第2話
祠から数分程歩くと、大きなお墓が見えてきた。
その墓石には名前が刻まれており、その数は十や二十ではなかった。
「うわぁ……すごい数のお墓だ……ん?あれは……」
僕はそのお墓の一つに違和感を覚えた。
「あれって……もしかして」
僕は恐る恐る近づいてみた。
「やっぱり……これは骨壺だよな」
お墓の中には骨壺と思われる物が入っていた。しかもそれは一つだけではなくいくつもあった。
「どうしてこんなものがここに……それにここにあるお墓の数、一体どれだけあるんだよ……」
僕は辺りを見回してみる。どう見ても百はあるように思える。
「これだけ沢山のお墓があるということは……ここは昔、墓場だったのか?いやでもそれならどうして今更になって新しいお墓を建てたんだろう?」
疑問が次々と浮かんできた。
「ん?なんだこれ?」
僕は地面をよく見てみた。すると、何かが落ちていた。
「これは……木札かな?」
拾ってみると、そこには文字のようなものが書いてあった。
「"此処ニ眠ル者共ノ魂ハ安ラカニ"……どういう意味なんだろう?」
僕にはその意味がよく分からなかった。だが何故かそれが重要なもののような気がしたので一応持っておくことにした。
「さて、そろそろ帰らないと。暗くなってきたし」
そう言って立ち去ろうとした時、ふと視界の端に動くものを捉えた。
「ん?今のは……」
よく見ると、お墓の中から手が伸びてきていて、まるでこちらに手招きをしているかのように動いていた
「なっ!?」
突然の出来事に驚いてしまった。
「ど、どうしよう……」
僕はその場に立ち尽くしてしまった。すると、今度は腕だけでなく顔まで出てきた。そして、口元が動いているように見えた。
「こ、声をかけてみるべきか……いやでも幽霊とかだったら怖いし……」
そんなことを言っている間にもどんどん手が出てきていた。
「ええい!ままよ!」
僕は覚悟を決めて話しかけることにした。
「あ、あの~」
『……ミツケタ』
頭に直接流れてきた声に僕は驚いた。
その瞬間、僕は全身の血の気が引くのを感じた。
「ひゃあああ!!」
情けない悲鳴を上げながら僕はその場から逃げ出した。
(な、何だアレ!!)
全力で走りながらも後ろを振り返ると、お墓から大量の手が飛び出していて、そこから顔が覗かせていた。
僕は無我夢中で走った。息を切らしても、お腹が痛くなりながらも。
気付いた時には家の前だった。
「はぁ、はぁ……」
なんとか逃げ切った僕は能天気に
「……今日は早く寝よう」
そう心に決めた。