伊勢海老祭り
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本日の食材、巨大アワビ、伊勢海老、ウニ、サザエ、その他魚と来れば……寿司? ポセイドンの本気の板前姿は久々だな。
ウニの殻を割る作業はリスティールさんがやってくれてるし、ロナルディは野菜の収穫、ポムは伊勢海老の殻を外してくれてる。
んで俺は小麦粉とパン粉と卵と油、と来ればエビフライだよ。
「ヤバいな伊勢海老のエビフライとか、でかくね?」
「本車海老も何匹か確保してあるから、そっちも揚げてくれ」
100個くらい売らずに残したウニは殻を全部剥かれて綺麗に皿に乗せられて、伊勢海老の殻は砕いてソースにするらしく、ポセイドンが煮込んでる。
「1つ1つの量は少な目で、種類を増やすぞ」
「パスタと寿司ってさ……太るんじゃね?」
ウニのクリームパスタ、ボイルした伊勢海老に伊勢海老の殻やミソを使ったソースをかけたの、伊勢海老とデカい車海老のエビフライ、茹でたサザエ、煮アワビ……
「贅沢な時間と言う物を実感させてやろうじゃないか」
「ミニ海鮮丼も作りたいけど、酢飯、パスタ、丼……杏が食べ切れ無いだろ?」
「だから1つ1つの量は少な目なんだ」だとよ。
全部の料理が完成したのは6時頃、お昼寝してた杏を連れてポムとリスティールさんは先にお風呂に入って来たらしい。
「テーブルに並べきれないんだけど……」
完成した料理を運ぶポムやリスティールさんから苦情が来た。
「嬉しそうな顔しながら文句言うなよ」
デザートのフルーツゼリーを冷蔵庫に入れてたら、なんか見慣れない物が冷蔵庫の中に……
「舟盛りとか……アホか……」
そんなに大きく無い舟だけど、立派な舟盛りが冷蔵庫のど真ん中に鎮座してた。
「1週間しっかり勉強したご褒美に、皆で元気に遊んで、沢山昼寝して、美味いものを食って、1日楽しく過ごせたら、それは最高の日曜日だろ?」
日曜日……
「ああ、今日は日曜だったのか。曜日の感覚が全く無かったよ」
スマホを見て曜日を確認。日付とか全く気にしてなかったな。
「さあ、飯にするぞ」「お腹すきました」
だな。
杏とポムと俺とポセイドンは毎回食べる前にいただきますだけど、ロナルディとリスティールさんは祈りなんだよ、だけど今日は2人も一緒にいただきます。
「杏、どれが食べたい?」
全員が杏に注目。だってさ……テーブルの上の料理は、それぞれが好きな物だから。どれを選ぶか内心ドキドキなんだよ。
「エビ……フライ……食べていいですか?」
「うっし! 杏、どっちのエビフライがいい? 大きいの? 小さいの?」
俺の作ったエビフライを最初に選んでくれた事が、めちゃくちゃ嬉しい。心の中でガッツポーズ。
「両方」「杏、もっと大きな声で言っていいんですよ」
リスティールさんの優しく掛けられた言葉に反応した杏が。
「大きいのも小さいのも」
なんて大きな声で言うもんだから、取り皿に伊勢海老も車海老も乗せて、タルタルソースを掛けて渡した。
「ぐぬぬ、エビフライは強いな……」
「デザートも並べていたらフルーツゼリーが最強のはず」
ポセイドンもロナルディも自分の作った料理が最初に選ばれ無かった事が悔しそうだけど、子供だよ? 6歳児が煮アワビとか最初に選んだらビビるよ、渋い好みだなってさ。
それに、サラダとか最初に選ぶ子供はいないだろ。
小さいナイフとフォークを使って伊勢海老フライを切り分けて口に運ぶ杏なんだけど、切ってる時から目がキラキラしてて、口に運んで何回か噛んだら。
「ん〜ん〜ん〜、美味しい!」
その後は、全種類少しずつ食べて、どれを食べても「美味しい」って笑顔になって、最後に出て来たフルーツゼリーをちょっとしか食べられなくて、残念そうな顔をしながら「明日の朝ごはんに食べる」なんて言いながらラップして冷蔵庫に残してんの。
