バレンタインデー
バレンタインデー。
ばれんたいんでー。
そんなゴミみたいな日、一体どこの誰が作ったんだろう。あんな意味の分からない記念日なんてない方がいいんじゃないだろうか。
女が男にチョコをあげる?ああ、それだけならまだいいさ。だけどそんな風習を作っておきながら、それが根付いた頃に今度は男でなく女同士でチョコをあげあうみたいな流れにしたのが一番理解できない。そんなの期待した俺が馬鹿みたいじゃないか。
いや、俺は期待していない。全国の馬鹿な期待している男の気持ちを代弁してやっただけだ。俺はチョコがほしいわけではなく、男なら誰でもチョコがほしいみたいに思われてしまうような風習を作りあげた現況であるバレンタインデーが気にくわないだけだ。
ともかく、チョコをあげる風習を作ったんだとしたら、ましてバレンタインデーなどという記念日まがいのものにしたんだとしたら、それならば全員がチョコを平等にもらえるよう配慮すべきではないだろうか?
もちろん俺がチョコをもらいたいわけではない。
つまり、女はある一定規模のグループの男全員にチョコをあげなくてはならない、という義務にすべきなんだ。この場合の一定規模のグループとは、たとえば高校のクラスなどということだ。決してリア充グループとかそういう差別的言語で括り付けているわけではない。もちろん俺が非リア充グループに属しているとかそういうわけではなく、非リア充グループの人たちにも平等に機会を与えるという心優しい意思での話なのだ。
そして、男はそれを受け取らなくてはならない。もちろんこれも義務にする。そしたらどうだ?高校という限られた範囲での話を用いるわけだが、これなら平等だし、誰も不幸になることはなくなる。とてもいい日になるだろう。
別にチョコがほしいわけではないが、これを気に非リア充グループの人たちは普段喋ることのない女の子達と会話することができる。例えばクラスでひときわ明るい仁科さんとか、控えめだけど笑うと可愛い前田さんとか、人気自体は少ないというかあんまり聞かないものの確実に可愛いし見かけたらにぱっと屈託のない笑顔を向けてくる、昼食後すぐの授業中お腹いっぱいですぐ寝ちゃうところも可愛い笹井さんとかとも話しやすくなるのだ。もちろん俺は笹井さんとは普通に話せる仲だが、こんな可愛い人と会話できない哀れな男どもにその機会を与えてあげているわけだ。
ああ、やっぱりチョコをあげる風習なんていらないんじゃないか?だってちょこっと考えただけでもここまで面倒なことになるじゃないか。俺はそんなことにはならないが、受験を控えている高校三年生なんかは気になって勉強に集中できないかもしれない。もらえたらもらえたで舞い上がるかもしれないし、もらえなかったとしてももらえるかもしれない、あげたいけど俺を見つけられなくてあげられないのかもしれないみたいなことを思って校舎中を歩き回って結局チョコをもらえないかもしれない。俺はそんなことはないけど、塾で落ち込みながら勉強に手がつかなくなるかもしれない。でもやっぱり塾からでたらなぜか待ってていて「学校じゃ渡せなかったから、さ」にこっみたいな笹井さんがいるかもしれないと考えてしまい勉強なんて考えられなくなるかもしれない。
まったくもって、バレンタインデーとは不合理な制度である。まったく嘆かわしい。
さらに言えば、塾内で「お前チョコもらった?」「あー、一応もらったけど全部義理だわ。つまんねーよな」みたいな会話している奴がいる中で塾の講義室の隅で気配を消す悲しい人間もいるという人間社会そのものに異議を申し立てたく思う。俺はもちろん後者ではないのだが、何度も言うようにこういう事態に陥ることこそがおかしいのだ。
結論を簡潔に言うとすると、だ。
朝起きてあ、今日バレンタインデーじゃん、もしかしたら義理チョコの一個や二個もらえるかもなーみたいなちょこっとした期待を胸に学校へ行って、蓋付きじゃないからたぶん入れないだろうけども下駄箱の中に入れてるかもしれないとちょっとドキドキしながらも確認してやっぱりなくて、まあ普通あげるとしたら直接渡すだろと教室に入って、クラスメイト達が妙によそよそしい中俺はえ、なんかみんな様子おかしくない?なんか今日あったっけ?みたいな態度で席について机の中を手で確認するがやはり何も入っておらず、朝のホームルームをいつもの様に待ってたら誰かチラチラ俺のことを見てる気がして、あれこれ俺にチョコ渡そうとしてる?いやいやそんな馬鹿なと思いつつも教室から出て無駄にトイレに向かってみたりしてあえて一人の時間を作ったりしたけどやっぱり何もなくて、そのまま昼休憩に到達してしまい、ここでいつもなら弁当を教室で食べるんだけどもしかしたら俺のことをいつも見てる後輩が学食でご飯食べてるかもしれないから渡しやすいようにこっちから向かうかみたいなことを思って食堂でラーメンとか食べてみるものの声はかからず、というか休み時間毎回トイレ行っては机の中を確認するというのを繰り返してそのまま放課後下駄箱を確認するも入っておらず、ルーチンワークのごとく自転車置き場に向かうのだがあえて歩幅を小さくしてゆっくり歩いてやたら遠回りして自転車置き場に向かい、裏門ではなくちょっと遠い正門から出てみたものの誰からも声がかからず家に帰ったら机の上にお母さんからのチョコと勉強がんばってねの書き置きがあっては?別にチョコなんていらねえしと思いつつ一応食べて塾に向かい何も起きずに講義が全て終わるという日を過ごしてしまう憐れな底辺男子高校生にチョコをあげる機会を作ってやったらどうだ、ということだ。
チョコください。
読みにくいと思います。