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2.飲まれてみれば

気持ち悪い。喉渇いた。

水、水が欲しい。


そう思ったら、水が口に入ってきた。

ゆっくりと。


ありがとう。

お礼を言いたかったのに言葉にならず思うだけで消えていった。


歌が聞こえる。それは囁くようなとても小さな声でなんの歌かはわからないけれど心地好くて。目を開けなくちゃと思いながら、もう何度目になるのか意識が深く沈んだ。



人の気配とラベンダーのような匂いがする。喉がカラカラだ。


「ケホッ」


咳が出て苦しくてほんの少し身体を起こせば。


「お目覚めになりましたか?」


可愛い女の子が気遣うように近づいてきてくれて体をそっと支えてくれた。


「あ、ありがとうございます」

「こちらを」


水の入ったグラスをさっと渡されたので、口の中が渇ききっていた私は迷いなくイッキ飲みをし、むせた。


「うっ」

「大丈夫ですか?!」

「す、すみません」


背中をさすってくれて、申し訳なくなる。

手がかかりすみません。そして、女の子を今度こそちゃんと見た。金色の髪は細いリボンで一つにまとめられて白のレースエプロンに紺色の長い丈ワンピース。大きな明るい空色の目をしたとっても可愛い子だ。


ただ、ここではたと止まった。何でメイドさんが? 何かのイベント? あれ、なんかつい最近もそんなような事が。


メイド姿の心配そうな女の子の顔越しに目をむければ、なにやら立派な家具や大きな窓で、その窓の外に見えたのは、空に浮いている土星のような物。


おかしい。


決してお酒に飲まれてなるような頭痛とは違う感覚。なにやら心臓も動きが速いような。突然ドアを軽くノックする音がしてメイドさんが奥に消えなにやら言い争いが聞こえる。


「入っても?」

「いけません! まだお着替えもされておりませんので」

「んー、でも目覚めはした?」

「…はい」

「それはよかった! とりあえず確認したいから悪いけど入るね」

「なりません! 殿下!」


足音なんてなく、いきなり扉が開かれ1人の男性が近づいてきた。その人物は最近みた顔。


「大丈夫? じゃなさそうかな」


いつの間にかベッドの脇にある椅子に座り此方を観察するお兄さんの服は、カッコイイけれど、私が知っているものとは違う。呼吸が、速くなる。


「ヴィセル」


また誰か来た。

今度は、茶色の髪と薄い緑の目の男の人で。服はヴィセルという人と同じ。


「女性の部屋に、それでなくても体調が悪いのにすみません」


同じだけど雰囲気は全く違い柔らかく穏やかだ。目が合うと緑の目が細くなり、もっと優しくなって、慣れなくて思わず目をそらせば、椅子に座っているお兄さんから聞かれた。



「君、名前は?」

「あっ野々村 未来です」

「呼びづらいね」

「野々村です」


お兄さんは、ノノムラと何度か呟き練習した後。


「俺はヴィセル・ライ・スカイルで後ろのは、グラン・イ・モナ」


訳がわからないけれど、挨拶はしようと口を開きかけて、それは発する事はなかった。そのお兄さんの言葉によって。



「ノノムラ、君はこの国に落ちてきた。そして君は帰れない」


お兄さんが言い終わると同時に椅子から消えた。正確には後ろにいた男の人、モナさんが足で椅子ごとふっ飛ばしたから。


私は、速すぎてその時は何が起きたかが、わからなかった。それどころでなかったのだ。


"帰れない"


私は、お酒を飲んでいただけ。

飲まれただけだ。


──何が起こった?


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