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捕まり癒やされし異世界  作者: 波間柏ひかた


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11.未来、壁ドンの怖さを知る

「では、必ず此方の扉に戻ってきて下さい」


「はい。ありがとうございます」


此方に再度きて二日目、私は城内にある書庫にきていた。護衛してくれている若い騎士さんに念をおされながら古めかしいドアを開ければ、独特な匂いに包まれる。


「図書館とおんなじだ」


手すり一つとっても重厚な雰囲気だ。だけど図書館と同じ本の匂いにほっとする自分がいた。


「よし。まず奥から見てみよう」


今進めている騎士様ボイスのこれからを具体的に考えなくてはいけないし他のお話も追加したいなぁ。そんな事を考えながら荷物を豪華な椅子の上に置き探検を始めた。



*~*~*


何処に何があるか把握ができないなか、奥まった場所で他と違う本をみつけた。


「なんか暗いから背表紙が読みづらい。これは…」


その本は、厚みは薄く豪華な作りで気になって手をのばせば突如、脇から伸びてきた手が目当ての本をさらっていき。


「夜の教本」


男の人の声が頭のすぐ近くで聞こえた。というか何その怪しい題名は?!


「ふあっ?! とっ」


そして小さな踏み台に乗っていた私は、お決まりのごとくバランスを崩し。


「あ、ありがとうございます」


スパイシーな香りを感じれば片腕で抱え込まれた。なんとか声が震えないようにお礼は言えた。でも、顔も見えない人に背後から抱きしめられているこの状況は辛いよ!


「あのっ、もう大丈夫ですので! ありがとうございました!」


無理矢理体を捻ってみれば。


赤いワインレッドの不揃いな髪に濃い青の目を持つ恐らく私より年下であろう整いすぎるイケメンが至近距離にいた。


「今から実践するか?」


「えっ?」


そのイケメンの口角があがって体が離れた。ほっとしたのも一瞬で反転させられ両腕をあげられていた。


「忠実に最初から始めよう」


「ちょっ、やめ」


足元にはイケメンの片足が間にいれられ、拘束された手首は更に強く掴まれて強い痛みを感じた。


「グランより良いと思うがな」


何故グランさんの名前が? そんな事を考えられたのは一瞬だった。


耳元で息を吹き込むように囁かれた為反射的に体が動き、そんな様子の私にイケメンがクッと低い笑い声をだした。


「つっ」


「異世界人は感じやすいのか?」


──この人は誰?


見たこともない年下の子に腕を掴まれ首元に顔をうめられた。


捕まれている手首を外したくて強く動かしてみたけど、びくともしない。


「髪は美しいが、特に力を持っていないと聞いていたのだが。どうやら間違いだったようだな」


肌に感じていた湿ったような感覚は移動していく。


嫌だ!

気持ち悪い!


もがきつつも頭の隅で諦めがうまれてきた。奥まった暗いこの場所に気がつく人なんて。


「恐れながら!メディスワーグ様がお呼びです!」


夕方の日の差し込む中、ピンチを救ってくれたのは、この扉から必ず戻るようにと念をおしてきた護衛騎士さんだった。


「お前…誰にものを言ったかわかっているんだろうね」


赤い髪の男は、這うような低い声で若い騎士さんに言った。


どうしよう。


顔が離れてほっとしたけど、やっぱりこの赤い髪の人は地位が高いのかもしれない。


「はっ。存じ上げております!」


そんな圧にも負けず金髪の若い護衛騎士さんは、目をそらさず赤髪に言い切った。


何人か人の声もしてきたから、護衛騎士さんの言葉は本当なのかもしれない。


「お前の顔は覚えた。次はない」


赤髪さんは、そう騎士さんにいい放ち、私に再度目を向け重さをかけられ、耳元で言われた。


「また会おう」


「遠慮します!」


二度と会いたくありません!!


「まあ、そう言うな」


赤髪は体をゆらし笑いながら去っていった。


「大丈夫ですか!?」


完全に赤髪が見えなくなったのを確認して私は、膝から崩れ落ちた。


「つ、これを。今キャル副隊長とグラン様が来ますので」


金髪の護衛さんが、紺色のマントを頭の上からかけてくれた。


手を触れないようにしてくれたのは気のせいじゃないよね。


「ごめんなさい。ううん、ありがとう」


頑張って笑ってみた。


ちょっと声ふるえちゃったけど、気づかれていませんように。


手首をみたら赤く大きな手のあとがついていたので少し上げていた袖をめいいっぱい伸ばし見えないようにしたところで。


「ミライ!」



聞きなれた声にほっとしたけど、伸ばされた手につい身体が不自然に動いてしまった。


ああ。

どうしよう。

顔、上げらんない。

今、上げたら耐えてる涙が端から流れそう。


そう心の中で葛藤してたら。

体が浮いて。


「今は、何も話さなくていいです」


抱きかかえられていた。嗅ぎ慣れたレモンバームのような香り。


ああ。


この人は、グランさんは怖くない。私は、腕の中でやっと力を抜いた。


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