【第一幕】-1章-追憶の迷い森
森の中で目覚めた私は戸惑いました。
「あれ、ここは…私は、わた、くしは…………」
言葉は話せるのに、私についての記憶がぽっかりと抜け落ちて、自分の存在すらも疑ってしまいそうなくらいに私自身が分からなかったのです。
探さなくては。私を探さなくてはならない。
しかしどうすれば良いのかしら?どこに行けば良いのかしら?闇雲に歩いても体力だけがすり減るばかりよ。
>お姉ちゃん、困り事?<
<お姉様、お困り事ですか?>
そこに、5つくらいでしょうか。双子の姉妹が現れたのです。
「どこに行けば良いのか分からないの。私には記憶が無いから、探しに行かなくてはいけないの」
双子は顔を見合わせ、私に目指すべき場所を教えてくれました。しかしお話になりません。
>お姉ちゃん、それならば町に行くといいよ。あちらの方角に進めばたどり着けるわ<
<いいえ、あちらの方角に進めば森の奥に進むだけよ。街はこちらの方角よ>
双子は、全く逆の意見を言うのでした。
>違うよ、こちらが森の奥に進む方角よ。街はあちらの方角にあるんだよ<
<いいえ、街はこちらの方角よ>
>お姉ちゃんはどう思う?<
<お姉様はどう思われますか?>
言い合いをしては、私に意思を託すのでした。
「わ、私は……」
その時、どこからか男の子の怒鳴り声が聞こえてきました。
「こらー!お客さんを困らせちゃだめだろ!双子、君たちはいつもそうじゃないか!喧嘩ばかりして拉致あかない!」
後ろを振り向くと、綺麗な緑髪の男の子が仁王立ちしていました。
>お兄ちゃんに怒られちゃった<
<お兄様に怒られてしまったわ>
そう言うと双子はしくしく泣きだしました。そんな双子をよそに、少年が話しかけてきました。
「双子の姉妹がごめんね。僕はアリス!君はなんて言うの?」
「私、名前が思い出せないから名乗れないの。ごめんなさい」
「記憶が無いんだ?そっか……じゃあリリィって呼んでいい?その方が分かりやすいだろ?」
無邪気に笑い、手を差し伸べてくれました。
「うん、いいわ。それじゃあ……私はリリィよ。よろしくお願いしますね」
「うん!よろしく!」
>私も一緒に行く!<
<だめよ、私達はこの森の番人として役目を果たさなければならないわ>
「留守番をよろしくね双子。じゃあリリィ、一緒に行こうか!」
「ええ、案内よろしくね」
これが、私探しの旅の起点でした。




