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リランジュールの鷹3

 肩を越える長さの艶やかな黒髪を銀の紐で結び、黒水晶のような瞳をしたジベルは、パッと見美形だ。別に悪どいからって目が濁ってるとかない。濁ってたら病気だと思う。


「皇都まで出迎えに行きたかったのだが、国境で些か問題が起きていたものでな」

「そうですか」


 食後の茶を優雅に嗜む姿は美しい。誰もこの御方が変態だとは気付くまい。

 一階のテラスに向かい合って座る私は、彼の話よりも一望できる庭園が気になっていた。

 まだ造園中らしく石や土を堀り運んだり、両肩に担いだ水の入った桶を運んでいる者には全員首輪が付いていた。監督している使用人の手にはリモコンのようなものがあり、見たところ仕事が遅い奴隷に、それを使って首輪に電流が流れる仕組みらしい。


 こんなにも沢山の奴隷が強制労働をさせられているのを初めて目の当たりにした。罪を犯したのか、もしかしたらノアのように捕虜で奴隷に落とされた人もいるかもしれない。


「式の日取りはいつにするか」

「……………そうですか」

「ふむ、奴隷共が気になるようだな」


 ジベルが素早く私の顎をクイッとした。まさかのクイッ!


「ぎゃあ」

「色気の無い女だ」


 そりゃあ、あなたには負けますよ!とは言えず抵抗して顔を左右に振るが、もれなく彼の指がついてくる。振りほどこうと彼の腕を掴もうとすれば、逆に手首を掴まれた。


「そなたの神聖力は見てきたからな。つまりこの手の自由を奪えば何もできないのだろう?」

「し、神聖力を使えなかったらイロイロできないですよ?いいんですか?」

「イロイロとな……………それは困る」


 快楽をダシにすれば、変態なら譲歩すると思っていたので彼の答えにホッとするが、手を解放したジベルも私の反応を観察しているようで落ち着かない。


 長い足を組み直した彼はニヤニヤと不敵な笑みを浮かべている。


「ただ…………そなたが私に危害を加えないように保険を掛けておこう。私が神聖力で窒息したり心臓や体の何かが止まったり、足に力が入らず倒れたり、またそれ以外で苦痛を味わった場合、ここにいる奴隷を一人ずつ殺す。既にそのことは手の者全てに伝えている」

「あの人達は関係無いでしょう?」


 何か用意していると思ったが、人質を取るとは。

 キッと睨むと、ジベルは「やはりな」と満足そうだ。


「そなたのことは調べさせてもらった。死にかけの奴隷を買ったり、奴隷主に金を渡して他の奴隷共に食べ物を与えろと言ったらしいな。何とも奇特な女だと思ったが、そなたは他人の苦痛を放っとけない性質のようだな。異世界人は理解できぬが、こちらとしては都合が良い」

「人の命をダシにして、そうまでして私と結婚する価値があるの?」

「あるな」


 彼は何喰わぬ顔で言い切った。


「私が好きでもないくせに」

「そうか?気に入っているがな」


 森でノアが庇うと予測して私に向けて矢を射たことを忘れていない。予測がどうあれ矢を向けたのだ、何が「気に入っている」だ?何よりノアをあんな目に合わせた。絶対許せないに決まってる……………と内心叫んで一応訊いてみる。


「それ、どうしても結婚しないといけないんですか?友人とかで神聖力を提供するとか……………それも嫌だけど」


 ジベルが不可解だとばかりに軽く首を横に傾けた。


「では聞くが、そなたは毎晩私を快楽の淵に落とすことが友人がすることだと思うか?」

「いえ」


 毎晩…………もう断定なんだ。



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