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13/46

理想を語る愚かな剣豪

夜の屯所に重苦しい気が満ちていた。

梅雨前の湿気が襖の木枠を歪ませるほどに空気は重く、奥の一室にはただならぬ気配が渦巻いていた。


――古高俊太郎、捕縛。


その一報が届いたのは、古賀隼人が沖田総司の見舞いから屯所へ戻る途中のことだった。

(早い――)

史実より数日も早い。

だが、捕らえたのが誰であれ、今ここで古高をどう扱うかが、新選組の未来を大きく変える。

古賀は足を止めることなく、血の気が引く思いで奥座敷へと駆けた。


室内には火箸と縄。

息を殺す隊士たちと、恐怖に震える古高。

その中央に、土方歳三が立っていた。

鋭い眼差しは氷のように冷たく、決意を帯びていた。


「火を熾せ」

低く放たれた命に、誰もが動きを止めた。


「お待ちください――!」


その声が、空気を切り裂いた。

古賀が戸を乱して飛び込むと、すべての視線が彼へと集まった。


土方が顔を向ける。

その眼には驚きも、苛立ちもなかった。ただ、氷のような決断だけがあった。


「古賀か。……邪魔をするな」

淡々とした口調の裏に、重く張りつめたものが見え隠れしていた。


「副長、このような手段は――断じて認められません!」


古賀は一歩踏み出した。

空気が爆ぜる。

副長に口を挟むなど、組織の規律を揺るがす行為だった。だが、古賀は怯まなかった。


土方が言葉を返す。

「古賀……貴様、分かっていないな。

この二週間、奴らの動きはあまりにも不穏だった。浪士どもが市中に溢れ、旅籠に潜伏し、町人を装って怪しい文が飛び交っていた。

我らはそれを掴んでいた。だが決定打がなかった。――古高だ。こいつが“鍵”だ」


土方の口調は静かだったが、その奥底には焦りにも似た苛烈な緊張がにじんでいた。


「先ほど、古高は何かを口走った。……“京に火を放つ”と。

 いいか、京の町が焼かれれば、何千、何万の民が死ぬ。

 俺たちは武士だ。民を守る剣を持っている。

 ……なら、こいつから何が何でも吐かせる。それが、俺たちの“務め”だ」


その言葉に、古賀は胸を打たれた。

副長もまた、必死だった。

ただ刃に飢えているのではない。

京の町を、民を――守ろうとしていたのだ。


火箸が熾され、室内の空気が薄く赤く染まる。

土方歳三の横顔は、炎のゆらぎに照らされ、まるで鉄の面のようだった。

だがその静けさの奥には、怒りとも焦りともつかぬ感情が、炭火のようにくすぶっている。

そんな空間に、古賀隼人の言葉が鋭く差し込んだ。


「……ならばこそ、副長。

 勅命を得た今、我らが行うべきは“正義”を、行いとして示すことです」


土方が顔を向ける。

目は鋭く、眉間にはわずかに深い皺。

古賀は続ける。


「火を熾し、火箸を当て、痛みによって吐かせた言葉に、どれほどの“信”があるでしょうか?

