4.もしかして
「今日は安静にして下さいね」
「はい…」
昨日森へ連れていってもらった帰り道に雨に降られて濡れ風邪をひき熱もでてしまった。
「毎日いたれりつくせりの生活で何にもしてないのに、ちょっと濡れたくらいで風邪って」
そんな病弱キャラじゃないのに。
小説のように聖女様を喚んだわけでもなく、勝手にこの世界に来た私は、城のしかもこんな豪華な部屋に住まわさせて頂きながらいまだに特技ゼロ。
「ただの英文科の学生がそもそも無理な話だよ」
異世界から来た人は、特異な力を必ず持っているって聞いたから、魔法が使えるのかもと友達が見たら即病院に行けと言われるくらいに身ぶりてぶりで呪文を深夜に呟いてみたりもした。
「気持ちが弱ってるのかな」
飲ませてもらった薬のせいか、眠くなってきた。そとから聞こえる、今は、本降りの雨の音も眠気が増す。
「…帰りたいな」
雷の音で自分の言葉は消えていった。
* ~ * ~ *
歌が聴こえる。
ちょっと寂しい歌詞なのかな。それにしても、いい声。なんか前にも聴いた事がある気がする。うつらうつらとしていたら心地よい歌は終わってしまったようで。
「困ったな」
そんな小さな呟きと共におでこにひんやりとした感覚。
「…モナさん?」
重くてなかなか開かない瞼を頑張ってひらけば。
「はい。起こしてしまいましたね」
やっぱりそうだった。
「もう少し早く帰っていれば。すみませんでした」
「えっ、モナさんのせいじゃないです」
綺麗な花や鳥、丘から眺めれば少し離れた場所に見えた綺麗な街。
それらは楽しかった反面、違う場所にいるんだとつきつけられたけれど。心配そうなモナさんにお願いした。
「おねだりしてもよいですか?」
「え?」
「聴いていて気持ちがよいので、また寝るまで少しの間歌ってもらえますか?」
人がよさそうなモナさんは、案の定一瞬戸惑ったあと歌ってくれた。
そして次の日、私は閃いたのだ。
「おはようございます。具合はどう…」
「ジュリアさん! 騎士さん達とお話ってできますか?! あ、先に王様、陛下様でいいのかな、会えますか?! 許可もらいたい事があります!」
──私に出来る事、見つけたかも。