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62.混沌

 キラリンが死に、私は彼女の服を探って無線機を借ります。


「終わりました」


『了解。すぐに向かいます』


 キラリンに頭を下げて、国会議事堂を後にしました。空は暗く、星空が煌めいてます。

 娘らと待機してるとボロボロのリムジンが飛び出してきます。

 ドアが開いたのでそのまま中へと入りました。陛下は彼女が居ないのに何も言わず出発した。


「陛下、あの」


「彼女も覚悟の上です。あなたが気に病む必要はありません」


 既に察していたようで釘を差されます。その言葉に情も何も感じませんでしたが、長い戦いでこうなるのはずっと前から予測していたのでしょうか。ならば私からは何も言えない。


「それにまだ終わりではありません」


「そういえばヘリでしたよね。なぜこれに?」


「敵の襲撃で撃ち落とされたものですから」


 軽く言ってますけどそこから脱出して生き延びたんですか? 聞き出そうにもなんかそういう空気じゃないですが。


「桜姫は?」


「依然緋色学会に居座ってます。場所は屋上かと。ただ面倒なことに彼女の信者も新宿へと集まっているようです」


「どうして?」


「富士の傘下が死んだことで冗長している、と考えるのが普通でしょうか」


 なるほど。桜姫にとっても富士は目の上のたんこぶだったというわけか。どの道ここで終わるわけにはいかない。


 陛下はアクセル全開で公道を走り抜け、新宿へと戻ってきました。そこはすでに炎の海と化していて軍用車や戦車、建物が炎上しています。1人で問題ないって言ってましたけど、本当に問題なかったなんて。


「本当に陛下は富士を倒せなかったんですか?」


 こんな惨劇を見たら胡散臭く感じてしまいます。


「どんなに凶悪な攻撃手段を持っていたとしても、滅する力なくして勝利はありえません」


 確かに富士のあの再生力は尋常でなかった。この先に待つ桜姫も同じなのだろうか。


 道路には無数の桜姫の信者が待ち受けていました。けれど陛下そんな連中にお構いなしで車で突っ込みます。お偉いさんって皆こうなの?


 数の暴力か、一部の信者がボンネットから車の上に乗って叩いて来ます。凹んで今にも壊されそうな勢い。


「伏せてください」


 陛下がショットガンを取り出して凹んだ所にぶっ放します。無数の穴と共に上の奴も落ちたようで。


「私、もう絶対お偉いさんとは関わらない!」


 栗香さんが涙目で訴えます。今日だけで地獄のドライブ2度目ですからねー。


「栗ちゃ、降りる?」


「ふざけてんの!?」


 実際道路一杯に人がわらわら集まっていて、こんなにも生き残りがいるのかと思うと同時に全てが桜姫に洗脳されているのかと思うと悲しくもあります。


 既に壊れかけている窓やトランクに張り付いてきます。


 陽菜葵さんは狙撃銃を構えて連中に撃ちました。見事に吹っ飛びます。


「陽菜葵それうるさいからやめて!?」


「あの人もやってたんだが?」


 陽菜葵さんがリロードしながら言います。


 それで割れた窓から手を伸ばして来る輩が。その手を見て栗香さんが日本刀で両断しました。


「邪魔なんだよ!」


 車内にボトッと落ちる生腕。


「栗姉、危ない」


「ごめーん」


 うちの娘らは危機感をどこかに置き去りにしたようで。なんかいつも通りだとこっちまで安心します。


 後ろから盛大にクラクションが鳴らされ、凄まじい衝撃が。大型トラックに張り付かれてます。陛下は前方の敵に注視していて手が離せそうにないです。


「これを使ってください」


 そう言って手榴弾を投げてきます。うわー、怖い。確かピンを抜いて投げるんだっけ。


「私当てれる自身ないですね」


 投擲力皆無の私では下手したら自爆しそう。すると雪月さんが取りました。


「雪月さ」


 言う前にピンを外して外へポーンと投げちゃいました。同時に爆音と共に後ろでトラックが転倒します。


 それを見て娘らがハイタッチ。なんかうちの娘らが輩になってません?


 この子らの親はどこじゃー。


「しかしこれではキリがありませんね」


 うじゃうじゃとゴキブリのように次から次へと襲ってきます。


「緋色学会へはもうすぐ到着します。それまでの辛抱です」


 この状況で到着しても意味なくないですか?

 陛下はさらにアクセルを踏んで加速させます。


 それで前方に何やら病院のような白くて大きな建物が見えます。それはまるで高層ビルのように高く、天へと続いてました。


 陛下はそんな病院の入り口へと突っ込みます。

 減速しません。寧ろ加速してない?


 このまま突破する気ですか!?

 ガラスを打ち破りロビーへと侵入。

 派手にドリフトを決めてようやく停まってくれました。


 この人、一応天皇ですよね?


 病院、もとい緋色学会の内部は明かりがついていて電気が生きてるようです。全員が降りると既に入口方面から多数の信者が走って来てます。陛下はショットガンを取り出しました。


「ここは私が食い止めましょう。桜姫をお願いします」


 この数は1人では無理なのでは。と思いましたけど聞くだけ野暮かもしれません。黙って頷いて走りました。階段へと行こうとしましたが、陽菜葵さんに腕を引っ張られます。


「魔女たん、あっちの方が早いんにゃ!」


 あれは五竜の研究所でも使った覚えがあります。確か階層を移動する機械?

 やはりおばあちゃんが現代社会では生きていけませんね。ともかく中へと入って一番上の階層へと向かいます。


 ゆっくりと数字が1つずつ光っていきます。


「この先に桜姫がいます。怖くなった人は挙手。今なら降りれますよ」


 なんて言いましたけど誰も手をあげません。


「あんな化物と戦った後に聞くなんて魔女ってもしかして馬鹿?」


 栗香さん、私は娘を心配して聞いたんですよ。まぁ、馬鹿かもしれませんけど。


「ヒナはいつでもマー様と一緒なんじゃー」


 軽い口調で話す陽菜葵さん。この子はもう少し緊張感を持って欲しいですね。


「お姉ちゃんの命令には従う。そう約束したから」


 雪月さんは相変わらず覚悟の上。聞くだけ野暮でしたね。


 足元にいる狐に至っては私を見つめるだけ。


「栗香さん。桜姫を殺せますか?」


 娘にこんな質問をするのは酷かもしれない。けれどこの悪夢を終わらせるには桜姫を殺害するしか方法はありません。だから少しでも半端であるなら即刻降りてもらいます。


 栗香さんは目を瞑りました。


「姫がああなったのは私の責任でもあるから。だから最後のけじめはつけたい」


 その言葉に曇りはなさそうです。彼女なりに今回の騒動に責任を感じているのかもしれない。心配無用でしたか。


「陽菜葵さん。桜姫を撃ち抜けますか?」


「卒業したって言ったんだが? 他人に気を使う方がおかしいんだが?」


 彼女は彼女であっさりしている。変わり身が早いと人は言うかもしれない。けれどその性格のおかげで今は共にいてくれる。だったら今は娘を尊重しましょう。


「雪月さん。こんな命令、親として最低かもしれません。でも桜姫を倒す為に協力してください」


「大丈夫。わたしはいつでもお姉ちゃんの味方」


 娘の目に曇りなし。もしかすればこんな質問をしてる私が半端者だったかもしれませんね。


 数字が一番上まで上がって扉が開きました。


 そして階段を上がった先は屋上。


 その先に桜姫は居ました。

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