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【第十九話】エピローグ

「一樹はさ。なんであの時、まひるちゃんを追いかけなかったの?」

「またぶり返すな。追いかけて欲しかったか?」

「そんなこと無いけど。やっぱり気になって」 

「そりゃ、あの香織から『愛してる』なんて三回も言われたら、否が応でも感じるものはあるさ」

「正直当たって砕けろ、だったんだけどね」

「そうなのか?」

「だって。略奪愛よ?誰だってそう感じると思うけど」

「ハロー。略奪愛されたまひるちゃんの登場でーす」 

 花屋の店先で香織と二人で開店準備をしている時にまひるちゃんがやってきた。

「お客様、営業開始の時間は……」

「ケチなこと言わないの。ちょっと欲しい花があって。えっと……」

 そう言ってスマホで何かを見ながら注文を出してきた。

「キキョウ、スターチス、ハナミズキ、バラにブーゲンビリア。あとヒマワリ!」

「ヒマワリ?」

 香織にバレンタインの日に渡された花。スマホで花言葉を調べたら『あなただけを見つめる』

「香織ちゃん、それ全部愛の告白の花じゃない」

「そです。愛の告白に来たんです。先輩!受け取って下さい!」

「いやいや、まひるちゃん、冗談がキツいよ……」

「本気にしました?残念でした。先輩の知らない人に渡すんです。今回も私からイケイケです」

 あれから半年。香織は卒業して、そのまま僕の実家の花屋に就職。僕は大学の合間にそれの手伝いをしている。たまに学内でまひるちゃんを見かけるけども僕から話しかけることは無かった。けど、ノートだけは別だった。「伝説の一ノ瀬ノート、借りに来ました!」ノートを貸して返してくれる度に、思わせぶりなメモ帳が挟まってて困ったものだ。

「まひるちゃんは、今度はどんな人なの?」

「優柔不断な感じじゃ無い人です。私だけを見つめて貰えるような」

「当てつけだな」

「だってそうじゃないですか。私という彼女がいたのに香織先輩のことを考えていたなんて。普通は許してくれませんよ?それに。香織先輩、気をつけた方が良いですよ?この人、優柔不断なんで。他の誰かに声を掛けられたら……」

「大丈夫だって」

「あーあ。私もそんな風に愛されたかったなぁ。やっぱり好きと愛してるは違うんですね。よく分かりました。あ!香織先輩、今、謝ろうとしましたね?そういうのはもう無しです。謝るなら最初からやり直しにしちゃいますよ」

「それは……。困る、かな。一樹は優柔不断だから」

「それじゃ一ノ瀬先輩!私、頑張ってきます。もしダメだったらその時は慰めてくださいね!」

 そう言ってまひるちゃんはパタパタと大学に急いで行った。

 

「ねぇ、一樹。結局のところ私、一樹の口からちゃんと言われたこと無いんだけど」

「例の言葉か?」

「そう」

「そういえばそうだな。じゃあ……」

       

        

 『私、一ノ瀬一樹は本庄香織のことを愛しています』

 

 

「なんか照れるわね。それ」

「香織が言えっていったんだろ?」

「そう?何の言葉だかは指定していなかったと思うけど?」

「この!」

 

 本当に色々な事があったけど、僕たちの関係はこのまま続くことだろう。来年も再来年も、きっとその先も。

 僕は香織を愛して、香織は僕を愛す。キキョウの花に誓って。

 まずはここまでの長時間、お付き合いいただきましてありがとうございます。

 作中にもありましたが、私は物語を書くときにラストシーンから考える癖がありまして。それが作品にも出てしまうので今回のお話のラストは想像出来てしまったんじゃ無いか、なんて思ってたりします。正直なところ、どうやって丸めるか悩みました。この作品はプロット無しで書いてましたので。推敲をして若干の矛盾点はあったので修正したのですが、ばら撒いた伏線は、まぁ回収出来ていたんじゃ無いかと思います。

 

 そして今回の作品は好きと愛してるの差について描写したつもりなのですが伝わりましたでしょうか。個人的な見解では、好きは見た目とか一緒にいて楽しいとか表面的な部分を指して、愛してるは一緒にいて、いつも自然体でいられる関係、だと思うんですよね。香織と一樹はそういう部分については気にしながら書いていました。じゃあ、凛ちゃんどうなってるんだよ、と言われると、凛ちゃんがかわいそうなんですけどね。一樹は多分あの頃には「愛」がなんなのか分かってなかったんだと思います。なのでこの作品、最初に考えた題名は「仮カレ」だったんです。愛について理解していない主人公はいつまで経っても「仮」のままですからね。いまドキッとした人は注意した方が良いかも知れませんよ?

 

 ちなみに最後のキキョウの花言葉は「永遠の愛」「変わらぬ愛」「誠実」「気品」です。

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