26.未来とグランの言葉遊び
「何を話しましょうか。質問形式の遊びはいかがですか? ハンデをつけて俺には質問二つに対しミライが答えるのは一つ。どうですか?」
私が話すの得意じゃないのがばれているようだ。上手いというか、精神年齢が上なんだよなぁ。
「いいですよ」
ジュリアさんが去り穏やかな空気をそのままにしたくて乗ることにした。
「では、ミライからにしますか? 二つだけ言って下さい」
うーん。貴重な質問タイムなのに気になる事が。もったいないけど聞いてしまえ!
「何故私が体調が悪いと…その…内容まで知っているのか。 あとまだ疲れているように見えて。昨日魔力を使いすぎたせいですよね? あっ今も使わせてしまっていてごめんなさい」
あれ? なんか微妙に間が空いているような。別に変な質問してないよね。
「お人好しですね。そういう所がとても惹かれるのですが」
「え?! どこにそんな要素ありました?」
冗談かと思えば、からかう気配はないみたいだ。
「せっかくの質問なのに相手を気遣う事に使うなんて俺にはできない」
よくわからない。気になる事からと思ったんだけど。
「俺の体調は大丈夫ですよ。一つ目のミライについては倒れて運ばれた際に一度目を覚ましてジュリアに伝えたようですが。覚えていないのですか?」
「全く。とにかく腹痛で」
というかお月さま説明をしたのがジュリアさんでよかった!副団長とかだったら! 暫あそこには行かれない。 でもでも、やっぱりなんか男の人にグラン君に知られているのが恥ずかしい。しかも膝の上に抱えられてる。なんだかまた顔がほてる。
リップ音が鳴った
「な、何を」
「いえ。可愛いなぁと」
グラン君がぎゅっと密着してきて恐らく頭の上にキスをしてきた。無理だ!慌てる私になにやら悩ましいとでもいうようなため息まで頂く。これは幻だ。私にそんな行為をする人が発生するなんて夢に違いない! 声に出されてないけど笑われた。体が揺れてるのわかりますから。
「では次は俺ですね」
「はい」
グラン君は、予想外のパターンが多いからどきどきする。
「ミライの家族構成は?」
へ?
「そんな事?」
「婚約者なのにそんな事すら知らないので。教えて下さい。少し前から色々知りたいと思っていました。貴方の事を」
ぐはぁ。
サークル仲間の男子がそんな砂はいたら飛び蹴りかキレッキレのサーブを顔面にお見舞いしている!
さっきの頭にチューとかもそうだけど。
甘いよ。甘ったるい!
服装や時代風景、とくにこのイケメンだから許される台詞だろう。
見目麗しい人物のガン見は毒だと学習したので、ほんの少し目線だけあげてみたら、首を微かに傾げている。グラン君こそ可愛いよ! そして何を勘違いしたのか、気遣われる私。
「言いたくない事は無理に答えなくていいですよ」
「あっ、話したくないとかじゃないですよ。四人暮らしで。父、母、あと三つ下の弟」
これ、言った方が良いのかな。でもなんか隠しているみたいで嫌だし。
「えっと、父親は、本当のお父さんじゃなくて。私が19歳の時に親が再婚したの」
お父さんじゃなくてお義父さんになるのか。でもなんか確かに血は繋がってないけど、初めて会った食事の時から穏やかかな出来た人だった。私と弟に無理に距離をつめる人ではなく、一定のパーソナル空間というか。
人として尊重してくれた。
そんなお父さんに最初は敵意むき出しの弟もわりと早い段階で仲良くなっていき今では連休の時など二人で釣りやらゴルフやら出掛けているし、家の庭でたまにバーベキュー的な事もしたり。
「仲がよいのですね」
「うん。他の家族とは距離感が違うかもしれないけれど。私は、お義父さんじゃなくてお父さんと呼びたいくらいは尊敬してる」
男前なお母さんにぴったりの穏やかな人だ。
この後も好きな色は? 好きな食べ物は?など質問しあい、何回目だろうか。それは唐突にきた。
「ミライの好きな趣味はなんですか? 体を動かすのは嫌いではないですよね。確か最初に此方に来た時もラケット? 不思議な形の物が道具だと言ってましたし」
不意打ちだった。
好きな趣味。
「ミライ?」
「一番好きなのはテニス」
だけど。
「一番嫌いなのもテニス」
「ミライ、無理に話さなくても」
チャンスなのかな。この世界の人は、私を知らない。ここでは、ただの「異世界人」だ。
グラン君ならドロドロしたこの気持ちを吐き出しても大丈夫かな。もしかしたら嫌われちゃうかな。
「お父さんとお母さんが、仲が悪くなったのは、離婚した原因は私なの」
弟から一樹からお父さんを奪ったのは私だ。




