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第17戦・作戦名『幸せラブラブちゅっちゅゲーム大作戦』

あらすじ

会議の結果、勇者とゲーム勝負をすることになる。

八百長して勝利をもぎ取れ!

 よく晴れた気持ちのよい朝、温泉街の往来にて魔王と家臣、勇者一行、計9人が集まり何やら催し物を始めようとしていた。その中央には四天王が絶戦ロザリクシアが小指を立ててマイクを握っていた。


「はい! やってまいりました、『幸せラブラブちゅっちゅ家族計画ゲーム大作戦』!!」


 いきなり、作戦名に不要な装飾が増えていることに魔王は突っ込みたかったが、それは実に些細なことであった。娘のロザリーが発案したゲームと比べれば。


「四天王、代表であるわたし、ロザリクシアが考案して――」

「勇者一行の一人である俺、ジューディア・セグランサとが共同作業で作り上げたゲームを楽しんでいってくれ!」


 この恋愛脳が暴走している二人が作るゲーム。それだけで嫌な予感しかしない。早くも魔王は娘にゲームを任せたことを後悔した。というのもあるが、あのハゲ筋肉マッチョと共同作業とか腹立たしいにも程がある。

 今すぐにでもこのゲームを中止しなければならないと、魔王は行動をはじめるのだが……ロザリクシアの満面の笑みを見て、今回ばかりは見逃すことにした。


「ロザリーよ。どうして、マッチョと一緒に作ったのだ?」

「これは表向きは公平なゲームだよ。勇者側の人間も取り入れないと文句が出るじゃない」


 ロザリクシアの言い分も尤もだと、魔王は納得した。


「それでは、ゲームの内容を発表するよ!」


 『幸せラブラブちゅっちゅ家族計画ゲーム大作戦』とは、ここ温泉の都『グリード』全体を巻き込んだ一大イベントである。実際の内容は、人生ゲームと同じでルーレットを回してコマを進めていくだけなのだが、グリードの街をマップに見立てるというものだ。

 グリードの入り口からスタートして、出口でゴールとなる。勝敗はプレイヤーの一人がゴールした時点で、所持金が最も多いプレイヤーが優勝、最も少ないプレイヤーが敗者という単純なものだ。


「ロザリーよ。何故、グリード中を舞台にしたのだ? 普通に卓上でのゲームではいかんのか?」

「何を言ってるの? 街全体を巻き込んだ方が派手でしょ。この世紀の大勝負を机の上で決めるなんて。勿体ないじゃない」


 一理ある。魔王は自らの娘の聡明さに感動した。

 ゲームとはいえ、これは勇者との決戦なのだ。それを見物人もいない小さくて狭い室内で行うなど、つまらないにも程がある。ここは民衆に自らの勝利を示してやらねばならない。


「よし、いいだろう。それでは早速始めようではないか!」


 予め用意されていたマイクをジューディアが手に握る。筋肉で作られた巨躯から放たれる大声がグリード中に響いた。


「まずは、参加者の紹介だ。魔王側からは、魔王と四天王のケラヴス、アングリフ。勇者側からは、勇者ハナコとナディス、アンネの計六人が参戦だ!」

「少し待たれよ。なにゆえ、六人? ロザリクシア殿たちは参加しないのですかな?」


 その言葉を待っていたと言わんばかりに、ジューディアが解説を始める。


「ロザリクシアさんと俺は製作者であるため、参加するのは公平さを欠く。だから、この実況席から見学させてもらう」

「あと、ゲーム進行は、大臣にお願いするね。魔王側の頭数が多いのも不公平だし」


 ロザリクシアは魔王に向けてバチコーンとウィンクして見せる。大臣をゲーム進行に据えるという案は、自然に受け入れられた。これで、作戦の九割は成功である。あとは、運が多少絡む程度だ。


「それでは、まずルーレットを回していただきます」


 大臣は持ち前の冷静さで、淡々とゲームの進行を行っている。こちらの不正がバレることは有り得ないだろう。


「それで、結婚相手を? 決めてもらいます!?」


 途端、大臣の声に動揺が走る。予想外のゲーム内容に、普段から平静であった大臣も声色を変えた。


「そう! これが、このゲームの醍醐味! 結婚直後からスタートします。やっぱり、幸せは結婚してからだよねー」

「だよねー」


 愛娘と筋肉バカが声を揃えたのが、とんでもなく不快だった。こんな俗っぽいゲームをあの二人で考えていたかと思うと、別の何かがあったのではないかと魔王は内心穏やかではなかった。


「えーと、最初のルーレットで結婚相手を決めてもらいます。二人で仲良く家族計画していっていください……」


 ゲームの内容を語る大臣の語尾が震えている。羞恥なのか怒りなのか判然としない。


 ルーレットは一から六まで、それぞれの番号に相手を割り当てて、止まった数字で結婚相手を決めるのだそうだ。たしかにある意味では運命の相手ではある。


 その結果、結婚した相手は以下の通りである。


 魔王・ナディス ペア

「待って、どうしてわれがこんな奴と? やり直したいんだけど?」

「それは、こっちの台詞よ。誰が貴様なんかと一緒に! け、け、結婚なんて……」


 本気で嫌がる魔王と、少し語調の弱いナディス。

 ある意味で、デコボココンビである二人の健闘が期待される。



 勇者ハナコ・アンネ ペア

「やったね、アンネ。あたしたち夫婦なんだって。末永くよろしくねー」

「……まぁ、ハナコが相手なら頑張ってやるのじゃ」


 仲良しペア、勇者一行の子供担当。

 仲良きことは美しきかな。もっとも注目すべきペアと言える。



 ケラヴス・アングリフ ペア

「ケアヴス殿、オレたち夫婦らしいですよ」

「そうらしいですな」


 まさかの男同士ペア、意外と実力派。

 二人の目から光が消え失せてしまっているが、その将来はいったいどうなってしまうのか。



「待って」


 ナディスから、待ったの声が上がる。


「同性婚とかアリなの? やり直しを要求するわ!」


 とにかく、魔王と一緒になるのが嫌なエルフ娘は反抗的だった。


「大丈夫! 魔界では同性婚は認められてるから」

「そうなの!?」


 視線が魔王に集中する。思い返せば、そんなジェンダーフリーな法律を作ったような気がしなくもない。魔王は目を伏せて視線をやり過ごした。


「まあ、これはあくまでゲームだ。大人しくゲームを楽しもうではないか」


 責任逃れと、魔王はゲームの進行を促した。


「それでは、今から『幸せラブラブちゅっちゅ円満家族計画ゲーム大作戦』を開始します!」


 筋肉ダルマのジューディアから、ゲーム開始の宣言が発せられた。

 今から、グリードを巻き込んだ一大イベントが開催される。


「勝者は、敗者に何でも命令できる権利が贈られるよ。奮励努力ふんれいどりょく粉骨砕身ふんこつさいしん、ゴールに向けて頑張ってね!」


 さらっと、ゲームの根幹を為すルールが発表された。

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