第7話
「異世界きたー!!」
僕は心の中で叫んだ。
「よし、じゃぁ行くか坊主」
兵士のおっちゃんはそう言うと、相方と一緒に歩き出した。僕はゆっくりその後ろを付いていく。
(それにしてもすげぇな異世界……見たことのないものばっかだ)
城下町には果物屋、パン屋、服屋などずらーっと色々な店が並んでいた。そのどれもが見たことも聞いたこともないものばかりだった。
(後で買い物したいな)
城下町を過ぎ、10分ほど中央通りを通ると真ん中にバカでかい建物が目に付いた。
「よし、付いた。坊主、ここが冒険者ギルドだ」
そこには中世ヨーロッパのような立派な建物があった。
「冒険者登録するならまずはここで間違いないはずだ。さっさと入るぞ」
兵士のおっちゃんはそういうと扉を開き中に入っていった。
僕もおっちゃんに続いて入った。
「わぁ……」
(すげぇ……まさにテンプレだ)
中には酒場があって、奥に受付らしきものがありカウンター越しに女性が座っていた。壁際には掲示板のようなものがたくさんあり、依頼書が張り付けられていた。冒険者のような人が沢山いた。あと柄の悪そうな大人も数名……
「ようこそ冒険者ギルドへ、本日はどのようなご用件でしょうか」
受け付け嬢は綺麗な人だった。長い黒髪を後ろで束ねていて、目鼻立ちがはっきりとしている美人さんだった。
「この坊主の冒険者登録をしに来たんだ、俺は保証人だ」
するとそれを聞いた受け付け嬢は驚いた顔をするがすぐに元の顔に戻り
「分かりました、ではこちらのカウンターへ来てください」
周りからヒソヒソ話が聞こえてくる……
「あの小僧、貴族様なのか……しかも衛兵が2人も……クソ手出しできねぇじゃねぇか……」
「ちっ……貴族じゃなければあんな珍しい身ぐるみ剥いでやるってのに」
うぉぉ……こえ~~~~っ!おっちゃん達に付いて来てもらわなければどうなってたんだ……。
カウンターに付くと受け付け嬢が話しかけてきた。
「私はこの冒険者ギルドの副マスターをしております、サラと申します。早速ですが、この用紙に必要事項を書いてください」
そう言って渡された紙を見ると名前や年齢などの基本的な個人情報を書く欄の他に『職業』と書いてあった。
(え……なんで読めるの……)
僕はその項目を見て驚きながらもとりあえず名前を記入した。職業はどうしよう……。
「はい、ありがとうございます。ユウキ・シノミヤ様ですね」
うぉ!?読まれてる!!
「お、おい坊主!お前名前はなんていうんだよ!」
隣にいた兵士が慌てて聞いてきた。
「え、あ、僕の名前はユウキ・シノミヤといいます」
「ユウキ・シノミヤだと?まさか貴族か?」
兵士のおっちゃんが驚いている。
「いえ、貴族ではありませんよ。ただの平民の子供ですよ」
「ふぅん……まぁいい。それより職業は何にするんだ、何にもならないなら俺と同じ戦士にしろ。それとも何かやりたい職でもあるのか?」
「いや、特にはないんですけど……」
そう答えると兵士のおっちゃんは少し考える素振りを見せると
「まぁいい、じゃぁ戦士にしておけ。まぁなんだ……一応言っとくが、冒険者は危険な仕事だからな。無理にとは言わないが……まぁ……命を大事にな」
「は、はい……」
僕はそう答えて受付嬢に渡した。
「はい、確認しました。では最後に冒険者のランクについて説明させていただきますね。基本的にFから始まってE,D、C、B、A、Sと上がっていきます。もちろん個人差があり、一概には言えないのですが、ほとんどの方は1年以内にはランクアップされています」
「冒険者にはそれぞれランクに応じたクエストがあります。これは依頼主からのもので、難易度に応じてランク分けされており、基本的には自分のランクより一つ上のものまで受けることができます。ただし緊急性の高いものや特殊なものは除きます」
「それと、依頼に失敗した場合違約金が発生します。こちらは依頼内容によって金額は変わりますが、報酬額の3割程度が一般的ですね」
「あと、冒険者同士での争いは原則禁止になっています。ただし決闘の場合は除きます」
「最後に冒険者カードですが紛失した場合、再発行に金貨1枚が必要となりますのでお気をつけください」
「他に質問がなければこれで終わりになりますが……」
「はい、大丈夫です」
「分かりました。それでは登録に銀貨5枚いただきます」
僕は受け付け嬢に金貨を渡した。
「金貨ですね、ではお釣りに銀貨95枚お渡しします。それとこちらが冒険者カードになります」
受け付け嬢からカードを受け取った。これが身分証にもなるらしい。
「シノミヤ様のこれからのご活躍期待しております」
受け付け嬢は奇麗なお辞儀をした。
「よし、じゃぁ帰るか。今日は坊主のおかげでいい気分転換になったぜ。また明日な」
「はい、ありがとうございました」
僕はそう言うと兵士のおっちゃん達を見送った。
「さて、身分証も作ったし次は宿を探すか……流石に野宿はまずい」
そう思いながら街を見回っていると宿屋を見つけた。
「ここだな……」
中に入ると受付のような場所があったのでそこに行き声をかけた。
「すみません、泊まりたいんですけど部屋空いてますかね?」
すると奥の方から綺麗な女性が出てきた。
「あら、可愛いお客さんだこと。一人かい?なら二階の部屋が空いているよ」
「いくらですか?」
「そうさねぇ……銅貨5枚でどうかしら」
「はい、それでお願いします」
僕はポケットから銀貨1枚を取り出し、カウンターに置いた。
「銀貨だね、じゃぁお釣りは大銅貨9枚と銅貨5枚だよ」
そう言われて僕はお釣りと鍵を貰った。
「お風呂はあるのかな?」
「あるわよ。この時間だと混むかもしれないけどね。でもお湯は有料だから注意してね」
なるほど……この世界にもお風呂があるのか……日本人としてはありがたい限りだ。
「ありがとうございます。あ、そうだ!この街ってどんなところなんでしょうか?」
僕は受付の女性に聞いた。
「ここは商業の街と言われているの。ここから南に行くと港があって、そこから船に乗って他国へ行けるから貿易が盛んで色々なものが手に入るわ。北にある鉱山からは良質な鉱石や宝石が採れるしね」
「そうなんですか。色々教えていただきありがとうございます」
僕はお礼を言うと宿を出ようとした。
「お姉さんちょっと街を出歩いてきます。夕飯は何時頃できますか?」
「そうねぇ……6時くらいかしら。それぐらいに食堂に来てちょうだい」
「分かりました、では行ってきます」
そう言って外に出た。とりあえず鍛冶屋かなその次は雑貨屋に行きたい。