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6話 ギルド選び

「王都にもいくつかギルドがあるらしいって分かったけど、どこにするか悩むなー」


 王都に入って数日。

 俺とティアは王都中を巡って冒険者ギルドの『冒険者募集』の張り紙を集めていた。

 今は手近な酒場に入ってその紙を机に広げつつ、どこに入るか決めているところだった。


『どこにしたっていいんじゃない? 条件も悪くないし、私はカイルと一緒に楽しければもうなんでもいいやー』


「相変わらず適当な性格だなぁおい」


 ティアは鳥の丸焼きを両手に二つ持って交互にかぶりついていた。

 ちなみに今、両手にある分でちょうど十匹目だ。

 王都に入った初日にティアが大食い大会で優勝した賞金でここ数日生活しているが、だからってその細い体のどこに鳥の丸焼きが十匹も入るのか。


「……まあ、難しく考えても仕方ないか」


『そうそう! もっと軽くいこうよ、かるーくね!』


「それじゃあ今から机にコイン投げて、コインが冒険者募集の紙に乗ったギルドに行くか」


『賛成! いいねぇ、やっぱり人生も竜生もそんなもんだよ〜!』


 適当に囃し立ててくるティアの声を聞きつつ、コインを投げる。

 コインはクルクル回転し、ティアの視線の先にあった冒険者募集の紙の上に……乗らなかった。

 コインは横から差し出された別の冒険者募集の紙に乗ったからだ。


『ちょっ、今いいとこだったのに。誰よ邪魔したの!』


 ティアが抗議するように立ち上がると、目の前にはコインの乗った紙を持った少女がいた。

 少女はゆっくりと外套のフードを脱ぎ、素顔を晒して俺たちに微笑みかけてくる。


「数日ぶりですね、カイル。それにその声、あなたがティアでしょうか? 人間の姿になれるなんて流石ですね」


『ええっ、姫さ……もごぉ!?』


「ふふっ、ここではお静かに」


 ミユ姫の正体をばらしかけたティアは、笑顔のミユ姫に口を塞がれていた。

 なかなかの早業、実は姫様も結構動けるのかもしれない。


「ここでは何です。場所を変えませんか?」


 再びフードを被ったミユ姫。

 俺は食事代を机に置き、ティアは机の上に広げていた紙をかき集めた。

 それから俺たちはミユ姫に着いていき、路地裏の小さなカフェに足を運んでいた。

 閑静な雰囲気のカフェに入ると、無愛想な店主が一言「いらっしゃい」と言った。

 ミユ姫は慣れた足取りで一番奥の席に座り、俺たちはその正面へ座った。


「ここは内密の話をする際によく使うのです。店主が元々、王城に仕えていた騎士団長でしてね。信頼の置ける方です」


『なるほどねー。それで姫様、私たちに何の用?』


 ミユ姫はさっき俺たちのコインが乗った冒険者募集の紙を懐から取り出した。

 それから「ここに入るのはいかがでしょう?」と言った。


「カイルたちは冒険者になるのでしょう? それならここ、ギルド【イグドラシル】がおすすめです」


「イグドラシルか……」


 そこは確か、王都で最も多くのS級冒険者を抱えているギルドだ。

 冒険者の等級はS~Fに分かれており、


 F:最低位。

 E:下級魔導師以上の能力。

 D:中級魔導師と同等の力。

 C:上級魔導師と同等。能力によっては都市の命運を左右する。

 B:上級魔導師を凌ぐ。ひとつの地方の命運を左右する。

 A:国家の命運を左右する。

 S:大陸の命運を左右する。


 こんな感じの区分になっている。

 しかもイグドラシルは国内に十数人しかいないS級を五人も抱えながら、残り九名もA級という少数精鋭のギルドになっているらしい。

 明らかに初心者冒険者が手を出すギルドではないと、今回のギルド選びの選択肢からはあえて外していたのだが。


『姫様、私たちにイグドラシルに入れって本気? そもそも私たち、何級からスタートか分からないのに』


