素潜り
。
大人も子供も楽しめて、美味しくて、売り上げになる物。
そんなのが無いかポセイドンに相談したんだけど「全員分の水中眼鏡を買っとけ」としか言われなかった。
んで翌日、ポセイドンから言われて水中眼鏡を買って政島の南東側の海岸に朝早くから5人で来てみた。
杏はまだ眠いみたいで、ポムに抱かれてぐずってる。
ぐずってる杏を見てたら、子供っぽいな……って来たばっかりの杏を思い出してほろっとしてしまう。
「準備はしとくって言ってたけど、アレって何の準備してんだろ?」
「ポセイドン様ですから、何か素晴らしいお考えがあるかと思うのですが」
「ポセイドン様ですから、何か素晴らしいお考えが突拍子も無い事になる事もあるかと……」
俺とロナルディとリスティールさんで、色々荷物を持って移動中、車は4人乗りだからな……道路交通法って……
「着いたら最初に朝ごはんね」「わーってるよ」
まだ朝飯すら食ってない朝の5時半、もう日は登って明るくなってる。
だから見えてるんだよ、ポセイドンが準備したやつが……
「お〜い! こっちだこっちだ」
アロハとハーパンにサングラスを掛けたポセイドンが、木造平屋の海の家っぽい建物の前で、ブンブンブンブン手を振ってる……
近付いて行けば、看板があって【海の拠点】なんて書いてあった。
「なんてもの作ってんだ……俺達しか居ないのに営業してどうすんだよ?」
テーブル席が5ヶ所、カウンターにジュースサーバーと焼き鉄板が据え付けてある、小さめの海の家……
「ふふふっ、今日の日中は31℃まで気温が上がる。海水温も暖流の影響で26℃ある。こんな日は海水浴に決まりだろ?」
「ポセどん、とりあえず朝ご飯。あと、杏が同じ高さになる様に子供用の椅子」
ポセイドンにツッコミを入れる隙もなく、ポムが言ったことを今は最優先で。だってお腹減ったんだもん。
「杏、何食べたい? 好きな物を注文して良いんだよ」
なんでポムがそんな事を杏に聞いてるのかと言うと……
「書いてあるメニュー全部出せるのかよ?」
カウンターの前に、海の家で良く見れるお品書き、デカい紙にデカデカとメニューが1つ書いてあって、貼りまくってあるアレが並んでる。
色付きの画用紙にカラフルに縁取られたメニュー達が。
「なんでも食べていいの?」
そんな事を聞いて来る杏にリスティールさんが
「朝から焼き肉はやめましょうね。あと、甘いモノばっかりじゃダメですよ」
諭すように焼き肉はダメって言うけど、俺は焼き肉でも構わんよ?
因みに、メニューは全部平仮名で書いてあるから杏でも読めるし大丈夫、勉強の成果だな。
「ハンバーガーセットでもいい?」
まだ少し遠慮してる杏だけど、額にアクションカムを貼り付けてるポセイドンがデカい声で……
「あいよっ! ハンバーガーセットいっちょ、少々お待ちを!」
なんて元気よく答えたら、恥ずかしそうにしてる。
ԅ(//́Д/̀/ԅ)ハァハァ♡
↑
杏を見て悶えてるロナルディの表情がヤバい……イケメン崩壊だな。
昨晩ロナルディやリスティールさんと一緒に選んだ子供服だけど、水着までは買ってなかったから急遽購入。
すっげー可愛いパレオの着いたピンクのレオタードな。
でも、水中眼鏡は無し。杏に仕事はさせません。
「ポム〜、ちゃんと杏の事見といてくれよー」
「は〜い。みんな頑張ってね〜」
ポムと杏は波打ち際で遊んでる。2人とも浮き輪を付けて。
俺達4人は素潜りだな。
この辺りの海は砂浜と岩場がごっちゃになってて、探せば色々食える奴が居る。
そんで今日の目的はコイツら……
「伊勢海老取ったどー!」「おっきいウニです!」
「こっちにはサザエが沢山居ますよー」
そして極めつけは……
「ハッハッハ。見てみろ、デカいアワビだ」
ロビンのマスクを掲げて水から出て来るアト〇ンティスっぽくポセイドンが水深30mくらいを素潜りで潜って行って捕獲してくれてる。
アワビは生息数が少ないらしく、殻が30cmくらいあるのを2個だけ。もちろん1個は食べるよ。
