアイス、杏は冷たいプリンなのに、ポムは冷たい刺身……
「なあ、なんで刺身なんか食ってんだよ、オヤツの時間だろ?」
「キンキンに冷やしたお刺身はオヤツなの!」
それは同感出来ない。どうせならちゅー……
「チュールとか冷やしてみたら?」
「それだ! 爆釣ナイス!」
普段だったら昼間は猫に戻らないし、杏がある程度回復してから猫型になる事も無かったポムが、体調2mくらいのデカい白猫になってコンテナハウスに走ってった……
んでしばらくして……
「ポセどん。これをシャーベットにして欲しいにゃ!」
液状オヤツをひたひたになるまで入れたボールをポセイドンに渡すポム……
「なあ、杏がびっくりしてんぞ」
「大丈夫にゃ。ちゃんと杏は知ってるにゃ」
首を縦に振ってる杏だけど……
ふらふらとポムに近付いて行って……
「もふもふやー」
「杏! 暑いから、暑いから抱き着いちゃダメにゃ。汗でポムの毛が濡れてお団子になってしまうにゃ!」
ガッシリとポムの体に顔を埋めちゃった。
結局、1度シャワー浴びに行こうってなって皆で露天風呂まで来た。
ちょっとだけ気になったからロナルディに聞いてみよう。
「ロナルディのトコは子供って作らないのか?」
疑問だったんだよな。どぅてるんだろ?
「駆け落ちして来る前に神様と約束しまして、制限を付けて貰ったんです。両方の両親に認められるまで、そういう行為は出来ないように性欲を全て消して貰ってます」
え……
「だから不能なんですよ僕は。地元に帰って神様に制限を解いて貰うか両親に認められるまでですけどね」
「なんでまた? 辛く無いんか?」
「そんなの全然です。そばに居て、楽しいし落ち着くし、ドキドキするし、そっちの方が大切ですから」
俺とロナルディの会話を聞いてるポセイドンだけど、ロナルディの話に付け加えるように、補足だがなって……
「爆釣、お前も地獄に来てから股間が元気になった事はあるか? 無いだろ? お前の性欲も全て抑え込まれているんだぞ」
「なんだと……歳とったなって悩んでたのに……」
朝元気にならなくて悩んでたんだ……
「お前がポムちゃんに手を出したら、ここだけじゃない、全世界が崩壊の危機に陥るんだぞ。前に言っただろ? 猫を溺愛してる上司って話を」
なんか聞いた気がする……
「恋愛は自由だがな、そういう行為はダメだぞ。ポムちゃんに何かあったらブチ切れたポムちゃんの上司が襲いかかって来る。アレは俺でも止めるのは無理だ」
「いや、それなら良いや。理由が分かっただけで十分。俺から何かする事なんて無いよ、それは絶対にな」
今の関係で良いや……
読んで貰えて感謝です。




