社畜人生終了。そして始まり
大学卒業後、大手でもないごく普通の会社に入社し、なんともない普通の人生。
32歳の一人暮らしで、もちろん彼女はいない。たまに実家に帰るくらいで、俺は気ままな独身とい訳だ。
彼女を作ろうと努力した事はあったが、5回告白して全てフラれたため諦めた。年齢も年齢なため彼女を作ろうという努力すらなくなった。
会社に入社して10年が経ち、毎日朝の満員電車、当たり前のように残業。入社してからは数えきれないほど死のうかと思ったくらいだ。
「ピピピピ、ピピピピ」
いつものように目覚まし時計が部屋中に鳴り響く。この音が鳴ったら地獄の一日の始まりだ。
「はあ、今日は怒られないといいな」
毎日怒られてばっかりで一日くらい休んでもバチは当たらないだろうと思えるほどまともな人生を歩んでいなかった。
そんなことを考えつつ、朝のシャワーを浴びご飯を食べ玄関のドアを開け仕事に向かった。
「はあ...今日も満員電車か」
すし詰め状態の電車に乗り外の景色を眺める。これが俺の小さな幸せだ。なぜなら窓に映る景色は、綺麗な海、そして雲一つもない空が広がる。
瀬戸内海ということもあって誰がどう見たって綺麗しか言葉に出ないだろう。
そんな景色を後にしながら電車に降りる。電車に降りてからは徒歩で20分程歩く必要がある。
「全く...外にでても相変わらず人多いな...って嘘だろ」
そこに映し出されていたのは、まさかの工事現場であった。普段通っている道を塞ぐように歩道を公示していた。幸いにも人は通れるようで警備員の指示に従いながら待っていた。
「あーくそ!いつになったら通れるんだ」
仕事の時間も迫ってきておりこんなことならもう少し早く出るべきだと後悔と怒りが混ざっていた。
「すみません、お待たせしました」
その言葉を合図に、俺は走り出す。周りを観ずとにかく全力で走り会社に向かった。
少し経ち、息もつかれたので顔を上げると目の前には赤色の車が全速でこちらに向かってきていた。
走ることに集中しすぎていて道路に向かってずっと走っていたからだ。
「あぁ。しくったな」
この言葉を最後に視界は真っ暗に染まっていった。
「ん...ここはどこだ?あれ俺死んでなかったのか」
目が覚めると真っ白い空間が広がり少しと戸惑ったが死んでいなかった事を真っ先に喜んだ
「一人でぎゃーぎゃーうるさいですね」
俺は驚きつつ声のする方向をみた。そこには女神といっていいほど綺麗な女性が座っていた。
俺はついつい見とれていたが、直ぐに頭の中で整理をした。
たしか、俺は家を出て満員電車に乗り、会社に向かっていたはず、そこで目の前に車が。
思いだしたのはいいが、全身に寒気が走った。
「思い出せたようね。あなたは死んだ。ここは天界よ今からあなたに重要なことを話すわ」
「また一から人間として過ごすか、異世界と言われているところに行くか」
その言葉を聞き固唾を飲む。
異世界...休日にアニメや漫画を見ているからわかる。だがしかし本当にあるのか。
そう半信半疑であったが、俺は答えた。
「異世界で」
もし、本当に異世界に行けたのであれば、社畜から解放される。
それだけだが、俺の中ではこれ以上ないくらい嬉しいことである。また一から人間として過ごすのであれば、また社畜という地獄よりきついものに合うからだ。
「そう。すぐ死なないようがんばりなさい」
なにか言おうと言葉に出そうとした時にはもう、眩しい光に包まれ目も開ける事すら出来なかった。
なにもない人生だった。毎日怒られ、残業の繰り返し。
そこから異世界へと転生することとなり、これまでの人生に意味があったと涙を流す。
こうして、俺はあっけなく転生する事となる。