ポセイドンが準備しててくれた浮きカゴの中に、サザエ、ウニ、伊勢海老がどんどん溜まっていく。
ポムと杏が何してるか気になったから見てみれば、ビーチパラソルを立てたり、竈を準備してたり、海の拠点からジュースを持って来てくれてたりする。
おぼんにコップを6つ乗せて、こぼさないように運ぶ杏を見てたら、ロナルディが写真撮りまくってた……
「ロナルディ、サボんなー! カメラはポムに預けろよ」
リスティールさんも、ポセイドンも真面目に仕事してんだ……ぞ…………
「ふざけんな、俺だけじゃねえか!」
ポセイドンなんか砂浜に寝そべって、下方向からのアングルで杏を撮影してるし、リスティールさんは竈に火を起こして、網と鉄板を準備してる……
浮きカゴもいっぱいになったし、俺も1度休憩しよっかな。
「昼飯どうすんだ、サザエと伊勢海老でも焼くか?」
タオルでゴシゴシ頭を拭きながら聞いてみた。
「昼はお肉のバーベキュー。夜は……伊勢海老……」
昼間っからバーベキューしながらビール。贅沢な時間というか、地獄ではコレが普通。
「昼から何する?」
売り上げもそこそこあるし、昼から遊んでも構わないかな。
「暑いから、涼しくなれる事が良いですね」
皆で汗だくになりながら、焼けた肉を食いつつ相談してんだけど。
「こんな物を買ってみたぞ。やるだろ?」
マジか…………水鉄砲……
「杏、これは電動で撃てる1番威力の強い奴だ。水のボトルは背負えるように荷紐を付けといた、爆釣をボコボコにしてやるぞ」
大人は拳銃タイプの手動の水鉄砲、ハンデがやばくね?
「何言ってんの、男女に別れてチームを組むんだから、ポセどんはあっち」
ざまあみろww
水鉄砲で遊び始めてビックリしたのは、リスティールさんが砂を操って壁を作ったり、ポムが杏を肩車して壁の上を縦横無尽に駆け回ったり、杏がヤバい威力の水鉄砲で男3人を狙撃しまくったり……
「ロナルディ、植物で盾を作れないのかよ?」
「無理です、ワカメじゃ無理です。僕は水棲植物だと操作出来ないんです」
杏の水鉄砲からは、20mくらい水が飛んでくる。
俺達のは射程2mくらい……
「クソっ! 水壁を張ろうとしても砂礫で水分を奪われて無力化されてしまう!」
俺もロナルディもポセイドンも役立たずで、女子チームの圧勝な……
「うぇぇぇぇぇ……呑んだ後走り回ったら気持ち悪い」
「世界樹をどうぞ……」
「俺の奥の手が、あんな簡単に返されるとは……」
ティッシュを旗にしたヤツを撃ち抜いて、ティッシュを破壊したら勝利ってルールにしてたから、男チームはボロ負け。武器の性能だけじゃ無くて、相性が悪過ぎる。
リスティールさんの砂操作はヤバい。何回落とし穴に落ちて、何回壁にぶつかったか……
「ィェーィ! 杏、ナイス狙撃」
「私の祖母程に狙撃の才能があるのかも知れませんね」
「えへへ」
リスティールさんの祖母は弓を扱う事にかけてはとんでもない人らしい、飛んでる鳥を撃ち抜くのなんて普通なんだと……
「僕の両親にも負けない狙撃術ですね、杏には遠距離攻撃の適正があるのかもですね」
そんなリスティールさんの祖母とほぼ同レベルの弓の使い手らしいロナルディの両親……
「ダメ! そんな事を教えちゃダメ!」
将来何にさせるつもりだ! 太眉の東郷さんにするつもりかよ!
「そうだぞロナルディ、リスティール。日本では、狙撃が上手くても飯は食えん」
よっぽど特殊な仕事をしない限り役に立たんよな。
2時半くらいから後片付け。杏はビーチパラソルの下でお昼寝中。
「片付け終わったら、風呂行って夕飯の準備でもするか」
病的な青白さだったのに、だいぶ健康的に日焼けしてきたな……
「夜ご飯はエビフライね」
実を言うと、水着姿のポムを全く直視する事が出来なくて「伊勢海老のエビフライか、了解」なんて言いながら、チラ見してみた。
セクシー女優にも負けないか……
俺の倍は食べるのに、腹周りなんか細過ぎだろ……
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