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メロンソーダが有名だというカフェらしく、彼女はメロンソーダ、僕はカフェオレを注文した。

長い間歩いていたこともあり、久々に座れた嬉しさを体が感じていた。

すぐに注文していた飲み物が届き、余程喉が乾いていたのか、お互い写真も撮らずに一口飲んだ。


「長時間歩いたので、流石に疲れましたよね。すみません、長々と・・・。」

彼女も疲れている様子だったので、僕だけではなかったと安心した。

「そんな気にしないでください。久々に本屋に行けたので、色々と見れてよかったです。」

「そうですか、それなら良かったです。」

その後、また飲み物に口をつけ、小さく彼女はため息にようなものをついた。


そういえば、と彼女は口を開いた。

「私と章弘さんって同い年じゃないですか?なのにずっと敬語なの違和感があるので、良かったらタメ口で話しませんか。今更って感じだとは思うんですが、せっかくなので・・・。」

実は僕もずっと気になっていたことではあったが、なかなか言い出すタイミングがなくて、敬語で話しをしていたから、いいですよと同意した。

「あの、僕、敬語じゃないと標準語が話せなくて、方言になっちゃうんですけど、大丈夫ですか。」

「え!それはむしろ方言で喋って欲しい、ぜひ!」

「じゃあ、頑張って方言喋ろ・・・ってなんだか急にタメ口にすると照れますね。」

「方言ってちなみにどこなの?」

「広島、です。」

「あ、女の子が使ったら可愛いって評判のところじゃないですか。良いなあ、羨ましい。

〜じゃけえって言う?やっぱり言うよね?生のじゃけえ聴きたいなあ。」

「じゃけえは使うけど、そんな急に言われても使えるもんじゃないよ。あと、僕は男だし。」

「大丈夫です、男の子でも可愛い。あとは慣れ!慣れる、慣れろ!」

と彼女は言い、両手をグーにして、ガッツのポーズをした。


しばらく店内を眺め、店内で鳴っているBGMが変わった時、二人で「あ!」と目配せした。

「これって、Base Ball Bearの”short hair”だよね!私、よく聞いてたなあ・・・。」

「やっぱりそうだよね、めっちゃ聞いたことある曲だ〜と思って。」

「今気になって調べて見たら、九年前の曲なんだって。そりゃあ私たち年取るよね・・・。」

そう言った後、曲が終わるまで耳を傾けどちらも口を開かず九年という年月に浸っていた。


曲が終わった後、あまり減っていなかったカフェオレを八割くらい一気に飲み込んだ。

そして今日決心していたことを尋ねることにした。

「あのさ、今日思ったんだけど、いや、無理だったらいいんだけど。無理には言わないんだけど。」

僕はあまり他人の連絡先を聞くことが得意ではない。いや、むしろいつも聞いてもらってばかりで聞いたことがない。だからこういう時どういうテンションで重くなくて、相手も嫌だと思ったら断れるような雰囲気を出しつつと考えていると、いつも口数が増えてしまい、少し怖がられてしまう。

「急に畏まって、どうしたの?」

一度、深呼吸をして、言った。

「もしよかったら、連絡先、LINE教えて欲しいなって思って。ほら、今日待ち合わせの時、なかなか会えずに大変だったし。今後会うことになるときに困るかなって思ってさ。」

彼女は笑いながら、

「いいよ。そんな畏まって言ってくれなくても、良いのに。流石に、教えるよ。」と言った。

無事LINEを交換し、僕の今日の任務が無事終了し、ホッとしていた頃、彼女は唐突に聞いてきた。

「ついでにさ、Twitterのアカウントも教えてよ!」

その一言で、僕は固まってしまった。

僕のTwitterのアカウントといえば、バンド活動をしているギターボーカルとしてのアカウント、完全にプライベートで使用しているアカウント、誰にもフォローされていない愚痴をひたすら綴るだけのアカウントの三つしかない。

彼女にはバンドをしていると告げていないため、一つめのアカウントは教えたくはない。二つ目のアカウントはプライベート用で学生時代付き合いのあった人や趣味の合う人しかフォローしたくない、三つ目に至っては他人に教えるなんて論外のアカウントだ。

しばらく僕が無言で考え込んでいるのを察したのか、彼女は

「もし、教えたくないとかだったら、無理には聞かないから安心していいよ。」と言った。

だが、さすがにLINEを教えてもらった手前こちらが断るのはなんだか申し訳ない気がして、意を決して一つ目のアカウントを教えることにした。


「・・・ううん、大丈夫。じゃあこのアカウントのID検索してもらってもいい?」

「あれ?」

彼女は画面を見つめたまま、俯いている。

「どうしたの。」

「ごめん、もうフォローしてたみたい。これだよね?」

そう言って彼女が向けてくれた画面には確かに僕のアカウントが表示されていた。

しかも、僕も彼女のアカウントをフォローしているようだった。

「うん、これ僕ので間違いないや。」

「そっかー、アキヤマさんが章弘さんだったのかあ。なんだか、ややこしいね。

ずっと趣味近くて仲良くなりたいなって思ってたんだけど、年齢も分からないし突然DM送るのもなんだか変な人に思われたら嫌だったから、このタイミングで知れて良かったよ。」

ニコニコしながら言う彼女の前で、僕は気になったことがあった。

「あのさ、もう一回有希さんのアカウントの画面見せてもらってもいい?」

「うん、いいけど。はい。」


やっぱり、そうだった。

「僕のツイートいいねしたことある、よね?」

「あー、確か何回かいいねしたことあると思う。飲み会のツイート?だっけ?あれすごく気持ちわかるなあと思って。

あと昨日、今日楽しみだってツイートしてたから、私と予定同じなんだなって思った・・・ってあれ?

あの内容って、章弘さんが私に会うの楽しみにしていてくれたってこと、ですか?」

彼女はいろんなこと気づいてしまったのか、タメ口でと言った側から照れくしのため、敬語で僕に尋ねてきた。


最近、面識のない人にいいねされたと思っていたら、それは彼女だった。

それは僕にとっても彼女にとっても衝撃だった。

帰宅してからいらないツイートは削除しておこうと心に留めておいた。

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