第6話
僕は距離感というものを知らない。そりゃそうだ普段マラソンなんてしないんだから。
全力で走りすぎた。
「はぁ……はぁ……はぁ……」
ものの数分で息切れを起こしていた。
「は、走り過ぎた……もう無理……歩こう……」
10分後……
「ぜぇ……ぜぇ……やっと着いた……」
何とか壁にたどり着いた。
(にしても結構でかいな)
1辺50mほどの正方形の壁があった。
「門とかあるといいんだけど……」
期待しながら辺りを見渡すと、少し離れたところに大きな扉を見つけた。
「お!あったあった」
近づくと大きな城門と横に小さな出入口、そこに2人組の兵士がいた。
「すみません」
「ん?なんだ坊主」
「ここって街ですか?」
「なんだお前旅の者か?ここはアルンの街だ」
「そうなんですね、田舎から来たので何も持ってないのですが中に入れてもらえたりしますか?」
「旅人は通行料として銀貨2枚頂いている。冒険者なら冒険者カードを提示すれば通すことが出来るが、どっちかもってるか?」
(まじか、そんなのどっちも持ってないぞ……)
「すみません、どっちも持ってないです……あ、このスライムコアとか銀貨の代わりにできますか?」
「坊主……スライムコアなんて銅貨1枚にしかならないぞ」
(嘘だろ!?あの命がけのやり取りはなんだったんだ)
なにか銀貨の代わりになるものがあればいいんだけど……何かないかな。
「あ、そうだ!これって代わりになったりしませんか?」
そういうと俺はカバンからえんぴつとノートを4ページちぎって渡した。
「な、なんだこの上質な紙は!?」
「お、おい俺にも見せてくれ、すげぇ……羊皮紙なんて比べ物にならないぐらい上質だぞ……」
おぉ、意外に好印象だ。
「坊主、こっちの棒みたいなのはもしかしてペンか?」
「はい、そうですよ。ちょっと書いてみてください」
兵士のおっちゃんは言われるがまま紙に書いてみた。
「うぉぇ!?すっげぇな坊主!インク付けなくても書けるぞ!!」
「それで銀貨の代わりになりますか?」
「なる!なるぞ!むしろ金貨ぐらいの価値がある!坊主良かったら金貨1枚と交換してくれ、それだけじゃない、銀貨2枚も今回は大目に見てやる」
「本当ですか!ぜひお願いします!」
まさかそんなに価値のあるものだったなんて思わなかった。
それなら……
「すみません、もしよかったら残りのノートもすべて差し上げます」
「なんだと!?それは本当か!貰えるなら喜んで貰うぞ!」
めっちゃ喜んでくれた。まぁ簡単にはあげないけど。
「坊主……何か裏がありそうだな?」
お、気付いた。
「はい、実はそのノートをすべて差し上げる代わりに冒険者ギルドの保証人になってもらいたいのです」
「ほぉ……保証人ねぇ」
これには理由がある、僕みたいな子供が急に冒険者ギルドで冒険者になりたいなんていったら問題を起こすか門前払いされるかの二択だ。
だけど衛兵を連れてギルドに行けばどこぞの貴族がお遊び感覚で冒険者になりたいとやってきたんだと勘違いしてくれる。どこの世界でも貴族に手を出せば極刑だ。輩に絡まれることもないだろう。
それに、受付の人も無暗に突っぱねることもできない。ノートがとてつもなく高価なことも分かるけど、今は伝手が欲しい。それにペンやノートなど地球から持ってきたものはまだある、そんなに焦ることはない。
「まぁいいだろう、ちょうどもう少しで昼休みになるころだ。昼食とるついでにギルドまで同行してやろう。坊主……案外頭が切れるな」
ラノベで読んだので……。
「よし、通っていいぞ!」
僕は兵士のおっちゃんから金貨を受け取ると城門の横の小さい扉から入場した。
入ってみて驚いたのは見渡す限りの人、人、人。そして大きな城下町。
「なんだよ、ここ……すっげぇファンタジーの世界じゃん……」
そこは僕の想像していたよりもずっとすごい世界が広がっていた