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紅蓮の盾の誤算だらけの顛末3

「あうっ!」

「ひゃああ!」

「はうう!」


 マナは、くるくると良く働く……………客の喘ぎ声が煩いが。


 俺は恩を返す心づもりだったのに、彼女はそんなこと思いもしない。全く頼りにされていない。

『紅蓮の盾』と呼ばれてシュランバインにいた頃は、女達の方から寄ってきて俺に愛想を振り撒いていたものだ、自分で言うのは何だが。

 つまりそれは俺と結婚して贅沢に暮らしたいという魂胆だったわけだ。女は家庭に入り稼ぎ手である夫を支えるのが常。良い嫁ぎ先を見つけることが、女にとって最も重要なことだと思っていた。


 マナは誰も頼らない。自らの特殊な力の恩恵もあるが、一人で暮らして日々を楽しんでいる。

 それは俺にとって、とても新鮮だった。彼女の正体を薄々知っていたから固定観念に囚われない生き方に納得もしていた。

 見ていて飽きない。ただ他人の喘ぎ声を聴くのは気分の良いものではない。そう、俺は恥ずかしながら妬いていた。この短い時間で彼女にどんどん惹かれていくのを自覚していた。


『リランジュールの鷹』に目を付けられたマナを、俺の勝手で自国へと連れて行こうとした。彼女は疑いもしなかったが、俺は連れ出す理由ができたことが内心喜ばしかった。


 途中肩に受けた傷にマナが触れようとした時は焦った。


「……………ダメだ。たぶん、声が………お、抑えられない。誰かに聴かれたら」


 本当は理性が飛んだ自分が何するか分からなかったからだ。「肩を噛んでていいから」なんて救いにはならない。黒髪が鼻先を掠める。彼女は毎日入浴する習慣のある所にいたのだろう、花のような香りがするのは石鹸か?


「うう、ま、なっ、は、ああ」


 抗えない。情けない喘ぎ声を垂れ流し乱れる俺は、彼女に縋りついた。


「はっ、あ!まな、ま……………な」


 誤魔化すように何度も名を呼んだ。


 こんな醜態を晒して呆れられたりしないだろうか。思えば初めから何度も不様な姿を見せてしまった。

 嫌われていたりしないだろうか。


 そんなことを頭の隅で考えていたら、おずおずと彼女の手が俺の背に回された。


「あ………………」


 敏感になっているせいか、その感触だけで体が震える。


「ふあ、まな、はっ、はあ」


 支える為かもしれないが、彼女が少しだけでも応えてくれた気がして俺は熱い吐息を漏らした。




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