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紅蓮の盾の誤算だらけの顛末6

「それは不可能だ。聖女が我が国の所有でない限り、ここにいることは難しい。ましてリランジュールから返還を求めている以上即刻従わなければ、ようやく落ち着いた国交に波風を立てることになるぞ。ローエンハイム、そなたも分かっているだろう?」


 捕虜になった謗りを受けることを覚悟していたにも関わらず、俺は国に歓迎された。自分を犠牲に友を助け二隊の全滅を防いだ功績を認められ報奨まで授かることになった。

 俺は報奨の代わりに望みを願い出た。

 聖女マナをこの国で保護すること。その為に聖女認定を受けさせた上で自分の家門に入れさせて欲しいと。国民と認められさえすれば、他国からむやみに干渉されないと思ったのだ。

 だが王からリランジュールの書状を見せられて、自らの甘さに打ちのめされた。書状にはマナがリランジュールが招いた聖女であることが、はっきりと示されていた。

 あの『鷹』が気付かないわけも、手をこまねいているはずもないのに、俺はマナが傍にいることに有頂天になって考えが及びもしなかった。


「陛下、リランジュールの聖女召喚は正しく自国に呼べなかった時点で失敗だったのです。彼女はリランジュールのものではないし、証拠もありません」


 王は眉間を押さえながら俺を見ている。俺が不甲斐ないばかりにシュランバインはリランジュールから圧力を受ける身となってしまった。王の感じている重責は相当なものだと察せられるが、こればかりは俺も退けない。


「なぜそこまで聖女を…………いや聞くまでもないな。だが……………リランジュールを無視することはできない」


 今まで俺の後ろで成り行きを見守っていたロイドが戸惑った様子で俺を呼んだ。


「おまえ、家門に入れるって……………彼女を嫁にでもするつもりか?」

「そうだと言ったら?」

「馬鹿か?!リランジュールの不興を買うぞ。これはおまえ一人の問題じゃないだろう。冷静になれよ」

「だからといってマナを売るのか?」


 友人を睨むと一瞬たじろいだように見えた。


「ノア、おまえは周りが見えてない。それにこれでも心配してるんだ」

「何を?」

「それは……………もういい。話が通じない奴に何を言っても仕方ない」


 ロイドは王に一礼すると出ていってしまった。

 確かに俺は、王を説得することばかりに気を注いでいた。王がお許しになればそれでいいのだと思っていた。


 肝心のマナ自身が俺に背を向けるなど、思いもよらなかった。








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