 ――それでは、真実すら“暴力”に変わる。

 我らが掲げるのは勅命にして官命。公儀の剣です。

 であれば、その剣の振るい方にこそ、“義”が問われるのです」


土方の顎がわずかに動いた。

喉元の筋がぴくりと動き、静かに言葉が落ちる。


「……貴様、勅命があればすべてが正義になるとでも思っているのか?」


その声は怒りというよりも、“信じ難さ”に近かった。

その言葉の奥に――土方の強い危機感があった。

「紙に書かれた勅命ひとつで、敵は斬れん。

 仲間は守れん。町は焼かれ、民は泣く。それでもまだ、“形”を選ぶのか?」


古賀の瞳が、真っ直ぐに返す。

「だからこそです。

 副長……勅命とは“器”に過ぎません。

 器に何を満たすか、それを定めるのは、我らの行動です。

 もしその器に、“血と暴力”だけを注げば――それは勅命ではなく、“弾圧”の象徴に成り下がる」


「……何が言いたい」


「我らが剣を抜く理由が、私欲でも復讐でもなく、真に“民のため”であると。

 “正しき剣”であると――見せねばならないのです。

 古高は、生かして真実を語らせる。それができて初めて、

 我らは、**狼ではなく御楯みたて**と呼ばれる日が来ます」


土方は無言のまま古賀を見つめた。

その眼には、あの“壬生狼”を率いる副長の冷徹が宿っていた。

だがその奥に――どこか、わずかな迷いのようなものが揺れていた。


沈黙の末、土方は低く言った。


「……義を示すだと? ――綺麗事で、民を守れるものか」


古賀は静かに首を振った。


「守れません。

 綺麗事だけでは、守れません。

 ――だからこそ、汚れぬ道を、命を賭して切り拓くのです。

 それが我らの正義であり、尊皇であり、剣士の誇りです。」


張り詰めた空気が、音を立てて緩んだような錯覚があった。

土方の視線が逸れ、火箸を握った隊士たちが静かに手を引く。


やがて土方は目を閉じ、唇の端をわずかに歪めた。


「……言うようになったな、古賀。

 だったら――貴様がやれ。

 一刻だ。それで古高から“確かな情報”を聞き出せなければ……次は俺がやる。

 よいな?」


「……承知」


古賀は一歩、縄で縛られた古高の前へ進み出る。

火は熄され、部屋の空気は一変していた。

だが張り詰めた緊張は、なおも芯に残る。


今、古賀が試されているのは――歴史の軌道だけではない。

剣士として、そして新選組の一員としての「覚悟」だった。


部屋は静まり返っていた。

ただ、縄で縛られた古高俊太郎の、荒く細い呼吸だけが空間を乱している。


拷問具は撤去されていた。

だがその存在の痕跡――炭火の焦げた匂い、畳に残る傷跡、そして沈黙の中に漂う威圧――それらすべてが、古高の神経を逆撫でしていた。


古賀隼人は正座し、古高と同じ目線に身を置いた。

剣も帯びていない。ただ、浅葱の羽織と、真剣な眼差しを身に纏っているだけだった。


しかし、古賀の胸の中は戦場だった。


(……未来の知識は、役に立たない)

沖田総司を前線から退かせた。

官命と勅命を得た。

人を救うために“正しい選択”をしたはずだった。


だが、その積み重ねが歴史の“帳尻”を狂わせた。

史実より早く捕縛された古高――。


(このままでは、池田屋事件の座標が消える)


もし古高から情報が得られなければ、

新選組は動けない。

大義は宙に浮き、拷問もせず、捕縛も遅れれば、

後に控える禁門の変も、油小路も、歴史の道筋から逸れていく。


(これは“代償”だ)

己が動いたことで、変えたことで、歴史は何も言わずに軌道をずらしてきた。

そして今、古賀の前に“静かなる帳尻”として、目の前の古高俊太郎が座している。


この尋問に、失敗は許されない。

ここでつまずけば、以後の倒幕派の動きに手は出せない。

そして――もう誰にも「自分の言葉」で、訴えることはできなくなる。

土方歳三がそれを許すはずがない。


月は雲に隠れ、わずかな灯火だけが部屋の闇を揺らしていた。

縛られた古高俊太郎は、畳の上で肩を小刻みに震わせていた。

縄の食い込む手首、冷えた空気、沈黙の重圧。

拷問は始まらなかった。

だが、彼にとってはその“静寂”こそが地獄だった。


その沈黙を割るように、古賀隼人が声を発した。


「……古高殿」


柔らかいが、芯のある声。

古高は思わず目を向けたが、すぐに逸らした。

その視線は怯えに曇り、疑念に染まっていた。


「貴方にとって、私は“斬る者”ではありません」

古賀は畳の上に膝をつき、丁寧に座した。

その目線は、敵意を含まず、ただ同じ高さにある“人”のものだった。


「副長も、刀を収められました。

 貴方は今、生きている。その事実が、何よりの証です」


古高の肩が微かに動いた。

反応はあった。

だが、沈黙は崩れない。


(……剣は、通じない)


古賀は、自身の奥底にあるもう一つの自分――

白衣に袖を通し、人の苦痛に耳を傾けた、医学生としての記憶を手繰り寄せた。

血や痛みではなく、「心の傷」を診るための視線と声。


「……聞いています。

 貴方は捕縛される際、“火を放つ”と口にしたそうですね」


その一言に、古高は顔を引きつらせるように震えた。

恐怖がにじんでいる。

だが、それは“痛み”への怯えではない。

もっと別の、深い恐れ――。


古賀はそれを読み取った。


「分かっています。

 貴方が口を割れば、仲間に命を狙われる。

 裏切り者として、その名は汚され、誇りは捨てられ、命の保証すらない」


古高の唇がわずかに動いた。

何かを否定しかけたようにも見えたが、すぐに噤まれた。


「ですが――」

古賀の声が一段、低くなる。


「貴方が沈黙を貫いたその先に、どれほどの“市井の命”があるのか、考えたことはありますか?」


静寂。

だが、空気が一段と冷たくなる。

古高の目が微かに揺れた。


「伏見。御香宮。堺町通。寺町通。

 そこに暮らす女たち、子どもたち、老いた者たち。

 火が放たれれば、彼らは逃げられません。

 焼け死ぬだけです。倒幕も、忠義も、その炎の中に意味を失う」


「……っ……」

古高の喉が、ひくりと動いた。


(迷っている……!)


