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紅蓮の盾の誤算だらけの顛末9

「シュランバインの紅蓮の盾も、名ばかりだったようだな。それとも奴隷になって頭がおかしくなっちまったのかい?」


 リランジュールの兵が揶揄するのを、またしても縄を掛けられた状態で俺は見つめていた。

 国境のゲートにて俺は捕まっていた。多少の抵抗はしてみせたが、もう少し暴れたほうが良かっただろうか。


「本当に『盾』なのか?なんか弱すぎる気が」

「何言ってんだ。俺たちが強いからだよ。それに『盾』なんて結構な名付けられたのも昔の話だろ」


 言ってろ。


「気を付けろ、なんだかおかしい」


 一人の慎重な兵がそう言うが、もう遅い。


「殺すなよ」


 俺が念押しした時には、俺に注目していた彼らは背後から奇襲をかけた『剣』に次々と倒されていっている最中だった。


「ん、何だ?ぐわっ」


 ろくに反撃できずに7人の兵達が地面に昏倒する様は鮮やかだった。


「な…………な、な?!」


 さっきまで偉ぶっていた兵は何が起こったのか分かっていないのか、仲間が全て無力化したのを茫然と見ていた。俺は手を付かずに立ち上がると、そいつに体当たりをかました。


「縄で巻いとくか」


 木々の間に潜んでいたロイドが、先ほどの素早さはどこへやら、ゆったりとした動作で兵達を縄で縛っていく。


「引き返すなら今のうちだぞ」


 自分の拘束を解いた俺は、彼に何度めかの言葉を投げた。倒したのはリランジュールの者達。殺害こそしなかったが、暴行した事実は国際問題になりかねない。不当な扱いを受けていた俺からしたらお互い様だが、力関係ではシュランバインは下。揚げ足を取るのが得意な『鷹』がそれを見逃すはずがない。


「もう聞き飽きたぞ」


 ロイドは溜め息をつくと、埃を落とすかのように両手を打ち付けた。


「これは私の意思でやってることだと言ったろ。気にすることはない」

「ロイドこそ………………いやいい。わかった」


 もう何も言うまい。それで彼の負い目のようなものが消化されるなら悪くはないだろう。


 かつて奴隷として過ごした『鷹』の屋敷に足を運ぶと、体が勝手に強張って足が止まってしまった。


「ノア?」

「……………何でもない」


 唇を噛みしめて屋敷を窺えば、伝令で俺が捕まったと報せを受けて警備はそれほど厳重ではなかった。


 黒いフードを目深に被り闇に紛れた俺達は、壁を伝うと足音を立てずに警備の者に近付き次々と倒していった。途中計画通りにロイドと分かれて屋敷を捜索するが、マナがいるとしたら多くの客室か『鷹』の主寝室だろう。部屋を一つ一つ探りながら酷く焦っていた。


 マナは、どうしているだろう。あいつに惨いことをされていたら?泣いていたら?マナ、マナ、間に合ってくれ!


 俺に気付いて声を出そうとした者を急所を殴り気絶させた時、ロイドの指笛が鳴った。



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