【第一幕】-2章-沈黙の大街
…ーー
「本当に、ここが私たちの目指していた街なのよね…?」
深い森を歩き続けて辿り着いた"街"なるものは私の思っていたよりも活気がなく、むしろ人っ子一人いなかったのです。
「最後に来た時まではここはお店とか色々やってて人がいっぱい溢れかえってたんだけど…」
「…アリス、最後に街に来たのはいつ?」
「え、昨日の朝買い出しに来た時だけど…僕たちはあの森の中の小さな家に住んでるからここにはよく来るんだ。
でもこんなに活気がない日なんて僕の記憶の中では1日たりともなかったよ。どうして?」
……胸騒ぎがする。
私がここに迷い込んだのは今日。アリスの話を聞く限りこの街に人がいなくなったのも……今日。
「アリス、これって私が関係してるんじゃ…」
胸にぎゅっと重い感覚がおしよせてくると、息が上がる。
「お、落ち着いてリリィ!この街に人がいなくなったのとリリィは関係あるとは限らないだろう?」
「アリスよく考えて。今まで活気のあった街に人が一人もいなくなるなんて、そんな奇怪なことが起こるはずがないわ。それが起こったのは今日、私がここに来たのも今日……あなたでもここまで言えばわかるでしょう?」
「確かに……でもねえリリィ、そこはかとなく僕のことをバカにしてない?」
「すべては彼女の言う通りだよ。」
会話が止まると、少し低く落ち着いた女性の声が聞こえた。
「……あなたは。」
「ああ、申し遅れたね。あたしは玉藻前……この名前は嫌いだから、あたしのことは"たまちゃん"と呼んでくれ」
少し低く落ち着いた声の主は、金色の綺麗な毛並みをした大人の狐だった。