古賀は、畳に掌をつき、深く頭を垂れた。


「私は貴方を裁きに来たのではありません。

 命令で拷問を止めたわけでもありません。

 これは、私の“意志”です。

 人の命を――無用な死を――止めたい。ただ、それだけです」


古高の目に、うっすらと涙が浮かび始めていた。

その目は苦悩に満ちていた。

死を恐れているのではない。

裏切りを恐れていた。

自分の手で、大義を汚すことを――。


「……貴方は、狂信者ではない」


古賀の声は、火箸の炎よりも静かに、しかし確かに古高の胸を刺した。

その眼差しは敵を見るものではなく、苦悩に沈む一人の人間を捉える医師のようであった。


「貴方が選んだのは、確かに“正義”だ。

 国を思い、朝廷を思い、己が命を投げ打つ覚悟もあった。

 その志そのものを、私は否定しない。否定できない」


古高の瞳が、わずかに揺れた。

侮蔑でも嘲りでもなく、純粋に“理解”を向ける声。

これまで敵にも味方にも浴びせられたことのない種類の言葉だった。


「だが……狂ったのは、道そのものではない。

 その“手段”だ。

 火を放ち、女や子どもや老人を炎に呑ませることが、どうして“正義”と言えるのか。

 それはもはや忠義ではなく、ただの“破壊”だ。

 ――その歪みが、貴方の胸を蝕んでいるはずです」


古賀の言葉は刃ではなかった。

だが、鋭利な真実として、古高の心を突き刺した。


沈黙。

古高は歯を食いしばり、顔を背けた。

しかしその頬には、一筋の汗が滲み、震えが走っていた。


古賀はさらに声を落とした。


「正義とは、“手段”に宿るものではなく、果たすべき守りにこそある。

 あなたは、守りたいものを見誤っているのではないか。

 敵を討つことに心を傾けすぎ、結果として守るはずの民を犠牲にしてはいないか」


言葉を重ねるごとに、古賀の中でも確信が膨らんでいった。

これはただ古高を説得する言葉ではない。

同時に――自分自身への問いかけでもあった。


(俺もまた、この時代で“正義”を語ろうとしている。

 ならば、剣でなく、拷問でなく、正しい手段で貫かなければ、歴史を救うことなどできない)


古賀の声はさらに強くなった。


「古高俊太郎殿。

 もう一度言う、貴方は狂信者ではない。

 誤った“手段”に縛られた、ただの人間だ。

 ならば、まだ選び直せる。

 正義を“正義”として残すために」


古賀の言葉は、炎のように静かに古高の胸を灼いた。

「……貴方は狂信者ではない」

その一言は、確かに古高の心を打った。

だが同時に――彼の胸奥に、別の熱を呼び覚ました。


「黙れ……!」


古高の声は、荒く、かすれていた。

縛られた手を震わせ、絞り出すように言う。


「貴様らに……何が分かる!

 我らは命を捨てる覚悟で、攘夷を、尊皇を――志を選んだ!

 火を放つことが……狂った手段だと?

 ならば問おう! 武士どもは今まで幾度、民を斬った!

 戦のたび、何千、何万の血を流してきた!

 それを“正義”と呼んでおきながら……!」


声は震えながらも、確固たる怒りに満ちていた。

古賀の言葉に揺さぶられながらも、なお己を奮い立たせる必死の叫びだった。


「我らは違う!

 我らはただ斬るだけの犬ではない!

 炎で覆い尽くし、この国の腐った根を焼き切る……それが我らの道だ!

 ……貴様の言う“正義”など、綺麗事にすぎん!」


室内の空気が張り裂けたように緊張する。

隊士たちでさえ息を呑み、誰一人、声を挟めなかった。

古高の眼は血走り、だがそこには狂気ではなく――確かに、己が大義に殉じる“覚悟”が燃えていた。


古賀は黙って見据えた。

剣士の眼でも、尋問者の眼でもなく――ただ一人の人間として。


(……強い。これが、信念を抱く者の眼か)


古賀は悟る。

これは容易には折れぬ。

剣を抜くように刃で断つこともできない。

古高俊太郎は、ただの囚われ人ではない。

己が誇りを、最後の瞬間まで握り潰さぬ志士だった。


だが同時に、古賀の胸に燃えるものがあった。


(ならば――なおさら、俺は貫かねばならない)