食べ終わった後の後片付けをするのに皿を運んでくれたり、残った物にラップを掛けたり、色々とお手伝いをしてくれるようになった杏……
「お手伝いありがとう。残りはやっとくから、ポムやリスティールさんと一緒にテレビでも見てな」
「うんっ!」って言って部屋に戻ってく姿を見ながら、俺もポセイドンもロナルディもカメラを起動しっ放し。
「笑ったな」「いい笑顔でしたね」
「やっと心の殻が破れて来たんだな、本当に良かった」
3人で明日の朝飯用に刺身をヅケにしたり、米研いで炊飯器の予約したり、余った料理を冷凍したりしてて、手は動かしてるけど、3人とも嬉しくて少し涙目。
「梅雨入り前に笑顔を取り戻せたのはお前達のおかげだ」
ポセイドンの奴、アホな事言ってんな。
「何言ってんだよ、ポセイどんが連れて来てくれたからだろ。お前達じゃなくて、お前も含めるんだよ」
「もちろん杏ちゃんも含めて、全員で取り戻せた笑顔ですよ、ポセイドン様」
任せろって言ったけど最初は不安だった。
子育てなんかした事無いし女の子だし、結局の所、ポムとリスティールさんが居てくれたからってのが大きいし。
「少し日本に行ってくる……」なんて呟きながら出て行ったポセイドンは、たぶん泣いてたと思う。
「風呂行くか」「ですね」
ロナルディと2人で湯船に浸かって雑談中。
「ポセイどんってさ、やけに自信ありげな時と、ひよってる時のギャップが酷くね?」
「海に関する事や、水に関する事は万能なのでしょうが、それ以外だと少し自信なさげですね」
あ〜そっか。海の神様なんだもんな。
「まっ、飯作るのはすげえ上手いけどな」
「爆釣さん……ポセイドン様を料理人扱いはどうかと……」
む! めんどくさいけど……
「そろそろさ、その爆釣さんっての止めね? 同い歳なんだし呼び捨てで良いよ」
ずっと気になってたんだよ。
「地獄じゃ身分なんて無いし、神様だって居るけど、あんな感じの2人だし。テキトーで良いよ、楽しくやろうぜ」
「敬称を付けるのは癖なんですよ、あんまり気にしないで下さい」
「ふむ。それなら良いか、無理して変えることでも無いし」
気楽にやろうぜって奴だな。
「んでさ、どうよ? 地獄の生活は」
楽しんでくれてたら良いけどな。そういや教育してくれとか言われてたけど……した事無い気がする。
「故郷でさせて貰えなかった事で毎日が忙しくて目が回りそうですけど、生きてるって感じがしますね」
「ん、それなら良かった。無理はしないようにな」
俺も含めてな。
家に帰って来たら、リスティールさんは既に居なくて、杏はパジャマに着替えても無くて、ポムは猫に戻って無くて、2人でベッドで仰向けに爆睡中。
「全く……まだ朝方は肌寒いから風邪引くぞ……」
ポムと杏に布団を掛けて、俺は床で寝た。
布団を掛ける時に見えた、上下するポムの胸を思い出して、何故か悶々してたけど、疲れてたのかいつの間にか寝てた。
煩悩退散煩悩退散。
「お〜い。味噌汁出来たから運んでくれー」
今日の朝飯は超贅沢。朝から伊勢海老の味噌汁と伊勢海老のエビマヨ。もちろん杏は昨日残してたフルーツゼリーも。
「今日は何をしたい?」
「皆で遊びたい!」
ロナルディの作ったフルーツゼリーを頬張りながら、元気いっぱい答えてくれたから。
「んじゃ頑張って午前中は仕事してくっかな」
そう答えて海に向かった。
因みに今日の昼飯は車海老と伊勢海老の天むす。
ヅケにした刺身は、全部ポムのお腹の中。
「あっ、10時のオヤツ持って来るの忘れてた……」
ここ数日、午前中は真面目に仕事してて、10時の休憩が楽しみの1つだったのにな……
「うし! 今日はボブでも釣って唐揚げにしてやんぞ」
もうすぐ梅雨入り、雨だと外に出たくないから、今のうちに頑張っとこ。
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