撤退
これが僕の初めての小説投稿となります、拙い文で大変読みづらいことや誤字脱字もあると思います、その様な所があれば指摘して下さい。
今回はまだ東方キャラは出て来ません。
序章 撤退
「……ぐさ、…えぐさ、おい三枝!」
私はハッとして意識をこちらに戻した
「とうとう弾がなくなっちまった!早いとこ引き上げようぜ。」
そう言って私に意見を求めるのは同じ小隊で同期の溝口だ、彼と会ったのは五年前の中国戦線である。
今私達は『ウ号作戦』(後にインパール作戦と言われる作戦)に従事し、コヒマを目前に迎え撃ってくる英軍、グルカ兵等を相手に攻撃を続けていた。
「弾薬小隊の奴らはなにしてんだ!どうして弾をもってこない!」
「分からねぇ、前の補給からだいぶ経つが姿形が見えやしねぇ。危なくなる前に隊長の所に戻ろう。」
「解った、俺が先に行くぞ。」
戻ってみればそこは死体と負傷者でいっぱいであった、敵は戦車や砲を大量にもち途轍もない鉄の量を誇っていた、一方味方は戦車など無く砲も一門あたり20〜30発の砲弾しか無かった、この鉄の差に味方は血の量で対抗しようとしたのだ。
「ひでぇな……。」
「あぁ、これもみんな牟田口の野郎が言い出したこった。あの野郎、俺たちがこうしてる間にも女連れ込んでヨロシクやってるってよ。」
「この戦い……負けるかもな。」
ちょうどその時向こうから隊長達がやってきた。
「おぉ、よく生きていたな、我々はこれから生き残りを集めて後退する、敵の反撃におされているんだよ、師団の判断だ。」
「了解であります!」
そうして私達はこの地よりずっと後ろのウクルルへふたたび戻ることとなった。
私の小隊はもともと五十名以上いたはずである、しかし今後ろへ後ろへと下がる私達は十数名だけだ、あの戦闘に傷つき斃れたものはどれぐらいいたのだろうか?
ほんの十数名程度であると私は思った。激しい戦いであったが私の部隊にはまだ突撃の命令は下っていなかった、それでは一体何が仲間の命を奪っているのか?
それはこの地に潜む病であろう、今歩いているこの退路の至る所に死体がある、先を行く部隊の者だろう、マラリアや赤痢などに冒されてしまい、過酷な戦闘に険しい山路とジャングルが追い討ちを掛け著しく体力を削りさらに物資の補給無く薬の手に入らないここは、まさに地獄絵図さながらであった。
「もうすぐ雨季に入る、各員食料にカビを生やさんように気をつけろ。」
そう吉岡隊長が声を掛ける、しかし誰も応えはしなかった、今は声を出す体力さえ惜しい、隊長もそれを解っているから罰を与えることはなかった。
それでも病は襲ってくる、私の部隊もついに落伍した者などが出て、六名だけとなった。
吉岡隊長、上滝伍長、溝口上等兵と私、山崎・駒田一等兵が今の小隊である。
吉岡隊長は軍曹で歳は三十を過ぎている古強者であり独り身でもある、ユーモアもあり過去に小さな村に留まった際、慰問の品として届いた美人歌手の写真を村人に見せ、「これが俺の嫁さんだ」と言ったりもした。
上滝伍長は無口な人で決して多くを語る様な人ではなかった、その為話し好きな私はどこか近寄り難いものをこの人からは感じている
溝口は中国戦線で一緒になってからずっと行動を共にしている親友で歳も私と同じ二十七歳。長いこと一緒にいるこいつと私はいつの間にか部隊の顔の様な扱いとなり上級者への反抗や初年兵泣かせのような命令をすることなどから『万年上等兵』や『兵隊ヤクザ』など言われるようになっていた。
山崎は今年になってここに来た初年兵で三十一歳とだいぶ老兵である、彼を見た時私はこんな者まで前線に来なければならない程祖国は追い詰めらたのかと驚いた。
駒田も山崎と同じ初年兵でここに来て数ヶ月である、歳は二十一であり、細めの美少年といった感じでさぞかしモテる奴だろうと私は思った、また歌が上手く長い戦いに疲れた私達の心に潤いをもたらしたものである。
最後まで読んでいただき有り難うございました。