「我らは炎で覆い尽くす! 腐った根を焼き切る! それが正義だ!」

古高の叫びは、血の味を帯びた声となって畳に響いた。

彼の眼には狂気ではなく、烈火のような覚悟が宿っていた。

沈黙する者も、怯える者も、誰もこの眼を嘲ることはできない。


古賀隼人は、深く息を吸った。

胸の奥に積もっていた言葉を、ようやく口にした。


「……古高殿。確かに、その通りです」


古高が顔を上げる。

その視線は挑むようでありながら、どこか訝しむ色も帯びていた。


「武士はこれまで、幾度となく民を犠牲にしてきた。

 戦のたびに血を流し、それを“正義”と呼んできた。

 私もまた、それを否定することはできない」


一拍。

古賀は自らの胸に手を置き、声を低めた。


「――だが、だからこそだ。

 だからこそ、違う道を選ばねばならない。

 これ以上、民を犠牲にしないために。

 “正義”がまた血に塗れるのを、止めねばならない」


古高の眼に、再び揺らぎが走る。

しかしすぐに瞼を閉じ、首を横に振った。

「……戯言だ。結局は、力でしか世は変わらぬ」


古賀はその言葉にうなずいた。

否定しない。ただ受け止めた。


「そうかもしれない。

 だからこそ……俺は、貴方が拷問で苦しむ姿を見たくないのです」


静かな声。

その一言に、室内の空気が変わった。


(……?)

古高が目を見開いた瞬間、古賀の脳裏に、あの日の光景が甦る。

市中で子どもたちに微笑み、遊びながら、「笑顔を守りたい」と語った沖田総司の姿。

――何故新選組で戦うのか。

――子どもたちの笑顔を守りたいからだ。


古賀の胸が熱を帯び、言葉となって零れ落ちる。


「古高俊太郎殿……」

古賀は正座のまま、畳に額をつけるように深く頭を垂れた。


「貴方の覚悟も、意思も、信念も……私は否定できない。

 むしろ尊いとすら思う。

 だからこそ、私は“お願い”しかできないのです」


縛られた古高の眼が、驚愕と困惑に揺れる。

捕らえられた立場の自分に、敵であるはずの新選組の組長が――頭を垂れている。


「貴方の命と身の保障は、私が請け負います。

 新選組副長助勤、一番隊組長――この古賀隼斗が。

 どうか……どうか、話してください。

 京を焼き尽くすその炎から、罪なき人々を救うために」


声は震えていなかった。

そこにあるのは、誠意と決意のみだった。


古高の喉が、大きく鳴った。

汗が額を流れ落ち、縛られた両手が小さく震える。

長い沈黙。

それは、烈しい戦よりも重く、張り詰めた時間だった。


沈黙が、鉛のように重く室内に落ちていた。

古賀隼斗は頭を垂れたまま、動かない。

その背中からは剣士の威圧も、組長の威光も消えていた。

ただひとりの人間として、縛られた志士の前にいるだけだった。


古高俊太郎の胸は荒く波打ち、唇は何度も開きかけては閉じられた。

――話せば、仲間に裏切り者と罵られ、命は尽きる。

――だが、沈黙すれば、民の血が流れる。


その葛藤が彼を苛んでいた。


その時――。


「副長! 副長ッ!」


戸の外から荒い声が響いた。

隊士が駆け込んできて、土方歳三に報告する。


「倒幕派の浪士どもが……今宵、四条河原にて不審な動きを!

 大人数が集まっております!」


室内がざわついた。

時が迫っている。

動き出した浪士たちの影。

もはや一刻の猶予もない。


土方の眼が鋭く光る。

「……やはり、何かを仕掛けるつもりか」

彼の声には、抑えきれぬ焦りがにじんでいた。


その瞬間――。


「待てッ!」


古高の声が室内を貫いた。

縛られた体を震わせ、涙を滲ませながら、叫ぶように吐き出す。


「……もう、やめろ。

 俺は……俺は黙ることで、京を地獄に沈める片棒を担がされる……!」


嗚咽が混じる声。

だが、その眼は必死に古賀を見据えていた。


「古賀隼斗……お前は敵だ。だが、俺を“人”として見た。

 その誠意に……俺は負けた……」


呼吸が荒くなりながら、古高は吐き出す。


「浪士どもは……御香宮を拠点に火薬を蓄え、

 池田屋に集まって密議を開く手筈だ……!

 そこから京中に火を放ち、天子様を攫い、長州へ連れ去る計画……!」


隊士たちがどよめいた。

その内容はあまりにも鮮烈で、具体的で――これ以上ない証言だった。


古賀は、頭を垂れたまま、静かに拳を握った。

(……これで、池田屋は動かせる)


古高は縛られた膝の上に顔を伏せ、震えながらも呟いた。


「後悔はしていない……だが、もう……誰も殺したくない……」


古賀はゆっくりと顔を上げ、その言葉を胸に刻んだ。

(ありがとう。貴方の勇気が、未来を繋ぐ)


沈黙を破り、土方歳三が立ち上がった。

眼には鋼の光を宿しながらも、口元は笑みに近いものを歪めていた。


「……見事だ、古賀。

 これで奴らを捕らえる大義も、手掛かりも揃った」


そして声を張り上げる。


「池田屋を――叩く!」


その声は夜を震わせ、集まった隊士たちの胸を激しく打った。

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