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夏といえば海、妹

作者: チャンドラ

「あっちーな......」

 八月五日。

 今日は真夏日だった。俺は妹と一緒に海に来ていた。

 俺の名前は三浦悠人みうらゆうと。高校二年生であり、身長百六十五センチというやや小柄な体格をしている。

 俺は現在、夏休み中である。帰宅部であるため、特に学校に行く予定もない。

 お天道様がガンガンと俺を照らし続けている。日差しが暑く、俺の肌が黒くなりそうだ。

 まぁ、日焼け止め塗ってるから大丈夫だと思うが。

 俺は他の観光客に目をやった。ビキニのお姉さん達が日光浴を楽しんだり、ビーチボールをプレイしていた。

「おお......」

 ビーチボールをプレイしているお姉さん達は動き回るたびに、たわわな胸をボヨンボヨンと揺らしていた。

 ビキニのお姉さん達を眺めていたら、トントンと何者かに肩を叩かれた。

「お兄ちゃん、どう? 水着似合うかな?」

 俺より一つ下の妹の三浦結菜みうらゆいなが立っていた。結菜は俺より身長が高く百七十センチである。

 今日の結菜はやや長めの金色の髪を束ね、白いビキニを着用し、白い肌を晒していた。

「ああ、結構似合うと思うぞ」

 とりあえず、俺は結菜に対して、そう言ってやった。

「そ、そうかな。ありがとう。えへへへ......」

 結菜は嬉しそうに微笑んだ。

「うおお......すげぇな。超揺れてる......」

 激しく揺らしているお姉さんを俺は穴が開くくらいの勢いで凝視した。

「いて!」

 背中に痛みが走った。

 結菜が口をへの字にし、キックの体勢をしていた。

 こいつ、俺を蹴りやがった。

「いてぇな。何するんだ」

「お兄ちゃんがあっちばっかり見てるから......そんなにあっちが気になるの? そんなに巨乳が好きなの?」

 結菜は仏頂顔で俺が巨乳好きかどうか訊いてきた。

「そりゃあな。哺乳類だしな」

 これぞ、世界の理だろう。

「わ、私だってまだ発展途上だし。ここからもっと戦闘力が上昇するんだもん!」

 結菜は何をトチ狂ったのか自分で胸を揉み、もっとおっぱいが大きくなるアピールをしてきた。

「いや......そもそも、お前の胸が大きくなっても俺には関係ないだろ」

「ええ!?」

 なぜか結菜は心底驚いたような顔してきた。

「俺たち兄妹だぞ」

「お、お兄ちゃん......」

 結菜は少し顔を俯くと、やがて顔を上げ、暗い表情で俺を真顔で見つめた。なんか、怖い。

「な、なんだ?」

「妹だけど、発情してもいいんだよ?」

「いいわけねぇだろ」

 近親相愛はいけないことです。近親相愛はいけないことです。

 大事な事なので二回言いました。

「うぅ......」

 結菜が泣きそうな顔をしてきた。

「いいから。早く海に入ろうぜ。せっかく、来たんだし」

 ラチが開かないと思ったので、俺はそう提案した。

「それもそうだね」

 俺たちはゆっくりと水面に近づいた。やがて、足を水につけた。

「つめたーい!」

 結菜がびっくりしたような顔をしている。気温が高いせいか、海水がとても冷たく感じる。

 俺たちはやがて、海水を全身に浸かった。

「いやー気持ちいいね。お兄ちゃん」

「そうだな」

 海に入ったのはかなり久々だった。確か、最後に入ったのは中学二年の時くらいだったような気がする。

「よーし、泳ぐぞ!」

 結菜はクロールで奥の方まで泳いだ。

 あいつ、泳ぐのうまいな。あいつが所属しているのは文化部なのに、運動神経結構いいんだな。

 感心して器用に泳ぐ結菜を眺めていた。

「お兄ちゃーん! 溺れたから助けて!」

 バシャバシャと水中で結菜がもがき始めた。

「ま、マジか! ちょっと待ってろ!」

 やばい。泳げるだろうか。俺は無我夢中で結菜の元まで泳いだ。ちなみに泳ぎ方は犬かきである。

「結菜、捕まれ!」

「うん!」

 結菜が俺の背中にしがみついた。ガッチリと抱きしめるようにしがみついて来たため、背中に柔らかい感触を感じた。

「か、身体が沈む......お前、太った?」

「そ、そんなことないもん!」

 耳元で結菜が叫んだ。耳が痛い。

 俺は何とか陸地の近くまで泳いだ。

「よし、もう少しだな」

「ねぇ、もう少しその辺、泳がない?」

