7.夜に癒しを
強かった光は広がりはそのままに徐々に柔らかく変化し私の願っていたモノが出てきた。
それは歌と共に始まる。
この国のいわゆる絶景スポットを背景にし歌う姿が写しだされる。いや、ホログラム的なものなのかな。魔術とかわからないから仕組みは不明。
そして当初希望していたのが、四季がある国と聞いて全ての季節をいれたかった。けれど実際は、最近の春の映像のみ。
でも、とても美しかった。
花が咲き乱れる中には顔をぼやかした騎士さん達が立体的に動き、同時に流れてくるアップテンポの曲は昼間の騎士さん達が歌っている。
「…凄い」
ジュリアさんが呟いたまま映像に釘付けになっているのをみて、まだ確信は持てないけれど、なんとなくいける気がしてきて。でも、まだこれからが本番だ。
動く映像と歌が終わり次に写し出されたのは。
「これ、お手伝いをさせて頂いた」
ジュリアさんの瞳はひらきっぱなしだ。
「はい。このシーンの線の箇所はジュリアさんに書いてもらいました」
「このような形になるなんて」
特異な力が全くない私が提案した事。
それは娯楽だ。
正直閃いたものの無理かと思った。だけど素晴らしい物をみつけてしまった。
それが、この今テーブルの上にあるクリスタルのような石。これは一家に一個国から支給されている。
この石はただ綺麗なだけではなく、普段緊急の場合や何かの式典など重要な事がある際に皆に伝わるようにと一家に一個ある特別な物で、普段は棚に置かれていたりと出番はないらしい。
私がそれを聞いて思ったのは。もったいない!これだ。これを活用しようと決めた。
そこから計画は広がった。
本当は家でみていたアニメのような、あそこまでいかなくてもいいから動くものとして作りたかった。
結果は、はい、無理です。
でも捻って考えたのが、オープニングとエンディングはホログラム的な立体の映像をいれ、特に始まりは、国内の場所の美しさを重視した。
次のメインは手書きの絵、漫画だ。ただ、中学の時にかじったくらいの私には限界があり、この国で今一番人気だという絵描きさんに協力を求めた。なのでどちらかというと紙芝居に近い。内容も口で物語として伝えられている馴染みやすいものを選んだ。
まあ、少しかえたけれど。
そして、一番売りなのは、紙芝居と違って現役騎士様がそれぞれのキャラの声を担当している。
この方達の声は半端ない。通行人Aのような私がいうのもなんだが、顔もよいというかあらゆる世代の女子を狙った厳選した方々である。
「この声」
「気づきました?」
流石ジュリアさん。
エンディングは、月明かり、もとい土星なようなものが光る夜の花びらが散るなか歌うグランさんの映像。実際は影だけで本人とはわからない。少し悲しい歌詞が低くそれでいて甘い声で部屋が満たされていき。映像が暗くなると共に余韻を残し消えていった。
「私にしては頑張った。皆さんにも無理して時間を作ってもらって」
ランプの灯りがジュリアさんの手で戻されていったけど、まだ映画を観終わり外に出た時のような気持ちのまま。
でも現実が迫ってくる。
どうだったのかな?
大丈夫かな?
達成感はあるけれど、不安な気持ちが増していき。
「ミライ様、グラン様がいらしております」
ジュリアちゃんが、こんな遅くにと小さく呟いた。グランさんの話は、今映し出された話に間違いない。
聞きたいけど聞きたくない。そんなせめぎあう気持ちの中。
「どうされますか?」
ジュリアさんの言葉に。
「…会います」
気づいたら答えていた。
そしてまたこの後、私はやらかす事になる。