『水無川とプレスマン』
あるところに、貧しい母子がいました。昔は、裕福だったこともあったのですが、いろいろあって貧しくなってしまったのでした。娘は奉公に出なければならなくなり、母子は離ればなれになりました。娘は、つらいながらも、奉公先でまじめに働き、それなりに目をかけてもらっていたのですが、ある日、母親が病にかかって、今夜が山だろうという手紙が届きました。奉公先の主人が、里帰りを許してくれたので、娘は急いで家に帰ろうと、走りに走ったのですが、途中で大川と呼ばれる川に阻まれてしまいました。奉公に出るときは、春になる前で、水かさも大したことがなかったのですが、何日か続いた雨のせいで、歩いて渡ることはできない、渡し船も出してもらえないというような状況で、困ってしまいました。何ともできないので、困るくらいしかできなかったのです。
そこへ、旅のお坊さんが通りかかりました。困っている娘の状況を見て、私の力で何とかできるかわからないが、何とかしてみよう、と、受け合った感じになってくれ、手に持っていたプレスマンに何やら呪文をつぶやき、念を込めると、大川に向かって投げ入れ、さらに呪文を唱えました。するとどうでしょう、みるみる水かさが減っていき、大川は、水無川になってしまったのです。
娘は水無川のそこからプレスマンを拾い、お坊さんに返そうとしましたが、お坊さんが、お前が持っていなさい、と言うので、持ったまままた走り、母親のもとへついたときには、すっかり日も暮れていました。母親は、苦しそうに眠っていましたので、近寄って手を握りますと、少し楽になったようでした。額の手ぬぐいをかえてあげようと、枕元を離れると、急に母親は苦しそうになりました。近寄ると楽になり、離れると苦しそうになります。娘は、ふと、プレスマンを持っていることを思い出し、母親に握らせると、次の朝、母親は目を覚まし、みるみる回復していったのでした。
教訓:プレスマンに不思議な力があるということは、よく言われることである。