「お前! もしかして溺れたなんて嘘ついただろ!」

 すると結菜は、

「ピーピピピーピーピー」

 と口笛を吹いた。

「誤魔化すの下手すぎだろ!」

 今時、口笛で誤魔化そうとする人なんてそうそういないぞ。


 すぐさま、俺は砂浜に上がった。

「それにしても暑いな。あーかき氷でも食べたい」

「お兄ちゃん、私買ってこようか?」

 そう提案した結菜だった。

「いいのか?」

「うん。何味がいい?」

「それじゃ、イチゴ味で頼む」

「分かった。それじゃ、言ってくるね」

 結菜はかき氷を買いに行くべく、屋台へと向かった。

 結菜の背中を眺めていた俺だったが、やがて二人の男に絡まれていることに気が付いた。

 あいつ......中々やるじゃねぇか。

 しかし、少し近づいて見てみると結菜は泣きそうな顔をしているため、仕方なく助けに行くことにした。

「ねー、いいじゃん。お嬢ちゃん。俺たちと一緒に遊ぼうぜ」

「そうそう、な? いいだろ?」

 茶髪の男と、剃り込みの入った坊主頭でサングラスをかけた男二人が結菜をナンパしていた。

 どっちの男も高身長だった。

「うう......私はその......」

 結菜は困惑しているようである。あいつ、すごい人見知りだからなぁ。

「あの、すみません」

 すると、二人組の男は俺を睨みつけた。

「ああ? 何だお前?」

「これ、うちの妹なんで返してもらっていいですか?」

 すると、男二人はニヤニヤしだした。

「へぇ? 君のお兄ちゃん、身長低いね?」

「全くだな。ウケるぜ。あははは!」

 バカにしたように笑いこける二人だった。

 すると、

「ギャワン!」

 結菜に金的を食らわされた茶髪の男は倒れ込んだ。悶絶していた。

「な......お前! 何しやがる!」

 剃り込み坊主男は結菜を睨んだ。

「黙れ。今すぐお兄ちゃんに謝れ。さもなければ、貴様も同じ目に合うぞ?」

 恐ろしく低い声で警告した。俺まで怖くなって来たぞ。

 急に雰囲気が変わった結菜にビビったのか剃り込み坊主男の表情が青くなった。

「す、す、すみませんでしたぁ!」

「お、おい待てよ!」

 二人は結菜に恐れをなして逃げ出した。

「ありがとう、お兄ちゃん。助けに来てくれて」

「いや、俺何もしてねぇし」

 ほぼ、結菜の力で撃退していた。

「そんなことより、早くかき氷を買いに行こう!」

「そうだな」

 結局、二人でかき氷を買いに行くことになった。

 俺はイチゴ味のかき氷を、結菜はブルーハワイ味を買った。


 俺たちは適当なところに座り、かき氷を食べた。

「かき氷、冷たくて美味しい!」

 バクバクと結菜はかき氷を食べた。

「うわ! キーンって来た!」

 結菜は目を閉じ、頭を抱えだした。

「だろうな」

 ペースが早いんだよ。そんなにがつくとそりゃそうなるだろう。

 結菜は目を開け、ストローでできたスプーンにかき氷を一口分取り出し、俺の口元に近づけた。

「お兄ちゃん。一口あげるね! あーん!」

 こいつ......ブラコンにもほどがあるだろう。

「ああ、それじゃいただくわ」

 俺は結菜のかき氷を一口もらった。

「お兄ちゃん。お返しに私にもお願い」

 結菜はウィンクして、お願いしてきた。

「わーったよ。ほら」

 俺は自分のかき氷をスプーンですくい、結菜の口元に近づけた。

「それじゃ、貰うね!」

 パクッと俺のかき氷を食べた。

「うん! 美味しいね。えへへへ......」

 結菜がにやけだした。本当、こいつはいろいろと大丈夫か。

「それにしても、夕焼け綺麗だね」

「そうだな」

 ちょうど、夕暮れどきで、太陽が海に沈んでいきそうだった。

 オレンジ色の太陽が海をとても幻想的な景色に仕上げていた。

「ねぇ、お兄ちゃん」

 結菜が俺の肩に寄りかかって来た。

「なんだ?」

「またいつか海に来ようね?」

 結菜は上目遣いでそう言って来た。

「あ、ああ」

 ちょっと、雰囲気に流されてドキッとしてしまった。

 あかんあかん。

 俺はシスコンではない。

 断じてない。

 けど、妹(結菜)と一緒に海に来るのも悪くないな。





















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