「ご心配なく、私が紹介しますので」


 ミユ姫はポーチからカードを取り出す。

 それは冒険者カードと呼ばれるもので、要は冒険者の身分証明証だ。

 所属ギルドと国家から認められた等級がそこには刻まれているのだが。


【所属:イグドラシル

 S級治癒術師(ヒーラー) ミユ】


『えっ、姫様って冒険者なの!?』


 ティアの驚いた声に、ミユ姫は小さく舌を出した。


「実は私、幼い頃より冒険に憧れ魔術の鍛錬も積んできたのです。お陰でこの通り、隠れてイグドラシルの一員でして」


「S級冒険者で治癒術師、なるほどなぁ」


 オーガに襲われてよく生き延びていたと思ったが、そこはS級冒険者といったところか。

 それに治癒術師の使う治癒魔術は確か、他者の傷は癒せても自分の傷は癒せない制約があったはず。

 怪我をした足を放置していたのはそういうことだったか。


「ドラゴンライダーのカイルなら、必ずやイグドラシルの一員に認められます。相棒のティアだって外せません。どうです? イグドラシルに来ませんか?」


 ミユ姫は瞳を輝かせてこっちを見る。

 そこでふと、疑問に思ったことがあった。


「姫様はどうして俺たちに、こうもイグドラシルを勧めるんだ?」


「それは私なりの恩返しだからです。一緒のギルドなら私の治癒術で、この先ずっとサポートできます。金品でのお礼も考えましたが……いいえ。やはりこうして恩を返した方がよいでしょうから。何よりイグドラシルには借り上げの住居もありますから。メンバーなら無料ですし住居には困らないかと」


「おお、それは素晴らしい」


 王都の物件をティアと一緒に見て回ったが、正直高い。

 土地が変わるだけで賃料ってこんなに高くなるのかと心底思った。

 辺境から出てきたばかりの田舎者ゆえに。


「つまり姫様は命を助けられた対価に、俺たちの今後をサポートしてくれると?」


「はい。ギルド紹介もその一環です」


 ミユ姫はそう言い切った。

 姫様の周囲の妖力もとい自然エネルギーを見てみるが、特に変わった様子はない。

 これは感情に起伏がなく、嘘を付いていない証だ。


「分かった。せっかくだから姫様の紹介を受けるよ。でも、俺ちょっと問題があって……」


「魔力がゼロなのでしょう? それくらいは調べがつきましたよ」


『わーぉ、職権乱用だぁ』


 茶化した物言いのティアに、ミユ姫は苦笑した。


「けれど私を救ってくれた時の技。ただ魔力が使えない訳ではありませんね? 何かスキルを持った異能者なのではありませんか?」


 異能者とは、生来スキルと呼ばれる魔術でない力を持った者を指す言葉だ。

 例えば【雷撃】スキルなら魔力を消費して、魔術とは違い詠唱なしで稲妻を放てる。

 そんな感じで俺も異能者なら【妖力】スキルとか言えるのだろうが……。


『ないね。もしカイルがスキル持ちなら匂いで分かるもん。神様から愛されてる匂いって言うのかな、独特な匂いがするの。でもカイルにはその匂いがないから』


「つまりティア風に言うなら、カイルは神の寵愛を受けていないと?」


『代わりに私の寵愛はいーっぱいだから問題なしっ!!』


 そう言い、ぴとりとくっついてくるティア。

 人間の姿になってから妙にボディータッチが多い気がするが、今まで俺も散々ドラゴンの姿のティアを撫でたりしてきてきた。

 そう思えば今更か。


「ふふっ、お二人は本当に仲がよいのですね。ではお二人とも、改めて聞きますがイグドラシルに入るということで?」


「構わない」


『おっけー!』


 俺たちの返事を聞き、ミユ姫はこくりと頷いた。

 それからこの場は解散となり、次の日の朝にイグドラシルのギルドマスターやメンバーと顔合わせになったのだった。


《作者からの大切なお願い》


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